2020年04月28日

インポーターに聞く!スロヴェニア(スロベニア)産オレンジワインの魅力

Dober dan!ドベルダン=スロヴェニア語でこんにちは!インポーターの大野みさきです。

3度の飯よりワインが好きで、気が付いたら輸入会社を設立して来月で丸6年を迎えます。今でこそスロヴェニア専門でやっていますが、設立当初は他の国のワインも扱っていました。実務経験ない者がいきなりワイン業をはじめて売れるはずもなく、しみじみと当時に感じ入ってしまいました。

現在はスロヴェニアが強く、Sloveniaワイン一筋でやっております。今日はスロヴェニアワインの魅力を皆様にお伝えしましょう。

スロヴェニアってどんな国?教えてみさきさん!

まずスロヴェニアと聞いて、どこにあるかご存知でしょうか。

「あー知っとる、バルト三国やろ」
エストニア、ラトビア、リトアニア、ってかすりもしないじゃないですか。
「飲んだことあるわ、ハプスブルグ家やね」
それはスロバキアです。でもべニアとバキア違いなので惜しいところ。

スロヴェニアはイタリアの東側に位置します。オーストリアの南、その横をハンガリーとクロアチアが囲み、西の一角46Kmをアドリア海に面する小国です。なかなか日本人には馴染みのない国なので、先ずは基本データを抑えましょう。

Republic of Slovenia

・正式名称 スロヴェニア共和国
・首都 リュブリャナ
人口 206万人(東京1,300万人、大阪885万人)
・面積 20,273㎢(≒四国)
・言語 スロヴェニア語
・通貨 ユーロ(2004年EU加盟)
・建国 1991年 旧ユーゴスラビアから独立
・産業 ロボット工業、AI人工知能、新エネルギー、エコシステム

スロヴェニアは、来年で建国30周年を迎えます。
80%輸出の製造業国です。高度な語学力(英語マスト、5ヶ国語以上話せる人多数)、勤勉性、忠実性を有し、モノを売るのではなく社会をデザインします。人件費は年々5%上昇、EU圏内でもぶっちぎりの経済成長(2018年は3%)を遂げています。

国の概要がわかったところで、ワインの基本データも見ていきましょう。

Wine of Slovenia 

・栽培面積 22,059ha
・年間生産量 900ヘクトリットル
・ワイナリー数 28,000軒
・リージョン 3地域、北東のポドラウイェ(辛口白、スパークリングワイン)、南東のポサウイェ(軽赤、ロゼ、甘口白ワイン)、西のプリモルスカ(=海側の意、全生産量の40%を占める、重赤、オレンジワイン)
・統制保証原産地区 9地区
・ワイン法 原産地呼称ワインKakovostno vino ZGP他、ドイツ、イタリア、フランスよりも厳格
・ワインの起源 紀元前400年頃ケルト人によって
・気候 ポドラウイェ、ポサウイェ:大陸性気候、プリモルスカ:地中海性気候
・土壌 泥灰土(マール)、オポカ(泥灰土、砂岩)、泥板岩、砂岩、石灰岩(鍾乳洞9000ヶ所)
・ぶどう比率 白7:黒3

白ぶどう品種

ヴェルシュ・リースリング(Laski Rizling)栽培面積第1位
ピノ・グリ(Sivi Pinot)

ピノ・ブラン(Beli Pinot)
シャルドネ、リースリング(Renski Rizling)栽培面積第3位
ソーヴィニョン・ブラン(Sauvignon)栽培面積第4位
ゲベルツ・トラミネール(Traminec)
モスカート・ビアンコ(Rumeni Muskat)

Rizvanec(ミューラートゥルガル)
ケルナー、ミュスカ・オットネル(Muskat Ottonel)
グリューナー・シルバネール(Zeleni Silvanec)
マルバジア(Malvazija) 栽培面積第5位
フリウラーノ(Zeleni sauvignon、Sauvignonass)
フルミント(Sipon)
リボラジャッラ(Rebula)
Bouvier

Radgonska ranina(Ranina)
Zelen
Yellowish (Pinela)
Vitovska Grganja(Vitovska)
Kraljevina
Glera
Klarnica
Rumeni Plavec
Ranfol(Belina)

黒ぶどう品種

ピノ・ノワール(Modri Pinot)
メルロー
カベルネソーヴィニョン
バルベーラ
シラー
ツヴァイゲルト
ガメイ
レフォスコ(Refosk) 栽培面積第2位
Blaufränkisch(Modra Frankinja)
Saint Laurent(Šentlovrenka)
Kölner Blauer(Zametovka)
Muscat rose(a)(Cipro)

※( )内はスロヴェニアのシノニム

スロヴェニアのワイン造りについて

ワイン造りには2400年の歴史があり、かつて社会主義国で協同組合の管理下では、元詰め(ぶどう栽培からワイン醸造&瓶詰を一貫して行うこと)が禁止されていました。


スロヴェニア第2の都市マリボルに現存する世界最古のぶどうの木。樹齢400年!現役で赤ワインを生み出す。

旧ユーゴ独立後、飛躍的に品質が向上します。 四国ぐらいの国土に28000軒ものワイナリーがありますが、所有畑の平均は0.78ha、つまり100×78mのサイズです。大半が家族経営なので生産量は限られ、国民一人当たりの消費量が46L/年と生産の40%は自家消費されます。

また、冷涼産地なので圧倒的に白ぶどうが多く、スロヴェニアと言えば白ワインと言っても過言ではありません。白ワインの中でも昨今、ブームとなっているオレンジワインの銘醸地です。


イタリア、スロヴェニア、ジョージア、オーストリアを筆頭にワイン生産者が発足した、Orange wine organization(オレンジワイン協会)オレンジワインの理解と普及を目的に活動しており、「オレンジワインフェスティバル」を年2回開催する。

オレンジワインの銘醸地

今や世界中でオレンジワインが造られていますが、自然派ワインの中心地フリウリ(イタリア)に隣接するスロヴェニアも、実はあまり知られていませんが、知る人ぞ知る古くからのオレンジワイン産地。栽培品種や醸造もフリウリとよく似ています。

スロヴェニア人にとって「醸し」は文化!フリウリやクヴェヴリアンフォラ醸造で有名なジョージアと同じように、昔ながらのワイン造りを継ぐ生産者も多くいます。

ワインの起源を辿ると、大昔は白ぶどうも黒ぶどうも皮を醸して造っていました。しかし、いつの時代からか白ワイン用の白ぶどうは醸さず、赤ワイン用の黒ぶどうは醸して造るのが世界的なワイン造りの主流となりました。

オレンジワイン造りに欠かせない「醸し」

「醸す」というのは英語でマセレーション仏マセラシオン、醸造用語ではスキンコンタクトと言います。果皮や種を果汁に数時間~数日間、浸漬させて果皮の成分を果汁に移行させる方法です。

1週間~半年、なかには1年に渡って醸しているので、通常の白ワインよりも色合いが濃くなる 傾向があります。黄、黄金、オレンジ、茶褐色とカラーは豊かです。

赤ワイン造りでは長く醸します(ボジョレーヌーボー除く)。棒で撹拌させたりしてせっせと成分を抽出します。何故って、醸さないと色も味も薄くてタンニン渋味が感じられない薄っぺらな赤ワインになってしまうからです。シャバシャバのワインは長期熟成も見込めません。

今、なぜオレンジワインが注目されるのか

1990年代、ぶどうの色が違うだけで造り方を変えるのはナンセンスだと考える生産者が現れます。折しも農薬や化学肥料を使わない1960年より以前の「祖父の時代のワインへ戻ろう」と叫ばれていた時代です。日常で楽しめる1Lボトル、リーズナブルな価格、健やかで飲み疲れしないワインへ戻ろうという原点回帰が起きました。

現在オレンジワインの多くは自然派の生産者が手掛けています。オレンジワイン(=アンバーワイン)と言う呼び名が定着しましたが、彼らは流行を追っているわけでも、オレンジ色のワインが造りたいわけでもありません。昔ながらのワイン造りを目指したところ、その手段のひとつが、赤ワインと同じように醸して造る白ワインだったのです。

そのため、ブームに担がれ造りはじめた一部の畑ではスプレーを撒き、醸造でも過度な人為介入を施し、オレンジワイン造りが本末転倒となっていることも否めません。

スロヴェニア オレンジワインの味わいと特徴

醸しとオレンジワインが造られた発端についてお話しました。

気になるワインのお味ですが、スロヴェニアに関して言うならば、フリウリやジョージアと比べると、自然派なのにクリーンで飲みやすくオフフーバーや嫌な感じがなく旨味が強いのが特徴です。

オレンジワインは全て味が似ていると呈する方がいますが、逆にスロヴェニアは生産者ごとに味わいは様々です。品種やテロワールの個性よりも生産者の個性を顕著に感じます。彼らは競うわけでもなく、それぞれがオンリーワンを目標としているので、それもその筈です。

スロヴェニアワインがやや高価である理由は、オレンジワインは他の白ワインよりも価格が高いのと似ています。高い人件費、量産できる規模でないことから1本あたりの生産コストが上がります。どうせコストがかかるなら、本当に美味しいものを、最高のものを、誰にも真似できない唯一無二のワインを、彼らは手間暇を費やし本気で造ります。

オレンジワインの場合、リリースされるまでに膨大な時間を要します。大抵のワインが秋に収穫して春に出すようなタイプのワインではないので、上質な赤ワインと同様35年、時に810年もの熟成を待たなければならないのです。ブルゴーニュで7080€クラスのワインが、現地では1/4価格で同クオリティのスロヴェニアワインが楽しめます。そのアドバンテージに満足している人も少なくありません。

オレンジワインの楽しみ方アドバイス

最後にオレンジワインの飲み方とマリアージュをご紹介しましょう。大きく分けてフルボディとライトボディでオレンジワインのタイプは異なります。

フルボディタイプ=赤ワインのイメージ

・醸し 長め
・樽 あり/時々なし
・タイプ タンニン中~強、ふくよか、複雑
・温度 15~19℃(湯煎でぬる燗45℃もおすすめ)
・グラス 大振りのブルゴーニュグラスかボルドーグラス
マリアージュ
鰯の煮付、鯖の味噌煮、もつ煮込み、豚の角煮、塩辛、焼き鳥タレ、生姜焼き、蟹クリームコロッケ

ライトボディタイプ=白ワインのイメージ

・醸し 短め
・樽 なし
・タイプ タンニン弱、すっきり、シンプル
・温度 10~14℃
・グラス 中振りのチューリップグラス
マリアージュ
お刺身、鰺の南蛮漬け、豚しゃぶサラダ、生春巻き、酢の物、焼売、餃子、お好み焼き、焼き鳥塩

白ワインに幅広いバリエーションがあるのと同じぐらい、品種、産地、醸す期間、樽の有無に加えて、造り手の個性が複雑に重なり合い、ひとつとして同じオレンジワインは存在しません。この多様性こそがスロヴェニアワインの最大の魅力だと思います。

ワインは常に食文化と共に成長してきました。来日したスロヴェニア人は口を揃えてこう言います。「私たちがいつも食べている味とジャパニーズフードがそっくりだ!」

どうぞ日本の家庭料理と楽しんでみて下さい。
それでは皆様、ごきげんよう!


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◎2020年4月23日(木)~5月6日(水・祝)※終了しました

 


365wine 大野みさき

スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。

【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/

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