2020年07月22日

とにかくお洒落…話題の“缶ワイン”!特徴やオススメ銘柄をレポート

最近話題の缶入りワイン(略して“缶ワイン”)。お洒落なパッケージのものが多く、写真映えするのでSNSとの相性もバッチリ。若い女性を中心に、徐々に人気が高まっています。

とは言え日本の店頭で見かける機会はまだそう多くありません。ボトルワインに比べると、どうしてもネガティブなイメージを抱かれがち。プルタブを引いて缶からそのまま飲む所作も、従来のワインのお作法からするとあまりにカジュアル。ワインへの愛が深いほど、缶ワインを敬遠してしまうのが正直なところではないでしょうか。

かくゆう私もそうでした。今まで缶ワインとは距離を置いていましたが、それは先入観によるもの。缶ワインがどういうものかを知って実際に味わってみないと、自分の口に合うかどうかはわかりません。そこで今回は、缶ワインの基礎知識を整理しつつ、話題のラインナップからいくつかテイスティングしてレポートします。

缶ワイン流行の背景

近年、爆発的に缶ワインの需要が高まっている国と言えば、<アメリカです。アメリカで初めて缶ワインが登場したのは2003年のこと。かの有名な映画プロデューサー、フランシス・フォード・コッポラのワインブランドからリリースされた缶入りスパークリングワインが始まりです。その後、人気が急上昇。2014〜2019年の5年間で、アメリカの缶ワイン市場規模は10倍以上に拡大したと言われています。

ボトルワインには及ばないものの、勢いが加速し続ける缶ワイン。アメリカで人気に火がついた背景には、3つの特徴があげられます。

1. 軽くて持ち運びに便利

缶ワインはボトルワインに比べて非常に軽いのが特徴的。割れる心配も無く気兼ねなく持ち運べます。また、缶は熱伝導率が高く氷水に入れるだけですぐに冷えるので、場所を選ばず楽しめるというメリットが。

2. プルトップ式で手軽に飲める

缶なのでプルタブを引けばそのまま飲むことができます。オープナーやグラスは必要なし。その手軽さが大きな魅力です。

3. 少量飲みきりサイズ

通常のボトルワイン750ml(グラス約6杯分)に比べ、缶ワインは250〜350mlほどのサイズ(グラス2〜2.5杯分)です。飲み残した場合の保存に気を配る必要はありません。

これらがアウトドア好きのアメリカ人のハートをがっちりつかみ、バーベキューやビーチのお供に選ばれるようになりました。そこに近年の写真共有SNSブームが加わり、写真映えするパッケージの缶ワインが急速に普及したと言われています。

質の高い缶ワインを造る難しさ

缶ワイン自体は数十年前からヨーロッパで出回っていたようですが、注目を浴びるまでに随分と時間がかかりました。質の高い缶ワインを製造するのは難易度の高いチャレンジだったからです。そこには2つの課題がありました。

1. 缶の劣化への対処

缶はアルコール度数の高い液体と長い時間接すると化学反応を起こして劣化します。ワインのアルコール度数は11〜14度程度と高めのものが多く、缶との相性はよくありません。さらに、ワインは酸度も高いため缶の劣化を早めてしまいます。それに耐えうる素材の缶でないと長期間の保存は難しく、賞味期限が短くなってしまうのです。

この問題に最も早くベストアンサーを出したのは、オーストラリアの缶ワインBAROKES(バロークス)でした。彼らは缶の内側に特殊コーティングを施し、ワインとの化学反応を防ぐことに成功。その技術で国際特許を取得し、今では缶ワイン界をリードする存在となっています。バロークス以外のメーカーも缶の改良を重ね、最近では比較的長く保存できるものが増えてきました。

2. 還元臭への対処

温泉や卵、玉ねぎなどの香りに例えられる還元臭。少量であればワインの複雑さにつながるとして歓迎されますが、際立って感じられる場合はネガティブな印象に繋がります。還元臭はワインが極度の酸欠状態になると生じるもの。例えば、長いあいだ気密性の高い容器に入れ保管された場合などです。その代表格といえば缶。缶ワインは特に還元臭のリスクが高まるため、製造にコツがいるのだとか。

現在では少しでも還元臭を減らすために様々な工夫が施されているそうです。そもそもの原因であるブドウの硫黄イオン含有量を減らすために栽培方法を工夫したり、缶詰め前に一定時間あえて酸素に触れさせて酸化を促進したり。カジュアルなイメージの強い缶ワインですが、実は造り手の腕が試されるチャレンジングな商品なのです。

そう聞くと、ぐっと興味が湧いてきませんか!?

日本でも増える缶ワインラインナップ!オススメ銘柄は?

アメリカを先駆けとして世界的に存在感を増しつつある缶ワイン。ここ数年、日本で手に入るラインナップも少しずつバラエティ豊かになってきました。

今回はカジュアルで良質なワインの宝庫イタリアの商品と、缶ワインのメッカであるアメリカの商品、計4銘柄をテイスティング。味わいとオススメ度をまとめていきます。参考にしてみてください!

イタリア ドネリ社の微発砲ワイン「BOLLICINO」

今年2020年1月に日本で発売されたばかりの商品。生産元のドネリ社は、もともとランブルスコの老舗ワイナリー。軽やかなフリッツァンテ(微発砲ワイン)には定評があります。

左はランブルスコ主体の赤。セッコ(辛口)ですがほんのり甘みが感じられ、トマトソースのピザやパスタとの相性はバッチリ。ボトルワインに負けない香りと味わいで、正直びっくりしました。一言でいうと、これは美味しい

右はトレッビアーノとシャルドネをブレンドした白。こちらはキリッと辛口で揚げ物と一緒にいただきたい味わいです。少し“フォクシーフレーヴァー”(食用マスカットのような独特な甘い香り)が強めに感じられました。キンキンに冷やして飲むのがオススメです。

【オススメ度】
赤:★★★★★
白:★★★★☆
【インフォメーション】
容量:200ml
参考価格:250円ほど
販売元:モンテ物産株式会社

アメリカ オレゴン産の缶ワイン「dear mom」

パッケージがとっても可愛いこちらの缶ワインは、今年2020年3月に日本で発売開始となったばかり。4つのテイストを楽しめる4缶セットの缶ワインです(1種類を計4缶、もしくは4種類を1缶ずつの計4缶)。

左から、
・スパークリング(ピノ・グリ100%)
・赤(シラー90%+ヴィオニエ10%)
・白(ピノ・グリ100%)
・ロゼ(シラー50%+マルベック50%)

スパークリングと白ワインには強めの還元臭を感じました。だからと言って台無しと言うわけではありません。還元臭は酸素に触れさせると弱まるので、グラスに移して時間をおいたりデキャンタージュをしたりすればピノ・グリ本来のトロピカルな香りを楽しめます。ただ、その手間をかけずに楽しめるのが缶ワインの魅力のひとつなので、ここではマイナスポイント。

赤ワインはだいぶ軽めな印象を持ったものの、シラーらしい豊かな香りは健在で美味しくいただけます。ロゼは骨格もしっかりしておりなかなかのクオリティ。少し温度を高めると香りが立ってより楽しめます。

【オススメ度】
スパークリング:★☆☆☆☆
白:★★☆☆☆
赤:★★★☆☆
ロゼ:★★★★☆
【dear mom インフォメーション】
容量:187ml
価格:4缶セット 2,596円(税別)
販売元:MY Motto

アメリカ カリフォルニアの王道品種2種

最後にいただいたのは、カリフォルニアの王道品種。

左はカリフォルニアの大手Guarachi Wine Partners社が手がけるシャルドネの缶ワイン「SURF SWIM」。カラフルでさわやかなパッケージがビーチを連想させます。りんごのような果実の香りに海辺を連想させるミネラリーな味わいがあわさって、飲みごたえがあります。酸がとてもやわらかいので、白ワインのキリッとした酸を楽しみたい方にとっては少し物足りないかも…。

右は有名ワイナリー、キスラー・ヴィンヤーズのオーナーが手がける缶ワインブランド「HEAD HIGH」のピノ・ノワール。「缶ワイン=安物」のイメージを覆すことを目指して、良質なブドウを使いクオリティにこだわった少量生産を行っているそうです。味わいは「グラスに注いで出されたら缶だと気づかない」というレベル。温度があがるとカリピノらしい樽のニュアンスも感じられ、贅沢な気分にひたることができます。

余談ですが、SURF SWIMとHEAD HIGHは両方ともサーフィンに関連した名前…パッケージやネーミングにもカリフォルニアらしさを感じますね。

【オススメ度】
SURF SWIM:★★★☆☆
HEAD HIGH:★★★★★
【SURF SWIM インフォメーション】
容量:250ml
参考価格:800円(税別)
【HEAD HIGH インフォメーション】
容量:250ml
参考価格:900円(税別)

缶ワインの持ち込みはアリ?ナシ?

缶ワインを楽しむシーンとしてイメージしやすいのはバーベキューやキャンプなどのアウトドアです。また、持ち寄りホームパーティに持参するのもオススメ。華やかなパッケージがテーブルを彩ってくれます。

では、飲食店にワインを持ち込む場合、缶ワインはアリでしょうか、ナシでしょうか。結論から言うと全然“アリ”!例えば乾杯用に人数分の缶入りスパークリング、食事に合わせるワインはスティルワインのボトルを用意、というBYOラインナップもオススメです。

ただし、本数にかかわらず持ち込み料定額のお店であれば問題ありませんが、本数に応じて持ち込み料が加算されるシステムの場合は注意が必要。できれば事前にお店に確認しておきましょう。

最後に

缶ワインには、ワインの色と香りを楽しみにくいという大きなハンデがあります。それゆえ、お洒落なパッケージが研究され、スパークリングが多く発売されています。泡の方が香りが立ちやすいですからね。

今のところ、素敵なパッケージに包まれた泡…ということでアウトドアやカジュアルな席での乾杯酒に最適な印象が強い缶ワイン。しかし、品質の高いスティルワインも徐々にリリースされつつあります。これからの展開がとっても楽しみです。

 


吉田すだち ワインを愛するイラストレーター

都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
【HP】https://yoshidasudachi.com/
【instagram】https://www.instagram.com/yoshidasudachi

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