
2021年02月15日
昨今のナチュラルブームに牽引され、今や自然派ワインは、世界中で注目の的です。現在流通されている、多くのワインが自然派ないし、それに近いもので、インポーターや酒販店も自然派に移行し、ニューヨーク、パリ、ウイーンなど大都市の名だたるレストランやホテルもこぞってシフトしています。しかしながら、未だに自然派ワインには明確な定義が見えず、グレーな部分が時に消費者に混乱を招くことになっています。
そもそも自然派ワインとは一体何なのか、一般のワインとはどう違うのか。歴史的背景が作り上げた自然派のイメージや昔ながらのワイン回帰についてお話しましょう。
先ずは自然派ワインについてまとめた下記の表をご覧下さい。
ナチュラルワイン、オーガニックワイン、ビオワイン、ビオディナミと様々なネーミングがありますね。今一度、整理してみましょう。
Aの自然派ワインは、このカテゴリーの総称です。定義や規定はありませんが、「自然派ワイン」という言葉が含んでいるそれ特有のイメージはあります。例えば・・・
・オーガニック農法
・手摘み収穫
・人為的介入を控えた醸造(例:天然酵母使用、補糖なし、温度コントロールなし、濾過・清澄なし)
・全房発酵、MC、セミMCを好む
・亜硫酸が少量か無添加
あくまでも私のイメージですが、自然派だとこのように受け取ります。
一方、Bの有機ワインはオーガニック農法です。殺虫剤、害菌防止剤、除草剤などの農薬や化学肥料を使用しない従来の農業です。フランスのビオロジックやイタリアのビオロジコのビオを取って、我が国ではビオワインと呼んだりします。
EUやその他の国、組織などの専門の認証機関があり、規定も設けられています。2012年までは、農法のみが認定基準でしたが、醸造方法や亜硫酸などの添加物の制限が新たに加わりました。
左上から時計回り)フランスの国際有機認証機関「エコセール(エコサート)」、EU加盟各国のオーガニック認証の共通ロゴ「ユーロリーフ」、フランスのオーガニック認証団体「アグリカルチャービオロジック」、日本農林水産省のオーガニック認定マーク「有機JAS」
主な認証機関のロゴマークは、皆様も一度は目にしたことが、あるのではないでしょうか。エコセール、ユーロリーフ、アグリカルチャービオロジック、日本では有機JASがオーガニック認定を担っています。
ここでグレーなのは、オーガニックであれば人為的介入を控えた自然なワインなのかと言えば、そうではないものも多々あります。造り手によるので何とも言えません。もちろんそれはAにも当てはまることです。
Cのビオディナミの最大マーケットは日本です。オーガニックに加え、月と星座、宇宙の運行に基づく占星術を取り入れている農法です。ビオディナミの世界では、テロワールは月や惑星、宇宙にまで及びます。
地球の植物は天体の動きに影響されるという思想がビオディナミの根本にはあります。 具体的には、満月に収穫や若木の剪定、新月に滓引きや古木の剪定、月の満ち欠けで最も重力がかかった時にボトリングしたり、番号のついた調合剤を畑に散布したり、非科学的でつい祭事や儀式のようなものを想像してしまいます。
オーガニックは病気の原因分析から対策を導き出すのに対して、本来、その土地が持つ力に働きかけ、そのエネルギーを最大限に引き出すよう自然環境を調えるのがビオディナミです。
左上から時計回り)ドイツのオーガニック認証機関「デメテール(デメター)」、フランスのビオディナミ農法によるワイン生産者団体「ビオディヴァン」、ビオディナミ農法の先駆者ニコラ・ジョリーが創立した生産者団体「ルネッサンス・デ・アペラシオン」
よほどのこだわりや信念がなければこのような手間のかかる製法は選ばないと思います。個人的には、BよりもCの方が、心に響くワイン率が高い気がします。認証機関はデメテール、ビオディヴァン、ルネッサンス・デ・アペラシオンなどがあります。
Dのリュットレゾネ(=減農薬)は、僅かに自然派をかすっている程度で、前述したA、B、Cのカテゴリーとはまた別の位置付けと考えられます。
自然派ワイン、少しは整理できたでしょうか。
365wine 大野みさき
スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
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