2021年03月24日

“はずれワイン”の対処法(後編)

誰もが気になる “はずれワイン”の対処法。前回「このワイン “はずれ”かも……?」と感じるケースにはいくつかのパターンがあるとお話しました。おさらいすると……

1. ワインの味わいが自分の期待通りでない……ミスマッチパターン
2. ワインのポテンシャルが隠されてしまている……能ある鷹は爪を隠すパターン
3. 保管ミスでワインの状態が悪化……劣化パターン
4. 元からワインの状態が悪い(ブショネなど)……“はずれ”パターン

前編ではこのうち “1.ミスマッチパターン”と “2.能ある鷹は爪を隠すパターン”に触れました。後編となる今回は、 “3.劣化パターン”と “4.はずれパターン”をまとめます。

3. 劣化パターン(ワイン保管時の注意点)

購入後の保管ミスでワインを劣化させてしまい、本来は素晴らしいワインを “はずれ”状態にしてしまうケースもしばしばあります。購入したワインを美味しく飲むには、どのような点に気をつけて保管すればよいのでしょうか。おさえるべき4つのポイントを確認したあと、おすすめの保管方法をお話します。

おさえるべき4つのポイント

温度

ワインは温度に敏感なお酒です。冷たすぎても熱すぎてもダメ。ちょうどいい温度で保管&サーブすることで、本来のポテンシャルが花開きます。特に注意したいのは高温です。一般的に30℃以上の温度に長時間さらされるとボトル内の液体が膨張して酸味のバランスが崩れ、残念な味わいになってしまうと言われます。高温下ではコルクも膨張してボトル口に隙間ができ、液漏れや酸化のリスクも高まります。最適な保管温度は13〜15℃くらいです。

光(紫外線)

私たち人間にも害が多い紫外線ですが、ワインも例外ではありません。ワインが紫外線に触れると味わいが劣化してしまうのです。ワインボトルが濃い茶色や緑色をしているのは、紫外線を極力遮断するためです。保管する際にもできるだけ紫外線の当たらない場所を選ぶ必要があります。太陽光はもちろん、(メーカーによりますが)蛍光灯やLEDライトからも少なからず紫外線が放たれているので、注意が必要です。
※紫外線とワインの味わいの関係については、ワインインポーターFiradisの公式サイトに掲載されている「紫外線によるワインの劣化を徹底検証」コラムがとても興味深いので、気になる方はチェックしてみてください。

振動

ワインを揺らすと粒子の安定性が損なわれ、ワイン本来の味わいのバランスが崩れ、薄っぺらい味になってしまいます。特に甘味やコクといった、ワインの “ふくよかさ”を作る要素がかすんでしまうのです。また、ボトルの底に溜まったオリ(酵母などの沈殿物)が舞い上がり、濁ったり味に雑味が出たりします。でも大丈夫! もしワインを揺らしてしまったら、たいらな場所に1日程度立てておくと再びバランスが整います。

湿度

コルク栓のワインの場合、湿度にも気をつけなければなりません。コルクは乾燥すると縮み、ボトル口に隙間が生まれます。そうするとワインが外気にさらされ、酸化リスクが高まります。液漏れの危険もあります。ただ、数年〜十数年保管して熟成させる場合でもない限り、そこまで神経質にならなくても大丈夫です。コルク栓に最適な湿度は75%前後と言われていますが、からっからに干からびるほど乾燥した場所でなければ数日〜数ヶ月程度なら問題ありません。

ワインのおすすめ保管方法

家庭用ワインセラー(おすすめ度 ★★★★★)

やっぱりワインは専用のワインセラーで保管するのがいちばんです。家庭用ワインセラーを選ぶ時に注目してほしいのは、「温度管理の性能」、「紫外線カット機能の有無」、「湿度保持機能の有無」です。

一般的にペルチェ式とコンプレッサー式の二種類(違いは冷却システムの仕様)が販売されていますが、私はコンプレッサー式がおすすめです。ペルチェ式は安価で手を出しやすい反面、冷却パワーが弱めで電気代がかかりがちです。コンプレッサー式は価格が高く大きなものが多いので気軽には購入しにくいものの、性能がよく電気代は低めに抑えられます。「コンプレッサー式は振動が気になる」と言われますが、ペルチェ式もさほど変わりません。

コンプレッサー式で紫外線カットガラスを採用しており、湿度保持機能があるものが理想です。例えばさくら製作所さんのこちらのワインセラーのような機能がああればベストです。

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冷蔵庫(おすすめ度 ★★★★☆)

ワインセラーが理想と言われても、値段や置き場所がネックで手を出しにくいのが本音ですよね。そんな時は、冷蔵庫で保管するのがおすすめです。冷蔵庫は「冷えすぎる」「光があたる」「頻繁に揺れる」という “三重苦”を指摘されがちですが、数日〜数週間(場合によっては数ヶ月)程度であれば、問題なしです。冷えすぎるとワインの香りや味わいが閉じてしまいますが、飲む時に室温でならせば大丈夫です。光を遮断するために新聞紙で包んで冷蔵室に入れるのがおすすめですが、長期保存をしなければそこまで問題ありません。振動についても、気になる場合は飲む直前にたいらな場所にたてて落ち着かせればOKです。

実をいうと、我が家ではワインが増えてくると野菜室に乱暴に入れてしまうこともあります……(汗)。一般的に冷蔵室の温度は2〜6度、野菜室の温度は3〜8度程度です。湿度は冷蔵室で10%以下、野菜室で20〜50%程度(機種によります)。開け閉めの振動は断然野菜室の方が激しめ。どちらにもメリット・デメリットありますので、ご家庭の冷蔵庫の利用状況に合わせて収納してみてください。

この状態で数週間おいてしまったワインでも、美味しく飲めるものが多いので、あまり神経質にならなくても大丈夫!

4. はずれパターン(ケース別レスキュー裏技)

最後は購入時点でワインの状態が悪い、文字通り“はずれ”パターンについてです。ざっくり分類すると、「還元状態」と「ブショネ」の2つのケースがあります。以下にそれぞれの詳細と、レスキューの裏技をまとめました。

還元状態のワインとは

ワインが極度の酸欠になった状態を「還元状態」といいます。還元状態になると “還元臭”と呼ばれる、硫黄のような匂いが立ちのぼってしまいます。例えるなら温泉や卵、玉ねぎなどの香りです。還元臭は、特に長いあいだ気密性の高い容器に入れ保管されたワインに感じられる異臭です。

機密性の高い容器に入ったワインといえば、スクリューキャップのボトルワインや缶入りワインが代表例。オーストラリアやニュージーランド、南アフリカなどのいわゆる “新世界”と呼ばれるエリアではスクリューキャップを多用しており、しばしば還元状態のワインに出会うことがあります。

還元ワインのレスキュー裏技

ワインから硫黄臭を感じたら、そのままシンクに流してしまいたくなりますが……ちょっと待って! 還元臭は酸素に触れさせると弱まるので、まずは一呼吸おき、以下を試してください。空気とワインがまざって還元臭の改善に効果があるといわれています。完全には消えなくても、気にならない程度にまで弱まる可能性があります。

・グラスに移して30分ほど時間を時間をおく
・デキャンタージュする
・一度ボトルを開けたあと、蓋を閉めてワインを勢いよく振る(還元臭が弱まるまでくりかえす)

ブショネのワインとは

ブショネとは、コルクに繁殖した細菌と消毒用の塩素が化学反応を起こし、トリクロロアニソール(TCA)という物質が生成され、ワインを劣化させてしまう現象です。昔からワインの品質を保つ素晴らしい素材としてボトル栓に採用されてきたコルクですが、天然の植物を加工して造られるため、細菌が繁殖していることがあるのです。市場に出回るコルク栓ワインの約5%がブショネだと言われています。

ブショネの匂いは「濡れた段ボール」と表現されます。雨の日に届く宅配便の段ボールから漂ってくる匂いを想像してみてください。ワインからそんな匂いが漂ってきたら……嫌ですよね。ワインにはずれなんてない! と信じている私も、ブショネのワインだけは受け入れられません。

ブショネワインのレスキュー裏技

そんな問題児のブショネワインを手にしてしまったら、購入したお店にレシートを持参して健康なワインと交換してもらうのがいちばんです。ただ、「なんとなく段ボールっぽい匂いがするけど、これがブショネかどうかわからない……」というケースがほとんどだと思います。よっぽど訓練した人でないと、自信をもって返品交換を申し出るのは難しいですよね。

そんな時に試してほしいのは、ポリエチレン製の食品ラップやビニール袋をワインに浸してみることです。ロサンゼルス・タイムズの記事によると「ポリエチレンはTCA(ブショネのワインに含まれる劣化の原因物質)をスポンジのように吸収する性質がある」とのこと……! だいたい1時間ほど浸しておくとTCAが少なくなり、ブショネの嫌な匂いがなくなるのだとか。それでも取れない場合は、あたらしいラップに浸すのを繰り返すといいそうです。意外すぎる解決策ですが、食品ラップはどこのご家庭にもあるものなので、もしブショネの疑いのあるワインに出会ったら試してみてください。なお、食品ラップにはポリ塩化ビニリデンや塩化ビニル樹脂など、ポリエチレン以外の素材でできている商品もあるので、ご注意ください。

それでも美味しく飲めない時は……

ミスマッチパターン”、 “能ある鷹は爪を隠すパターン”、 “劣化パターン”、 “はずれパターン”すべてのケースの対策をしっかり実行しても、目の前のワインを美味しくないと感じてしまった場合、最終手段として、思い切ってワインを別のものに加工してしまいましょう! 

ホットワインカクテルにして楽しむのもありですし、煮込み料理などの隠し味に使うのもあり。ホットワインやカクテルのおすすめレシピはWinomyの他のコラムで紹介されていますので、ぜひチェックしてみてください。

せっかく購入したワインなのですから捨ててしまうのではなく、ぜひ工夫して楽しみましょう!
→前編はこちら

おうちで簡単!ワインを使ったカクテルや飲み方アレンジ

 


吉田すだち ワインを愛するイラストレーター

都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
【HP】https://yoshidasudachi.com/
【instagram】https://www.instagram.com/yoshidasudachi

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