2020年06月03日

【前編】独学でトライ!J.S.A.ワインエキスパート試験:一次試験対策のヒント ~2020年度に向けて~

今年もJ.S.A.ソムリエ/J.S.A.ワインエキスパートの、呼称資格認定試験が近づいてきました。

試験は一次と二次の二部構成です。一次は7月末〜9月初あたりに“CBT方式”で行われます。各々会場を予約し、当日はマウスとキーボードを使ってコンピューターの画面に出題される問題に回答します。それを突破すると、10月初旬の二次試験受験資格が与えられます。

二次では他の受験生とともに会場に集められ、予め用意された数種類のワインをブラインドテイスティング、マークシートにテイスティングコメントをマークします。同時刻、日本ソムリエ協会任命のトップソムリエたちが別会場で出題ワインと同じものをテイスティング。彼らが作成するテイスティングコメントがその年の模範回答となり、それらと照らし合わせて採点されるという流れです。ワインエキスパートは二次試験突破でめでたく資格取得、ソムリエの場合はサービス実技と論述の三次試験に進みます。

※上記は2019年度の試験概要です。2020年度以降の受験を検討中の方は、日本ソムリエ協会公式サイトに掲載されている募集要項を必ず確認してください。

私は昨年(2019年)、ワインエキスパートの資格を取得しました。受験を心に決めて出願したのは4月、本格的に勉強を始めたのは5月末ごろ。他の受験生よりだいぶ出遅れてしまい、「スクールに通うのは今更感があるし経済的にも厳しいし…」と尻込みした結果、独学での受験を決意。なんとか情報を集め、試行錯誤しながら学習を進めました。

ワインの勉強はとにかく範囲が広いのです。世界中のワイン産地の地理やブドウ品種、醸造方法、歴史など、多岐に渡ります。問題例をあげると…

例題:ブルゴーニュ地方のグランクリュChevalier-Montrachetが属している村名として適切なものを選択してください(正解は1)
1. Puligny-Montrachet村
2. Chassagne-Montrachet村
3. Meursault村, Puligny-Montrachet村
4. Puligny-Montrachet村, Chassagne-Montrachet村

これは「地理」カテゴリーの問題です。限られた時間でこういった内容を全てを記憶するのは、なかなかの難易度…。幸いなことに、私は的確な情報や教材を手にし、一発合格することができました。可能であればスクールに通うにこしたことはありません。しかし、様々な事情から独学でチャレンジする方も少なくないと思うのです。そこで少しでもお役に立てればと思い、私が利用した教材や勉強法をシェアします。あくまで一つのやり方として、参考にしてください。

STEP1 本格的な受験勉強の前に…

出願は4月、本格的に勉強を始めたのは5月末。この空白の1ヶ月、テキスト・参考書とは別にワインに関する本を読んで過ごしました。実は届いた公式テキストの分厚さ、大きさ、重さに圧倒されてしまい、拒否反応を示してしまったのです。そのためいきなりテキストを開く気になれず、まずは気軽にワインの世界を垣間見れる実用書に手を出すことに。

結果としてこれらの読書は、私にとって非常に有意義なものとなりました。「暗記を目的とせず、楽しみながらワインに関する知識に触れる」というステップを挟んだことで、その後の試験勉強がよりスムーズに進んだのです。以下に私が読んだ本を紹介します。もし時間的に余裕がある場合は、手にとってみてください。

『読めば身につく!これが最後のワイン入門』山本 昭彦 著(講談社)

醸造方法や品種の特徴などを初心者にもわかるように解説しています。テキストをぎゅっと要約したような内容。覚えるよりも「へ〜!」という感動を大切にしながら読んでほしい1冊。

『教養としてのワイン』渡辺 順子 著(ダイヤモンド社)

オークションハウス「クリスティーズ」勤務経験を持つ著者により、ドキっとするワインの世界が綴られています。憧れの5大シャトーや有名シャンパーニュの逸話など、楽しんで読み進めることができます。

『ワイン一年生』小久保尊 著(サンクチュアリ出版)

数あるワイン用ブドウ品種の特性を、漫画形式で紹介している本です。

STEP2 参考書をそろえて勉強開始

5月末にさしかかった頃、そろそろ試験対策をしなければ!と身を正しました。まず、過去の合格者の声を検索しまくり、評価の高い参考書をそろえることに。「公式テキストとは別に参考書なんて必要?」と思われるかもしれませんが、私には絶対必要でした。公式テキストには情報があますことなく掲載されているものの、“理解して覚える”には少し詳しすぎるのです。私が活用した参考書をご紹介します。

『受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座』杉山 明日香 著(リトル・モア)

情報がスッキリまとまっており、覚えやすい!ただ、これだけでは理解が追いつかない部分もあるので、公式テキストやネット上の情報を併用しました。

『地図で識る世界のワイン』西村 淳一 著(講談社)

上記の参考書にも地図帳がついていますが「少し使いにくいな」と感じ、こちらを購入。一次試験最大の難所はなんといっても地名の暗記!村名や畑名など、耳慣れない名称をたくさん覚えなければなりません。そんな悩みに、この地図帳はとても役に立ちました。ブドウ品種のシノニムや、ボルドー格付けシャトーの一覧なども掲載されていて、かなり使えます。2017年発行なので少し情報が古いのが難点。

参考書の他、ウェブサイトも活用しました。もちろん参考書だけでも勉強はできますが、常に持ち歩くのはたいへん。バスや電車に揺られている時間も、絶好の勉強タイム。そんな時はスマートフォンで手軽に見ることができるウェブサイトの出番です。紙の参考書とウェブサイトをうまく併用しました。私がよく見ていたサイトはこちらです。

ちょっとまじめにソムリエ試験対策こーざ

https://koza.majime2.com/

シニアソムリエの資格を持つ方が運営するサイト。ブログ形式で、試験に出る内容に絞って情報が整理されています。毎回記事の冒頭にコラムが書かれているのですが、それがとても面白い!“金賞受賞ワインとはどんなワインなのか”など、興味をそそる内容が多いので、ぜひチェックしてみてください。

ワイン受験.com

https://www.wine-jyuken.com/

読み物というより問題集として利用しました。有料会員になると、全ての過去問をスマートフォンで解き放題。メルマガ登録すると、最大で1日3回過去問がメールで届きます。ある程度勉強が進んだら、移動中の電車の中でとにかく過去問を解きまくってください。かなり力がつきます。

ここまでに紹介した参考書、ウェブサイトを使って、実際に私が勉強した流れは以下です。

1. 日ごとに範囲を決め(例えば「今日はフランスのシャンパーニュ」というように)、家で『受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座』『地図で識る世界のワイン』を読み込む。単語にはマーカーペンを引きまくり、参考情報はどんどん書き込む。参考書は汚せば汚すほど理解が進む。

2. 外出先やお風呂の中でちょっとまじめにソムリエ試験対策こーざを開き、1で勉強した範囲を復習。“試験に出る重要事項”が整理されているので、そこを重点的に、「それ以外の単語はいったん忘れてもいいや」くらいの気持ちで。お風呂でやる場合は、スマホの水没注意…!

3. ワイン受験.comで、学習済みの単元の過去問を解きまくる。寝る前にこれをやると、かなり暗記が進む。

なお「sommelier for free」という、Yutubeチャンネル(無料で公開されている学習動画)もお薦め。特に“日本酒の醸造方法”については、このチャンネルの動画がかなりわかりやすいです。…そう、ソムリエ/ワインエキスパート試験では日本酒の醸造方法も学ばないといけないのです。大変ですよね。

STEP3 ラストスパートの相棒は大量の予想問題

一次試験は2回受けることができます。1回目で通過できたらそのまま二次試験対策を始めればOK、通過できくても2回目のチャンスがあります。私はできるだけ勉強する期間を長くとりたくて、1回目の一次受験をお盆明けに、2回目の受験を8月末に予約しました。

さて、1回目の一次受験直前のお盆期間中、当時会社員だった私は夏休みをとることができたので、約1週間、朝から晩まで大量の予想問題を解きまくりました。実はこの時点でまだテキストを全て学習し終えていなかったのですが、全てを覚えることよりも重要な範囲を完璧にすることを優先して、予想問題に取り掛かったのでした。テキストを読むより問題を解いた方が、案外覚えも早かったりしますしね。私が使った問題集はこちらです。

『ソムリエ試験対策問題集』藤代 浩之 他(柴田書店)

『ソムリエ・ワインエキスパート呼称資格認定試験対策 予想問題1500』植野 正巳 著(誠文堂新光社)

なぜ2冊もそろえたのかというと、できるだけ多くの問題を解きたかったから。2冊合計で2700題が収録されています。時間がないという方はどちらか1冊でも良いと思います。

私はGoogleスプレッドシートで自作の解答用紙を作り、自分の正解率を見ながら学習を進めました。ワインエキスパートの場合、だいたい7割正解すれば一次試験を通過できるという情報があったので(噂レベルの情報なので真偽は定かではありません)、目標を少し高めに設定し、単元ごとに正解率80%以上になるまで繰り返し問題を解き続けました。自作解答用紙はこんな感じ。


「答え」の欄は1回目の答え合わせ時に入力し、2回目以降に問題を解く際は隠せる仕組み

こうして予想問題づけの1週間を過ごした結果、学習した内容がかなり記憶に定着し、無事1回目の受験で一次試験を通過することができたのでした。

一次試験対策のまとめ

一次試験のキモは膨大な量の暗記です。正面から公式テキストと向き合うと、時間がかかるし脳もオーバーヒートしてしまいます。向き不向きはありますが、かしこく参考書を使うのがベターです。また、外出先で手軽に勉強できるウェブサイトは万人の強い味方。無料サービスもあるので、どんどん利用してください。ある程度学習できたら、とにかく問題、問題、問題!問題を解いた量に比例して合格率が上がると言っても過言ではありません。予想問題はたくさん解きましょう!

長くなってしまったので、二次試験のテイスティング対策は次回!お楽しみに。

 


吉田すだち ワインを愛するイラストレーター

都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
【HP】https://yoshidasudachi.com/
【instagram】https://www.instagram.com/yoshidasudachi/

吉田すだちさんのおすすめワインをチェック♪

この記事をSNSでシェアする