
2020年07月08日
皆様こんにちは、インポーターの大野みさきです。新緑が眩しい季節になりましたね。寒くも暑くもなく過ごしやすい日々が続いています。
今年の大型連休は、大半の時間をお家で過ごされたという方が多かったのではないでしょうか。ZOOM飲み会を開催したり、ご家族と家飲みパーティをしたりと、思い思いにワインを楽しまれている微笑ましい姿が、SNS上でも散見されました。楽しいことは何よりです。
しかし、インポーターとしてひとつ気がかりなことがあります。最近、お酒の量が増えていないですか。暴飲や長丁場に及ぶ、だらだら飲みをしていないですか。挙句の果てには二日酔いで後悔していないですか。
満ち足りた愉快な時間に水を差すつもりはありませんが、私は皆様の身体が心配です。お酒は百薬の長と言われるよう、適量であれば心身の健康や、円滑な人間関係、ないしは人生そのものにも豊かさをもたらす効果が期待できます。今日は皆様のご健勝とご多幸を切に願って、アルコールとの上手な付き合い方、ワインの嗜み方についてお伝えします。
常日頃からインポーターや酒販店などは、酒類販売免許を管轄する税務署より、口酸っぱく言われていることがあります。未成年者飲酒禁止法に基づいて、二十歳未満にお酒を販売しない、飲ませないことです。実際、販売場やウェブショップには、「未成年の飲酒は法律で禁止されています」や「これはお酒です」と表示したり、都度、年齢確認をしたりして未成年者飲酒禁止法を堅持しています。
そもそも、どうして未成年にアルコールはダメなのでしょうか。法律で定められているわけですから、それ相応の理由があるはずです。国税庁によると、アルコールは成人でも飲み方を誤ると危険を及ぼし、心身ともに成長段階の未成年にとって、身体的、精神的、及び社会性への悪影響が高いことで未成年の飲酒を禁止しています。
成人であっても当然リスクはあり、適量を過ぎるとアルコールは毒と化します。アルコール自体が身体にとって異物なので、肝臓で無害なものに処理しなければなりません。
アルコールの過剰摂取は運動機能を麻痺させ、意識障害を引き起こします。急性アルコール中毒による救急車搬送は、20~40代を中心に年間1万1000人以上というデーターもあります。昏睡やチョーキングを起こし、搬送から病院での死亡率は、なんと90%にもなります。
更に怖いのが、急性中毒だけでなく極めて依存性が高く、アルコール依存症との診断された後の5年間の死亡率が40%、生存率が約30%、その他30%は入退院を繰り返している状態です。慢性的な中枢神経障害、肝障害、癌、糖尿病、動脈硬化、心不全、消化管の障害を引き起こします。
飲みかけのワイングラスを思わず置いてしまうぐらいシリアスな現実をお話しました。ですがご安心下さい。アルコール摂取はリスクだからお酒をやめよう。などと思わないで下さいね。それは「交通事故に合うかもしれないから外出するのはやめよう」と言っているのと同じです。何も恐れることはありません。アルコールと上手に付き合うには適量を守るのと飲み方のコツを知ることです。
前述しましたが適量の飲酒は薬にも成り得ます。少量ならリラックス効果も期待でき、実際に全く飲まない人より、適度の飲酒習慣のある人の方が循環器系疾患の死亡率が低くなると報告されています。
アルコールの分解能力は体格や体質によりますが、男性では1時間に平均9g、女性では6.5g前後です。ビール中瓶500ml(20g)なら男性では分解に2.2時間、女性では3時程度かかります。分解速度は個人差が大きいのであくまでも目安値です。
一般的に適量と言われているのは、ビールなら350ml缶1~2本、ワインならグラス1~2杯(150~250ml)程度のアルコール量/日が良いとされています。
体内に摂取されたアルコールがどのように分解されるか見ていきましょう。
食道を通ったアルコールは、胃から20%、小腸から80%の割合で、消化されることなく、僅か1~2時間足らずで吸収されます。その後、門脈という太い静脈から肝臓を通って全身の臓器に流れます。血中アルコール濃度は門脈では高く、肝臓を通過すると低下します。臓器では単純拡散により組織へと広がっていきます。
アルコールの大部分は肝臓で酸化により分解されます。アルコール脱水素酵素(ADH)(補助としてミクロソームエタノール酸化系、カタラーゼ)により有毒なアセトアルデヒドに酸化します。その後、2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)(補助として1型アルデヒド脱水素酵素(ALDH1))により酢酸に酸化されます。酢酸は血液によって筋肉や心臓に運ばれ、炭酸ガスと水に分解されます。その時、アルコール1gに対して約7kcalの熱エネルギーを産出します。
体内のアルコール代謝(=ワインの酸化)を表にすると下記のようになります。
口から摂取されたアルコール(エタノール)は肝臓で酸化されてアセトアルデヒドが発生します。頭痛や悪酔いの元となるのが、このアセトアルデヒドです。アセトアルデヒドは酵素により無害な酢酸になります。
人間の身体の中で行われていることが、ワイン醸造でも行われます。ワイン醸造の場合、産膜酵母やエタノールの酸化によって生じるのが、アセトアルデヒドです。酸化したりんご、シードル、クルミ、シェリーの香りがします。酸化により下へ、還元により(亜硫酸の添加など)上へ変化します。
最後に飲み方のコツをお伝えします。二日酔い予防の必須アイテムは、ウコンではありません。皆様の身近に存在するものです。
欧米人(アングロサクソン)がアジア人(モンゴロイド)よりもお酒に強い人が多いのは、アルコールを分解能力(酵素)に長けているからです。この「分解」=酵素の働きに必要不可欠なものが、水分と糖分です。
ワインは80%以上が水分でできていますが、その水分はアルコール分解時には、既に消費されています。アルコールとは別に水分が必要なのです。しかも二日酔いになってからの水分摂取では全く意味がありません。ワイングラスの横には常にチェイサーを用意し、飲んだワインと同じかそれよりも多めの水分を摂ることをおすすめします。
水分と一緒に甘味も摂ったらパーフェクトです。果糖でもOKです。また、摂取したアルコールに対しての必要水分量は、こちらのサイトで計算できます。二日酔いの予防対策に是非ご活用下さい。
>アルコール計算機~分解時間と血中濃度
その他にも空腹時の飲酒は避ける、積極的にたんぱく質を摂るなど工夫できることがあります。アルコールのリスクを十分に理解した上で、上手に付き合っていくことが大切です。良い(酔い)ワインライフをお過ごし下さいね。
それでは皆様、ごきげんよう!
■参考文献
樋口進(編)健康日本21推進のための「アルコール保健指導マニュアル」
厚生労働省 e-ヘルスネット
365wine 大野みさき
スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/