
2021年02月23日
世界でも注目を集める日本ワイン。最近は日本のあらゆる地域で生産され、産地やぶどうの品種によって味わいや特徴が異なるため、その魅力にはまる人が増えています。しかしあまりの豊富さに、選び方が分からない人もいるのでは?この記事では、日本ワインの歴史や魅力、その選び方についてご紹介します。
文字だけを見ると、同じもののように感じる「日本ワイン」と「国産ワイン」ですが、実は大きな違いがあります。「日本ワイン」とは、国産ぶどうを100%使用し、日本国内で醸造されたワインを指します。一方で「国産ワイン」とは、海外から輸入したぶどうや濃縮果汁を使用し、国内で醸造されたワインのことを言います。
これまでどちらも同じ意味合いで使う人が多く、日本ワインを探すうえでどれが日本で栽培・収穫されたぶどうを使ったものか分かりづらいという声が聞かれていました。世界には1930年代に制定された「ワイン法(果実酒等の製法品質表示基準)」という、ワインを明確に区別する法律がありますが、これまでの日本では曖昧なままでそれぞれの自主基準に任せていました。
「日本ワイン」と「国産ワイン」にはっきりとした基準を設けるため、2015年10月、日本でもついにワイン法が制定され、2018年10月からワイン法が完全に施行されることになります。日本のワイン法は、国際規定にならい厳格に定められ、「日本ワイン」と「国内製造ワイン」を明確に区別しました。
日本ワインの歴史はまだ浅く、今から約140年前、1870年(明治3年)に山梨県甲府市において、山田宥教(やまだ ひろのり)と詫間憲久(たくまのりひさ)が「ぶどう酒共同醸造所」というワイン醸造所を設立することから始まります。二人は日本で初めて国産ワインを製造しますが、製造技術の低さから経営難に陥り数年で失敗に終わります。
その後1877年(明治10年)、メルシャンの前身である「大日本山梨葡萄酒会社」が設立され、この会社から、高野正誠(たかの まさなり)と土屋竜憲(つちや りゅうけん)がフランスに派遣され、本場のワイン醸造技術を二年間学びます。フランスから帰国した二人は、宮崎光太郎(みやざき こうたろう)と共にワインの醸造を始めます。
同じ時期に、新潟県では川上善兵衛(かわかみ ぜんべえ)が日本の気候に合うぶどうの品種改良に着手します。彼は、フランスから帰国した土屋竜憲からぶどうの栽培技術を学び、1895年(明治28年)に「岩の原葡萄園」を開設します。地道に品種改良を重ね、1927年(昭和2年)、「マスカット・ベーリーA」など日本の気候風土に合った独自品種の開発に成功。日本のぶどう栽培とワイン醸造に大きな貢献を果たします。
ただ、当時一般的な家庭にはワインが取り入れられることはなく、甘口で飲みやすい「赤玉ポートワイン」のような甘味果実酒などを中心にワイン造りがされていました。
ワインの消費が拡大するのは、1970年(昭和45年)日本万国博覧会の開催以降、日本の食生活の欧米化が進んだことがきっかけです。1980年代にはボジョレ・ヌーヴォーがブームとなり、1997年(平成9年)の赤ワインブームなど、いくつものブームを経て、今現在日本ワインは、欧米のワインと肩を並べるほど品質が向上し消費も広がっています。
今現在の日本では、北は北海道、南は鹿児島県とさまざまな場所でワインが造られています。それぞれの地域において気候風土が大きく異なるため、産地ごとに個性のあるワインが生まれるわけです。日本ワインの主な産地や品種、その味わいについて見ていきましょう。
日本ワインの代表的な産地は山梨県・長野県・北海道・山形県の4つ。ワイン用のぶどう栽培は、昼夜の温度差が大きい地域で、冷涼な気候が適しています。日本は昼夜の気温差があまりなく、湿度が高いので、ワイン造りには不向きですが、この4つの産地は、これらの条件を満たしていると言えます。
ワイン生産量、ワイナリー数共に日本一を誇る山梨県。夏から冬の気温差が大きく、降水量が少ないためワイン造りに最適とされ、特に朝晩の寒暖差が大きい甲府盆地は、甘くて芳醇な食用ぶどうの産地としても有名です。甲州市勝沼町や笛吹市など、広範囲に渡ってぶどう栽培がおこなわれており、高品質な日本ワインを生み出す有名なワイナリーも数多く存在します。
長野県は山梨県に次ぐ、日本で2番目のワイン生産量・ワイナリー数を誇っています。朝晩の気温差が大きく降水量が比較的少ないことから、多くのワイン用ぶどう品種が造られています。長野県の日本ワインはさまざまなぶどう品種を使用できるため、多種多様なワインが楽しめますよ。
梅雨のない北海道は、湿気が少なく寒暖差が大きいのが特徴で、主にドイツやフランス北部などヨーロッパ北部の、白ぶどう品種の栽培に適しています。また、近年は高級赤ワイン用品種「ピノ・ノワール」も栽培されていて、国内でも他県にはないワインが造られると注目されています。
さくらんぼの産地として有名な山形県は、ぶどう栽培にも最適。東北地方ながら、夏はかなり気温が上がり9月以降一気に冷え込むため、大きな寒暖差が生まれ、質の高いぶどうが収穫されます。また、山形県産ぶどうのみを使い、品質基準審査に合格した日本ワインを「山形県産認証ワイン」とするなどの独自の基準を与え、品質向上を図っています。
日本ワインの主なぶどう品種は「甲州」と「マスカット・ベーリーA」。山梨県甲州市勝沼地区で確認された日本固有品種「甲州」は、赤みを帯びた果皮を持ちますが白ワイン用の品種です。「甲州」から造られるワインは、フルーティでほどよい酸味のあるみずみずしい味わいが特徴です。
川上善兵衛によって開発された、新潟県が原産地の「マスカット・ベーリーA」は、赤ワイン用の日本固有品種。果皮は濃い紫色で、果実は大きく甘味が強いことから食用としても人気です。濃く鮮やかな色調の、果実味のしっかりとしたまろやかな味わいが特徴で、飲みやすい赤ワインに仕上がります。
日本ワインは、上品な甘さと飲みやすさが特徴。日本人の味覚に合うように造られ、その香りはフルーティでおだやかな味わいです。一般的にワインは、造られた国の料理と特に相性がいいと言われますが、日本ワインも同様で、繊細に作られる日本料理とマッチします。
「甲州」を使用するワインは、柚子やカボスなど、日本の柑橘のような風味を感じる軽やかさが特徴で、刺身や寿司など生魚や出汁を効かせる料理とぴったり。また「マスカット・べーリーA」は、醤油との相性が抜群で、ブリ大根や煮付けなどの魚料理や肉料理によく合いますよ。
日本ワインは、2018年10月に施行された「ワイン法」により、表ラベルに「日本ワイン」という表示をすることができるようになりました。そして、その地域で栽培されたぶどうが85%以上使用されていること、醸造もその地域で行われることなどが条件で、日本ワインに「甲州ワイン」のように「地名+ワイン」をラベルに表示することが可能です。
次に、ぶどうがその地域で栽培され、醸造は別の地域でおこなわれた場合、「甲州産ぶどう使用」のように「地名+産ぶどう使用」表示することができます。また、ぶどうが別の地域で栽培されたものを使用し醸造された場合、「甲州醸造ワイン」のように「地名+醸造ワイン」と表示することができます。
国内製造ワインに関しては、濃縮果汁や輸入ワインを原料とする場合、その情報がラベルに表示されることになりますので、表ラベルをチェックすることで日本ワインを選ぶことができますよ。
日本ワインは、ぶどうの品種や産地によって味わいが異なる点が大きな魅力。日本ワインの定番の選び方と言えば、品種や産地から自分に合うものを見つけるのがおすすめです。
繊細な果実の香りと、ほどよい酸味を感じる日本ワインを楽しみたいなら、山梨県産の甲州品種から造られるワインを選んでみましょう。味わいがすっきりとしていて、見た目も美しいワインです。果実味を感じるフルーティなワインが好きなら、デラウェア品種から造られる白ワインがおすすめ。ぶどうを丸ごとかじっているかのような、豊かな味わいですよ。
また、本格的な白ワインを楽しみたいなら、北海道産を選んでみてはいかがでしょうか。ヨーロッパの白ぶどう品種が多く栽培されているので、キリッとしたキレのあるエレガントなワインに出会えるでしょう。
渋い赤ワインが苦手な人は、マスカット・ベーリーA品種から造られるワインを選ぶといいでしょう。いちごキャンディのような芳醇なフルーツの香りとおだやかな渋みが特徴。濃密なボリューム感のあるフルボディ赤ワインが好きなら、長野県産のメルロー品種やカベルネ・ソーヴィニヨン品種から造られるワインを選んでみてくださいね。
お酒の弱い人やワインが苦手な人にもおすすめなのが、日本ワイン。フレッシュでフルーティな甘さを感じる甘口ワインを探している人にはうってつけですよ。
¥3,000(税込)〜/白ワイン/辛口
日本の固有品種にこだわり、日本ワインの確立を目指す甲州のトップワイナリー「グレイスワイン」の代表的なワインのひとつ。ほどよい甘味とすっきりとした酸味がバランスよく、やさしく繊細な味わいです。海外でも早くから日本の代表的なワインとして評価されています。
¥2,420(税込)〜/白ワイン/甘口
北海道産ナイヤガラのもっとも糖度の高いぶどうを使う甘口の白ワインです。まるでぶどうを丸かじりしているような豊かな果実味が特徴で、とってもフルーティ。アルコール度数が8%とワインの中では低めなので、ワインが苦手な人やお酒が得意でない人も楽しめますよ。
¥1,628(税込)〜/赤ワイン/ミディアムボディ
1877年に誕生した、日本最古の民間ワイン会社が前身の大手ワイナリー「シャトー・メルシャン」。こちらは、山梨県産の日本の固有品種マスカット・ベーリーAから造られる高品質の赤ワインです。鮮やかなルビー色で、渋味を感じることがなく、熟成された酸味とやわらかな甘味を感じるバランスのよさが印象的。
¥1,408(税込)〜/ロゼワイン/辛口
最近注目を集める宮崎県のワイナリー「都農ワイン」。キャンベル・アーリー種を100%使用した、コクとキレのある辛口ロゼワインです。フレッシュないちごやりんご、ハーブなどの香りが特徴的で、白身のカルパッチョやマリネ、鶏肉のタタキなどポン酢や醤油の味付けとも相性がいいですよ。
¥1,518(税込)〜/スパークリングワイン/辛口
山梨県産のぶどう品種甲州を100%使用して作る、本格的なスパークリングワイン。そのキメの細やかさが魅力で、淡い黄金色がとても美しいです。上品な心地よい口当たりで、和食と共に味わうのにぴったりですよ。
¥4,378(税込)〜/白ワイン/辛口
ブルゴーニュで修業を積んだ女性醸造家が手掛ける、山梨県にある新進気鋭の「キスヴィン・ワイナリー」。山梨県甲州市塩山で栽培された「シャドルネ」を使用した白ワインで、フランスのブルゴーニュと同じくフレンチオーク樽を用いて熟成させています。グレープフルーツや桃のようなフレッシュな果実味を感じ、なめらかな口当たりの絶品ワイン。
¥11,880(税込)〜/赤ワイン/フルボディ
ワインコンクールで何度も受賞経験のある「登美」の赤ワイン。サントリーの登美の丘ワイナリーでは、ぶどうのための土づくりからワインの瓶詰めまでを一貫して行うこだわりぶりです。紫色を帯びた深いガーネット色のフルボディで、ブルーベリーやブラックベリーなどの凝縮されたフルーツの香りと胡椒や松、杉やにのようなスパイシーさが感じられます。口のなかに豊かな風味がいっぱいに広がりますよ。
¥5,823(税込)〜/赤ワイン/フルボディ
日本ワインの美しい星になる、というコンセプトから名付けられた「グランポレール」。長野県安曇野池田の自社畑でぶどうを栽培し、その土地の風土を活かしたワイン造りをおこなっています。カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローを用いた、上品でエレガントな味わいが特徴で、深い色合いと果実味豊かな香りを楽しめます。
¥4,070(税込)〜/ロゼワイン/中辛口
スペインのぶどう品種栽培に取り組む新潟は、最近注目を集めている新しい産地。新潟産ピノ・ノワールとピノ・グリで造られるロゼワインは、きれいなサーモンピンクで、後味がさわやかで華やかな香りを感じられます。酸味を抑えた日本ワインらしい味わい。
¥4,058(税込)〜/スパークリングワイン/辛口
大分県宇佐市安心院(あじむ)のワイナリー。安心院で収穫されたカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローで造られたスパークリングワインロゼは、国内では珍しく瓶内二次発酵がおこなわれ、発酵終了後もそのまま3年間熟成させています。泡立ちはキメ細かく豊か、そして奥深い味わいを楽しめる特別なひと品です。
世界からも評価され、ワイン愛好家からの注目度も上がっている日本ワイン。日本ワインは、日本人だからこそ満足できる魅力を多分に含んでいます。最近は日本の醸造技術が驚くほど向上し、世界に引けを取らない味わいのものも豊富。お気に入りの日本ワインにきっと出会えるはずですよ。
※商品価格は、2021年2月16日時点での情報です。