
2021年02月23日
子どもから大人まで、馴染みの深いプロセスチーズ。チーズといっても、スライスチーズやカマンベール、クリームチーズなどたくさんの種類がありますが、どれが「プロセスチーズ」なのでしょうか。食べたことはあるけれど、意外と知らないプロセスチーズの謎を学んでみましょう。この記事では、ナチュラルチーズとプロセスチーズの違い、カロリーや健康面によいのかなどを、チーズプロフェッショナル(チーズのプロ資格)が詳しくご紹介していきます。
ナチュラルチーズとは、原料に乳を使い、固め発酵させたチーズのことをいいます。乳とは、牛乳、羊乳、山羊乳、水牛乳などの家畜から取れるミルクのことを指しますよ。さらに深く製造方法について話をすると、単に固めると言っても人工的にではなくナチュラルなもの(乳酸菌、天然酵母、酵素など)を使用して造られるのが特徴的。
また、ワインのように、ナチュラルチーズは時間が経つごとに熟成していきます。乳酸菌や酵母、カビなどが、完成したナチュラルチーズの中で熟成変化し、味わいや風味が日ごとに変わるのです。このことから、ナチュラルチーズは乳を使用し、熟成変化する食べ物ということが分かりますね。
日本では、ナチュラルチーズを主に以下のタイプで分類されることが多いです。フレッシュタイプ、白カビタイプ、青カビタイプ、ウォッシュタイプ、シェーブルタイプ、セミハードタイプ、ハードタイプの全7タイプ。書籍やチーズ専門店などでは、それ以外にもさらに細かく分類することもあるので、この7種類以外にもあることを知っておきましょう。
そして、ナチュラルチーズとは、日本の呼び名であり、海外ではただの「チーズ」と呼ばれています。海外で買うときや注文するときは、注意しましょうね。
フレッシュタイプ :クリームチーズ・マスカルポーネ
白カビタイプ :カマンベール・ブリ
青カビタイプ :ゴルゴンゾーラ・ロックフォール
ウォッシュタイプ :エポワス・マンステール
シェーブルタイプ :サント・モール・ド・トゥーレーヌ・セル・シュール・セル
セミハードタイプ :ゴーダ・チェダー
ハードタイプ :パルミジャーノ・レッジャーノ・エメンタール
このように、全世界でさまざまなタイプ味わいのナチュラルチーズが造られています。ナチュラルチーズといえばフランス産が有名ではありますが、オランダやインド、ギリシャなどでもおいしいナチュラルチーズが造られているんですよ。
ナチュラルチーズは原料が乳でしたが、プロセスチーズは、原料がナチュラルチーズ(主にハード、セミハードタイプ)です。製造方法は、ナチュラルチーズを粉砕し、乳化剤や水などを加え、乳化釜で加熱し溶かし、型に入れ冷やし固められ完成です。型に入れられているので、上記の画像のように、ツルリとした表面がプロセスチーズの見た目の特徴でもあります。
また、ナチュラルチーズのように乳酸菌が生きているチーズではありません。なので、熟成変化することがなく、味わいの変化がないことや賞味期限が長いことで、家庭で親しまれやすいチーズになります。価格もナチュラルチーズと比べると安いので、朝食やお弁当などによく登場する気軽に食べられるおいしいチーズです。
・スライスチーズ
・ベビーチーズ
・キャンディーチーズ
・6pチーズ(ポーションタイプ)
・切れてるチーズ
・塗るチーズ
ナチュラルチーズとプロセスチーズは、原料も製造方法も違うので栄養素も違います。日本食品標準成分表を参考にご紹介していきますね。
カロリーは、パルメザン(445Kcal)やエメンタール(398Kcal)などのハードタイプのナチュラルチーズに比べると、プロセスチーズは313Kcalとやや低いです。ですが、モッツアレラ(62Kcal)やマスカルポーネ(83Kcal)などのフレッシュタイプのナチュラルチーズと比べると、高くなります。しかし、カマンベール(291Kcal)やブルー(326Kcal)などのナチュラルチーズとは、ほぼ同等な値。
カルシウムは、エメンタールやパルメザンなどが1,000mg以上ととても高いですが、ほかのナチュラルチーズ(モッツアレラ:330mg・カマンベール:460mg)と比べると、プロセスチーズは630mgと、ほぼ同等かそれ以上の高さに位置していることが分かります。
ビタミンに関してはカッテージのみ低めですが、その他のナチュラルチーズとプロセスチーズはどちらもほぼ同じ値です。
このようにカロリーや栄養素を見てみると、そこまで大きな違いはないように見られます。プロセスチーズはナチュラルチーズより価格が安いことを考えると、栄養素が高いうえにおいしくてコスパフォーマンス抜群なチーズということになりますね。
※すべて可食部100gあたり
プロセスチーズには、乳化剤が添加されています。「乳化剤=体に悪そう」と思う方もいるかもしれませんが、味わいの均一性や食感、風味などをよくするためにはとても重要です。たとえば、マヨネーズ・バター・パン・アイスクリーム・チョコレート・ホイップクリーム・ちくわなどにも乳化剤は使用されています。
でも、なぜプロセスチーズには乳化剤が必要なのでしょうか。それは、溶かしたナチュラルチーズと水を一緒に混ぜても、そのままだと固まらないから。その2つをくっつけ、固めるために乳化剤が使われています。
また、乳酸菌を殺菌する作用もあり、それによりいつ食べても味わいが同じで、日持ちも長くなるんですよ。乳化剤が入っているから体に悪いということはなく、乳化剤のお陰でおいしいチーズが食べられるということですね。
プロセスチーズは、低価格で購入できカルシウムを多く摂取できる素晴らしいチーズです。厚生労働省が示している「日本人の食事摂取量基準(2020年版)」で見てみると、30〜49歳の方が1日で摂取するカルシウムは、615mgと勧めています。また、厚生労働省が開示している「平成30年国民健康・栄養調査結果」では、30〜49歳の女性は439mgしかカルシウムを摂取できていません。これを補うためにも、1日の中で6pチーズやキャンディーチーズなどを、朝食やおやつなどに2つほど食べるといいですよ。
おすすめのプロセスチーズの食べ方は、クロックムッシュのように、パンにハムととろけるスライスチーズを挟んでトースターで焼く調理法。また、プロセスチーズと海苔も相性がいいです。プロセスチーズに海苔を巻いたり、パンにとろけるスライスチーズと海苔、シラスを載せて焼くのも和風ピザのようになっておすすめですよ。プロセスチーズは、日持ちが長いので冷蔵庫に常に保存していると小腹がすいたときに便利なアイテムです。
チーズは、カルシウムを摂取するにはとてもおすすめな食品。しかし、ナチュラルチーズを値段も高く、カロリーや塩分のことを考えると毎日食べるのは難しいですよね。プロセスチーズは、価格も安く、日持ちも長いので、気軽にカルシウムを補填するには素晴らしい食品です。
現在、プロセスチーズもナチュラルチーズにそっくりな味わいの商品も登場しています。プロセスチーズが苦手な方も、ぜひおいしくなったプロセスチーズを食べてみてくださいね。チーズをおいしく食べて、健康づくりに役立てましょう。
ソムリエ・チーズプロフェッショナル /
YURI
資格:J.S.A.ソムリエ、C.P.A.認定チーズプロフェッショナル、食生活アドバイザー3級。『もっと楽しく、もっと気軽に、もっとおいしく!』をモットーに誰でもワインとチーズを気軽に楽しめるようアドバイスを発信中!ワインの輸入会社、レストラン、料理教室運営などを経験したのち、現在はフリーランスのソムリエ・チーズプロフェッショナルとして活動中。主にワイン・チーズ教室やブログ、ライターにてワインやチーズ・マリアージュなどの楽しみ方を伝えています。
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