
2020年07月08日
皆様、こんにちは。インポーターの大野みさきです。
先日、びっくりすることがありました。普段はお酒をほとんど嗜まない知人が、「えっ、ワインはそうやって飲むものなの?」と驚きの発言をしました。私は特別なことはしていません。いつものようにワインをスワリングしながら(グラスを回しながら)味わうようにゆっくりと飲んでいただけです。
むしろ逆にどの様に飲むものと思っていたのか尋ねてみたところ、飲食店の飲み放題プランで、まるでビールの一気飲みのように喉をならしながら一瞬でグラスを空けていたようです。そのため現在でも、ワイン=お酒(アルコール度数がビールよりも高い)という認識で、そんな液体を飲んで、一体何が楽しいのかと不思議に思っていたとのこと。
ワインはゴクゴク飲む物ではありません。誰が飲んだとしても、そんな飲み方では毛頭、美味しくも楽しくもないでしょう。何よりもワインの魅力が発揮されていないのは非常に残念なことです。
今日は初心者が失敗しないワインの飲み方&楽しみ方についてご紹介しましょう。小難しいメソッドを覚えないと、なんてことはありません。習うより慣れろです。丁寧にワインと向き合えば、グラス一杯が自ずと答えに導いてくれるはずです。
まずはワインの魅力のひとつである香りを楽しんで下さい。
ワイングラス内に残された空間がポイントとなりますので、ワインの注ぎ過ぎは厳禁です。グラスを真横から見て一番ふくらんでいるところから、1㎝程度下が適量です。仮に入れ過ぎたとしても、ふくらんでいるところまでです。
グラス内の空間が重要なのは、ワインと空気の接触する面積が広いほどよく香りが立ち、より長く香りの変化を楽しめるからです。最大注ぎ量もグラスの1番ふくらんでいるところまでと言っている意味がおわかり頂けるかと思います。
ワイングラスの形状には意味があるのです。その上、クリスタルグラスだとグラス内側表面に凹凸があり、表面積が広くなります。すると揮発性が高く香りが増し、ワインを楽しむには最適なグラスと言えます。
■空気接触 7つの効果
※空気接触=英:エアレーション、仏:アエラシオン
1. ぶどう由来の第一アロマが上がる
2. 醸造由来の第二アロマが下がる
3. 樽香が強まる
4. 渋味がまろやかになる
5. 味わいが広がりふくよかさが強調され、全体のバランスが取れる
6. 還元の影響が弱まる
7. 複雑性がアップする
醸造中は棒を用いて滓(かす)とワインを撹拌する(バトナージュ)や、移し変えて滓引きする(スーティラージュ)はボトリング前の空気接触で、グラス内でスワリングしたり、デキャンタ―に移し変えたりするのは、ボトリング後の空気接触です。
つまり、生産者は酸化と還元の中間を試行錯誤で狙い、私たちエンドユーザーもボトリング後のワインは還元に傾くので、無意識にスワリングして酸化させ、総合的なバランスを調節しています。
ただ全てのワインをスワリングやデキャンティングをすれば、味わいや香りが開いて美味しくなるのかと言うとそうでもありません。
若くてタンニンも酸も豊富なワインでは空気接触の効果は得られますが、逆に長期熟成させた繊細なピノノワールや揮発性の高い香り成分を含有する冷涼地のリースリングなどは、香りが飛んでしまったり、味わいがヘタってしまったりする傾向があります。
そのため、様子を見ながらスワリングのみにするとか、手荒な空気接触をせず、そっと鼻を近づけて香りを嗅ぐなど、その時々によってワインに寄り添う姿勢が大切です。
なお、スパークリングワインにはスワリングは不要です。気泡が液体内の香りを表面まで届けてくれるからです。また、スワリングをすると泡が早く消えてしまうというデメリットもあります。
ボトルに閉じ込められていたワインが、花開くのがグラスの中です。果実、花、ハーブ、キノコ、スパイス、ウッド、乳製品、たばこ、焦焙香、鉱物香などの香りを感じてみて下さい。
スワリングしたり、しなかったり、酸素の影響を受け、刻々と時間の経過と共に変化するワインを楽しんで頂ければと思います。
ワインはひと口ずつ召し上がって下さい。味わいのアタック(第一印象)を感じ、飲み込んだ後のアフター(余韻)を楽しみます。
日本には口内調味という独自の食事方法があります。江戸時代には、味付けの濃いおかず少々に5合/日のお米を食べていたそうです。ご飯を頬張ってそこにおかずを入れて口内で味付けしながら食べるという食法です。欧米人にはない習慣ですが、私たちは無意識のうちに口内調味をしています。
そのためご飯と同じような感覚で、チーズなどの食べ物を飲み込む前に、まだ口の中にある状態で、次のワインを飲まれる方がたまにおられますが、これは賛成できません。好きに食べさせてよ!と思われるかもしれませんが、ワインとお料理のマリアージュは余韻の連続だと考えるからです。
チーズを飲み込んだ後の余韻を感じながら新しくワインを口にします。ワインを数口ほど楽しみ、チーズに手を伸ばしたころにはワインの余韻が生まれ、その後はじめて、次に口にしたチーズとワインが出会います。ワイン→チーズ→ワイン→チーズ→ワイン→チーズ この繰り返しで余韻の部分がマリアージュしているので、口内で一緒くたになってしまっては、元の味わいがわからなくなってしまいます。
ワインは感じる飲み物です。もし、口の中に何か入っていたら、きれいさっぱり飲み込んだ後にワインを召し上がって下さい。ワインが口中に滞在している時は、食べ物は入れないで下さい。余韻で合わせるようにすると、よりワインそのものの味わいを楽しめると思います。ゆっくりとひと口ずつ召し上がって下さい。
これは自分で探してみて下さい。ワインのタイプだけでなく、季節、合わせるお料理、室温、グラスの形状、個人差により、心地よいと感じられる温度帯は異なります。
飲みにくいと感じたら、温度を下げるか上げるかして、自分が最も美味しいと思う温度を見つけて下さい。
現代人は忙しい日々を送っていますが、たまにはゆっくりと時間をかけて、ひと口、ひと口、丁寧に、ワインの香りと味わいに酔いしれてみては如何でしょうか。
それでは皆様、ごきげんよう!
365wine 大野みさき
スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
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