
2020年07月08日
皆様、こんにちは、インポーターの大野みさきです。
今日はワインの2大産地、ボルドーとブルゴーニュについて。
このふたつの産地は、4世紀には銘醸地としてその地位を確立し、昨今では世界の生産者のお手本でもありながら、様々な産地、メーカーのライバルとして比べられることが多いのも事実です。それだけ意識されているのでしょう。
それでは、数字を交えながらボルドーとブルゴーニュを徹底比較していきましょう。
エチケットに書いてある「シャトー」とか「ドメーヌ」って何のこと?と思ったことはありませんか?どちらも「シャトー〇〇」「ドメーヌ〇〇」とワイナリー名の前に付けられています。かの有名な「シャトー・マルゴー」や「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)」もそうですよね!
ワインの世界では、シャトーといえばボルドー地方で自家栽培から醸造、ボトリングまでを手掛けるワイン生産者のこと。フランス語で「城」という意味です。
かたやドメーヌはブルゴーニュをはじめ“ボルドー以外”使われています。一人の地主が所有する「区画」を意味するので、土地所有者と言ったところでしょうか。
ボルドーではエチケットに「シャトー○○」と明記されていても、それは単純にネーミングであって、ワイン商(ネゴシアン)によってボトリングされているケースがあります。
ボルドー、ブルゴーニュともに、元詰めのワインにはある一文が書かれています。注意深くボトルを眺めると・・・
Mis en bouteille au château シャトー元詰め(ボルドー)
Mis en bouteille au domaine ドメーヌ元詰め(ボルドー以外)
フランスでは、ぶどう栽培からボトリングまでを一貫して手掛けているところ(元詰め)が30%近くあり、元詰めであることをボトルに記載することが義務付けられています。
実は、ボルドーとブルゴーニュでは生産の規模が違います。ボルドーはブルゴーニュの2.5倍強の「広さ」と「量」を誇ります。それぞれ数字でみてみましょう。
ブルゴーニュは生産規模が小さいので家族経営が特徴です。麦わら帽子を被って長靴を履いた泥だらけのおじさんが出てきて、つたない英語(あるいはフランス語しか話さない)でワイナリーを案内するイメージです。畑仕事をする人、ワインを造る人、販売する人が全て同一人物です。
一方ボルドーの生産者はお城を実際に所有する貴族が発祥※なので、遥か広大な所有畑に、シャトーと呼ばれるにふさわしい立派な佇まいのワイナリーが建っています。経営もほぼ分業制です。ワイナリーをビジットした際、ハイヒールを履いて流暢な英語を話す金髪美女(その上愛想も良い)が対応する場合が多いです。
※貴族が所有していたシャトーは、1789年のフランス革命で一旦は国庫に没収されます。その後、資金力を持つ地方の権力者らが分割せずにまとめて買い上げたのが、現在のシャトーとなります。
余談ですが、ランデブー社会のフランスでは、アポイント(予約)は必須で、アルザス地方を除いては、アポ無しで行くと門前払いとなってしまう可能性が非常に高いです。(1年間フランスに住んでいた大野の経験からすると、アルザスはマイナー産地なので、その日の気分で立ち寄っても、大変ウェルカムな姿勢です)
ボルドーとブルゴーニュでは格付けの対象が異なります。
1855年のパリ万国博覧会をきっかけに誕生したボルドーの格付け。ボルドーでは「シャトー(生産者)」に対して格付けが行われます。
一方、ブルゴーニュでは「畑」が格付けの対象となります。ベネディクト派の修道院がクリマ(特別な個性が与えられた土地)を識別し、銘醸畑を築いてきた歴史があり、複数の所有者で畑を所有しているのが特徴。一つの畑が細分化されているイメージです。
ブルゴーニュの銘醸地シャンボール・ミュジニィ村の畑を例に挙げると、「ドメーヌ○○」のミュジニィとか「ドメーヌ××」のミュジニィという具合に複数の所有者がいます。それぞれが栽培と醸造を行い、畑名(村名)でワインをリリースしています。畑の高名さだけでなく、どの造り手によるものなのかも重要になってきます。
ドルドーニュ&ガロンヌ河からジロンド河に繋がり、大西洋に流れ込む東西150kmの流域に広がるボルドー地方。そして、オーセール、ディジョンからリヨンまでの南北200kmに縦長に伸びるブルゴーニュ地方。気候の特徴をおさえておきましょう。
同じ地方でもエリアによって気候の多様性もありますが、ボルドーは大まかにいって温暖な海洋性気候です。大西洋沿岸を流れる暖かなメキシコ湾流の影響を受け、気候は比較的マイルド。また、海岸と畑の間には広大な松の林(ランドの森)が防風林の役目を果たします。
降水量は年間900mm多いのですが(東京は年間1400mm)、日照量は2000時間/年。生育期は晴天が続くので、ぶどう栽培に恵まれた産地と言っても良いでしょう。
一方、ブルゴーニュは内陸に位置し、夏は暑く冬は寒い半大陸性気候。冷涼な産地なので、太陽の恩恵を受けるボルドーと比べて、やや栽培が難しいエリアです。
ボルドーとブルゴーニュの緯度は次の通りです。
気候の影響を受けて、赤ワインと白ワインの比率は下記のようになります。
気候がマイルドなボルドーでは赤ワインをメインとし、涼しいブルゴーニュでは白ワイン率が半分を超え、また発泡性ワインを造るのにも適しています。
さて、一旦ここで小休止です。後編は、土壌やブドウ品種、ワインのタイプの違いについて。来週もお楽しみに!
※数字のデータは主に2018年のものです。
365wine 大野みさき
スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/