2020年06月10日

【後編】独学でトライ!J.S.A.ワインエキスパート試験:二次試験対策(テイスティング)のヒント ~2020年度に向けて~

前回の記事ではワインエキスパート一次試験対策の勉強法について、ヒントをお伝えしました。今回はその第二弾、二次試験のテイスティング対策についてです。最初にテイスティング試験の概要をお話し、その後、試験対策のポイントや具体的な勉強の進め方について、私の経験を交えながらお伝えします。

テイスティング試験の概要

ソムリエ/ワインエキスパートの二次試験はホテル等の会場で行われます。私は昨年、東京のホテルニューオータニで受験しました。今年(2020年)は新型コロナウイルスの流行懸念があるので、どうなるのか少し心配です。受験される方は日本ソムリエ協会の公式サイトで、随時最新情報をチェックしてくださいね!

試験会場には予め、水や吐器(とき)とともに、出題されるワイン等がグラスに注がれスタンバイされています。酒質の変化を抑えるため、会場の室温はとても冷んやり。その空気に包まれると、「いよいよだな…」と背筋が伸びます。

ワインエキスパート試験に出題されるのは、白ワイン2種類赤ワイン2種類その他のお酒1種類の計5種類です。それらが50mlずつグラスに注がれ、各受験生の席に置かれています。

グラスに触れたり口をつけたりできるのは試験開始の合図が出てからですが、開始前にグラスを眺めるのは自由。ワインの色や“清澄度”などをヒントに「この淡い色合いはリースリングかな」とか「血のように濃い赤…カベルネソーヴィニヨン系だな」というように、アタリをつけておきます。試験が開始されたら手にとって、より詳細に色を吟味したり、香りをかいだり、味わいを確かめたり。そのように一つ一つ確認しながら、手元のマークシートにテイスティングコメントをマークしていきます。

前回の記事でも触れましたが、テイスティング試験の模範回答は当日作成されます。試験と同時刻、トップソムリエたちが出題ワインと同じものをテイスティングし、彼らが作成するテイスティングコメントが模範回答となるのです。ワインは瓶の中でも熟成が進む飲み物なので、採点をフェアに行うために、このやり方を採用しているのだとか。

テイスティングコメントとは?

テイスティングコメントは、ざっくり4つのカテゴリーに分けられます。そして各カテゴリーごとに更に細かい項目が用意されています。以下に概要を整理してみました。括弧内の数字は、実際の試験でマークシートにマークする数のこと。例えば「色調(2)」の場合、用意されている選択肢から2つを選んでマークする、という要領です。
※2019年度のワインエキスパート試験の内容です。

カテゴリー 項目
【外観】 清澄度/輝き/色調(2)/濃淡/粘性の強さ/外観の印象(2)
【香り】 第一印象(2)/果実・花・植物の要素(4)/香辛料などの要素(3)/香りの印象(2)
【味わい】 アタックの強さ/甘み/酸味/苦み(白のみ)/タンニン(赤のみ)/バランス/アルコール度数/余韻の長さ
【その他】 評価/適正温度/グラスの大きさ/デカンタージュ要否(赤のみ)/収穫年/生産地/品種

いかがでしょうか。まだ勉強を始めていない人は、これを見ても「なんのこっちゃ」というのが正直なところかと思います。しかも選択肢に並ぶワードがまたやっかい。

例えば“香り”の“果実・花・植物の要素”の選択肢には、“ブラックベリー”や“すみれ”、“シダ”、“腐葉土”などのワードが並んでおり、日本で生活している人にとっては馴染みのないものばかりなのです。いったいどうやって勉強を進めたらいいのか、困ってしまいますよね。ワインスクールに通えればまだしも、独学の場合は工夫が必要です。

ワインエキスパート二次試験に感じる不安と心得

昨年、二次試験の勉強を始める前、そのハードルの高さに打ちのめされていました。その時、私は3つの不安を感じていたのです。

二次試験に感じる不安
1. 品種や生産地、収穫年なんて膨大にありすぎて、当てられる気がしない…
2. 選択肢に並ぶワードがちんぷんかんぷんで、正しく選べる自信がない…
3. 時間もお金も限られている中、どうやって勉強したらいいのかわからない…

きっとこれらは誰もが感じることなんだと思います。しかし、実際には毎年多くの人が合格しているわけです。超人的なテイスティングセンスを持ち膨大な勉強を重ねないと合格できない、なんてことはないはずです。勉強法を工夫すれば、きっと自分だって合格できるはず。そう信じて情報を集めました。

そうしてたどり着いたのが次の3つの心得です。

二次試験の心得
1. ワインエキスパートに求められるのは、基本的な知識と経験。メジャーな品種と産地をおさえて、それらのワインについて正しくコメントできる状態を目指すべし!
2. テイスティングコメントはワインの世界の共通言語。コメントにはがある。を覚えて使えるようにするべし!
3. 品種や産地をはずしても、テイスティングコメントさえ合っていれば部分点を狙うことができる。ワインを飲む時はその特徴を頭の中でカテゴライズし、そのカテゴリーの主要コメントを引き出せるように訓練すべし!

平たく言うと、飲むワインを絞って選択と集中、それらの模範テイスティングコメントを暗記し応用できるように訓練する、という勉強法が大事ということです。

二次試験対策のヒント

それでは、具体的に私が実践した二次試験対策法をご紹介します。あくまで一つの方法ですが、ぜひ参考にしてみてください。

おさえるべきブドウ品種
まずは選択と集中!以下の品種に絞って勉強を進めました。
【赤ワイン】 ピノ・ノワール/マスカット・ベーリーA/ガメイ/カベルネソーヴィニヨン/シラー(シラーズ)/テンプラニーリョ/ネッビオーロ/サンジョヴェーゼ
【白ワイン】 甲州/ミュスカデ/ソーヴィニヨンブラン/リースリング/ゲヴュルツトラミネール/シャルドネ

ちなみに2019年度のワインエキスパート二次試験に出題された品種はこちらです。
【赤ワイン】サンジョヴェーゼ(イタリア)/カベルネソーヴィニヨン(オーストラリア)
【白ワイン】甲州(日本)/ソーヴィニヨンブラン(ニュージーランド)
【その他】紹興酒

私はこのうち、赤ワインの品種と国を間違えてしまいました。また、紹興酒もはずし“シェリー”を選んでしまいました。しかし結果は合格。「品種や国を多少はずしてもコメントで部分点を狙えばOK」というのは本当のようです。

試験では品種を当てようと一生懸命になるより、「こういう特徴があるということはカテゴリー的にピノ・ノワール系だな…ということはテイスティングコメントは…」というように考えるのがコツです。

おすすめテキスト

私が参考にしたテキストは一つだけ。一次対策の記事でもご紹介したウェブサイト「ちょっとまじめにソムリエ試験対策こーざ」で購入できる、必勝マニュアルです。

こちらのテキストを読み込み、書いてあることをとにかく頭に叩き込みながらテイスティングの勉強を進めました。かなりわかりやすく、そして実際に力がつきます。有料ですが、「買ってよかった!」と心から思えた、そんな教材です。2020年度版は夏頃にリリースするとのこと。気になる方はぜひサイトをチェックしてみてください。

この他にも、書店にはテイスティング方法の参考図書がたくさん並んでいます。購入前に手にとって中を確認できるものもあるかと思いますので、ぜひ自身に合うものを探してみてください。

テイスティング勉強方法

それでは、具体的なテイスティング勉強方法をご紹介します。

1. 国際規格のテイスティンググラスを使う
グラスによって香りや味わいは大きく異なるので、実際の試験で使われるものと同じグラスで勉強することはとても重要です。Amazon等でも購入できるので、ぜひご検討ください。

2. 試験対策用の単一品種ワインを買う
上記で紹介した“おさえるべきブドウ品種”のワインは必ずそろえましょう。できれば、フランスなどの“旧世界”のものと、アメリカなどの“新世界”のものをそろえるのがベターです。
>ウェブで「ソムリエ試験対策 ハーフボトルセット」などで検索すると、ハーフボトルのリーズナブルなセットもヒットします。こちらは非常に人気で、試験が近づくと売り切れ必至のため、できるだけ早めに手配することをオススメします。

3. “小瓶詰め替え法”を実践する
ワイン受験.com」で紹介されている方法です。テイスティング勉強用に用意したワインを一度にすべて飲みきるのは現実的ではありません。かといって、一度抜栓したワインはどんどん劣化してしまうもの。そこで、抜栓直後に小瓶にうつしかえ、できるだけ空気を入れないようにしながら蓋をして保存する、それが小瓶詰め替え法です。
そうすれば、時間をあけてワインを復習することも可能になります。詳しいやり方は「ワイン受験.com」を参照してください。(私は“C1000タケダ”を箱買いして中身を空きペットボトルにうつし、瓶を熱湯消毒したうえで小瓶詰め替え法を実施しました。)

4. 書き取り暗記2回、ブラインドテイスティング1回の割合
実際の試験はブラインドテイスティングなので、普段の勉強もブラインドテイスティングでやらなくては…と思いがちですが、テイスティングコメントを覚えていない段階でブラインドを行うと、正直心が折れてしまいます。
なので、まずはワインを味わいながら、そのワインの模範テイスティングコメントを紙に書いて覚えました。それを2回ほどやって、そろそろ覚えたかなというタイミングでブラインドをやってみる。そうすることで、自分の苦手分野がわかり、効率的に勉強を進められたと思っています。

最後に

2回にわたりワインエキスパート試験の勉強法についてお話しました。書きだすとつい長くなってしまいます。それくらい内容が盛り沢山なのです。だからこそ、効率的に勉強進めることが重要です。

私がお話したのは一つの方法にすぎませんが、何をしたらいいのかわからないという方にとってはきっと道標になると思います。試験日が日に日に近づいていますが、焦らず今できることに目を向けて、ぜひ楽しんで勉強してください!その先には、今以上に楽しいワインライフが待っています。

 


吉田すだち ワインを愛するイラストレーター

都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
【HP】https://yoshidasudachi.com/
【instagram】https://www.instagram.com/yoshidasudachi/

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