2020年08月12日(水)

やさしく解説!日本固有のブドウ品種「甲州」を知ろう(ワインの豆知識 初級)

皆様、こんにちは。ワインインポーターの大野みさきです。突然ですが、

日本ワイン史の初期の頃より存在し、我が国を代表するワインに昇りつめた、日本固有のブドウ品種は何でしょう?

 

 

正解は「甲州」です。今日は甲州について学んでいきましょう。

日本固有の品種「甲州」のルーツ

遡ること1200年、「なんと立派な平城京」(奈良時代)から、「なくようぐいす平安京」(平安時代)にかけて、シルクロードを経由して、現在、正倉院に収められている、ペルシアの宝物と一緒の船に乗って来たかは定かではありませんが、中国からもたらされたのが甲州です。

2013年には甲州のルーツが明らかになりました。桓武天皇ぐらい昔の人であれば、近代のDNA研究に驚かれるのも無理ありません。


写真提供:シャトー勝沼

欧州系のブドウ種であるヴィティス ヴェ二フィラと東アジア系の野生種が、中央アジアで交雑した可能性が高く、甲州の葉緑体のDNAは野生種ヴィティス ダヴィディに近いことがわかっています。ヨーロッパとアジアが出会って甲州は誕生しました。下記の図からもわかるように、甲州は3/4ヴィティス ヴェ二フィラの遺伝子を引き継いでいます。

もう少し詳しく説明しましょう。ブドウの学名は「ヴィティスvitis」と呼ばれています。ラテン語で「生命の木」という意味です。おおよそ300万年前、ヴィティスという1つの属から3つの種に進化を遂げました。

世界で生産されているブドウの約80%がヴィティス ヴェ二フィラです。品種を挙げると、カベルネソーヴィニョン、メルロー、シャルドネなど、ヨーロッパ原産のワイン用に使われるブドウです。

一方、日本で栽培されているブドウは、世界と真逆で80%が食用です。ヴィティス ラブルスカに該当するコンコード、キャンベル アーリー、デラウェア。また、ラブルスカとの交配で生まれた巨峰やピオーネなどです。その背景には、ブドウ栽培者とワインメーカーが異なる場合が多く、約90%のメーカーはワイン造りのために、農家からブドウを購入します。ワイン用ブドウが300~500円/kgで取引されるのに対し、食用は2倍の980円/kgの値が付きます。取引値からも、食用ブドウの栽培が多い理由のひとつだと頷けます。

ちなみに甲州はワインのイメージがありますが、食用にもされます。旬は9月中旬~10月下旬で、種周辺の酸が強いので、種ごと丸呑みするのが、現地(山梨)流の食べ方です。

甲州の産地といえば山梨

さて、甲州は平安京の遷都期に伝わりましたが、そこには2つの説があります。僧侶の行基が勝沼の大善寺に718年に伝えた説と、勝沼在住の雨宮勘解由が自生甲州を自分の畑に植えた説です。

ワインが伝来するのは、その時代からさらに先の室町時代から戦国時代にかけてです。しかし、元来、日本には清酒などの他の酒類があったため、ワイン産業が開くことはありませんでした。

日本で本格的にワイン造りがはじまったのが、1870年(明治3年)、山田宥教と詫間憲々が甲府に葡萄酒共同醸造所を設立してからです。当時は日本の湿潤な気候下では、交雑していない生粋のヴィティス ヴェニフィラやラブルスカでは栽培が難しく、既に山梨で土着となっていた甲州からワインが造られました。こんなに狭い日本でも、山梨以外では(新潟のワイナリーに甲州があるか問い合わせたところ、多分どこも造っていないとのこと)殆ど栽培されておらず、正に甲州にとっては山梨が適材適所であることがわかります。

日本においてワイン発祥の地、かつワイナリー数トップを誇る山梨が、ワイン県と名乗るのも納得ですね。日本で生産量ナンバーワンのワイン用ブドウ品種は甲州(17.1%)で、その95%を山梨で栽培しています。甲州と言えば「山梨」でしょう。そしてその地は「日本ワインのあけぼの」と言えるでしょう。

写真提供:シャトー勝沼

甲州ってどんな品種?その魅力は?

甲州は香りと糖度の成熟ピークにずれがあるため、かつては香りが控えめな品種でした。

それを解決するために、シュール リーを施し、少しでもワインの風味を豊かにしました。2000年代に入ってからは、グレープフルーツやパッションフルーツなどの香り成分(チオール化合物)を引き出すまでに醸造技術が上がります。香りを重視した酵母の選択、醸し時間、樽の有無、マロラクティック発酵の有無など、甲州から造られるワインのバリエーションが以前と比べて増えており、多くの可能性を試されている品種です。

※シュール リー…フランス語で「滓(おり)の上」の意。甲州では頻繁に行われる醸造方法で、発酵終わりのワインと滓を数か月ほど接触させることで、滓に含まれるアミノ酸などの旨味成分がワインに溶け出し、厚みや深みなどが増す。

5月に開催したWinomy家飲みワインコンテストでも、甲州は多頻度で登場しました(1位ソーヴィニヨン・ブラン、2位甲州、3位メルロー・カベルネ・ソーヴィニヨン)。甲州が日本市場で市民権を獲得したのだとニンマリしました。スタンダードですっきりシンプルな辛口タイプが多いですが、早摘みで柑橘香を残したもの、スパークリングワイン、樽熟成やオレンジワインなど、軽~重、辛口~やや甘口、味わいもカラーもバラエティ豊かなところが、この品種の魅力です。

甲州のカラーバリエーションを生み出す要因のひとつが、果皮が藤色やピンクなどの赤ブドウ(グリ系、Vin Gris、灰色ぶどう)です。Grisはフランス語で灰色の意味です。ワインは果皮の影響を受けて、グリがかった青灰色のワインになります。醸し時間や醸造方法によって、濃いオレンジ色になったりもします。

世界に誇る品種「甲州」

2010年には甲州がO.I.V.(国際ぶどう・ぶどう酒機構)にブドウ品種として承認されたので、EU輸出ワインのラベルにKOSHUの記載が可能になりました。つまり甲州が世界に認められたのです。同年、甲州市原産地呼称ワイン制度が誕生。2013年には山梨がGI(地理的表示)に指定されました。行基が植えたかどうか、なんて言われていた甲州が、時を超えあっぱれな出世ですね!

国内製造ワインのうち20%が日本ワインです(80%輸入果汁使用の国産ワイン)。日本市場における全てのワインから換算すると、日本ワインはたった4%に過ぎません。そのうち生産量トップを誇る甲州(17.1%)であっても、全体からするとその割合はすずめの涙です!本当に希少だと感じました。

甲州の価値を最大限に引き上げてみましたが、ここから先は皆様の出番です。きっと飲みたくなってきた頃合いだと思います。さあ、夕涼みに甲州はいかがですか。

それでは皆様、ごきげんよう!

甲州/Koshu プロフィール
●白/黒:白ぶどう(グリ系)
●原産地:中央アジア
●主な栽培地:山梨、2003年~ドイツでも栽培されている
●シノニム:なし(日本固有の品種)
●果粒:楕円形、果粒のサイズ大きめ19×22mm、薄紅、薄紫、ピンク色
●果皮:やや厚い
●栽培環境:雨を好まない、甲府盆地は大陸的な暑い気候で日照量1200時間、降水量少ない、気温差あり
●樹勢:強い
●病気の耐性:カビや病気に弱い
●特徴:晩熟、糖度が低く上がりにくいので13~18度の糖度で収穫(通常20~25度)
●味わい:繊細で線が細い、酸、アルコールは中程度で穏やか

味わった1本

「シャトー勝沼」4代目、今村英香さん曰く、菱山地区の甲州ぶどうのみで醸造。菱山は標高450~550m、粘土質の土壌に小石(礫)が含まれ、南西向きの斜面でぶどうを栽培。豊富な日照と水捌けの良さが特徴。富士山から「笹子おろし」と呼ばれる冷たい風の通り道にあたり、酸味が生き生きと感じられるぶどうを生む。そこに果実味が豊かに調和し、ミネラルをしっかりと感じることができるのが菱山の甲州。


シャトー勝沼 鳥居平今村 甲州ヌーボー菱山2019
淡く透き通ったレモンイエロー。果実味はありながらもフレッシュなレモンを想像するぐらい酸は豊か。ミネラル感と吟醸香も香る日本酒のようなワイン。一般的な平地や河原沿いのふくよかでしっかりとした甲州とは異なり、酸とミネラルが豊富な菱山のテロワールが反映されている。
鳥居平今村(とりいでらいまむら)は勝沼でも特別な場所。シャトー勝沼では代々、栽培からボトリングまでを一貫して行っている。ぶどう本来の力、土壌のテロワール、エリアの違いを具現化することに力を入れる。販売はその道のプロに任せ、良いワイン造りに専念。誰にでも売るのではなく、販売先を限定するこだわりよう。

■ご紹介のワイナリー
シャトー勝沼 HP https://www.chateauk.co.jp/

 


365wine 大野みさき

スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。

【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/

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