2021年04月13日

イタリア最高級ワイン「アマローネ」。その独特の製法とおすすめ5選

イタリアの希少な熟成赤ワイン「アマローネ」。その手間暇がかかる独特の製法とほかでは味わえない濃密で豊かな味わいで、多くのワイン愛好家や専門家を虜にしています。この記事では、アマローネが贅沢と言われる所以や代表的な生産者、そしてぜひ飲んでみたいおすすめの銘柄を詳しくご紹介します。

イタリアの最高級ワイン「アマローネ」

黒ぶどうが入った小さなかごと赤ワインが入ったグラス
iStock.com/Studio_Dagdagaz

イタリアにおいて最高級と評される辛口赤ワイン「アマローネ」。正式名称は「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ」と言い、『ロミオとジュリエット』の舞台である、イタリアのヴェネト州のヴェローナ地区にあるヴァルポリチェッラという地で造られています。

限られた数少ない生産者たちによって少量生産され、かつてはその希少さから王侯貴族しか口にできなかったと言われるほどでした。希少である理由には、生産者の少なさだけでなくその製法にもあります。

アマローネは、収穫したぶどうをアパッシメント(陰干し)し水分を蒸発させてから使う点が大きな特徴のひとつ。アパッシメントすることでぶどうのかさが減り、そのため必然的に生産量も少なく稀有なワインとなるのです。

旨味が凝縮されたぶどうから造られるアマローネは、濃厚で甘さのなかに苦味を感じる甘美な味わいで、2010年からイタリアワインの最高峰D.O.C.G.(保証付原産地統制名称)に認定されています。独特の製法で造られるアマローネは希少価値が高く、世界中のワイン愛好家を魅了しています。

膨大な時間をかけて作られる唯一の味わい

木の箱にぶどうをおいて干している様子
iStock.com/VladimirGerasimov

アマローネとは、イタリア語の「アマーロ(苦味)」という言葉に由来していて、シルクのようななめらかな質感と凝縮された旨味、そしてチョコレートを思わせる甘味と苦味を感じる魅力的な味わいが特徴。その名前の通り、独特のほろ苦さを伴う、ほかのどのようなワインとも異なる唯一無二の魅力が溢れています。

アマローネのぶどう品種

アマローネは、前述した通り、アパッシメントしたぶどうをブレンドして造られるのが特徴。ぶどうはイタリアの固有品種に限られ、主にヴェネト州で古くから栽培される黒ぶどう品種「コルヴィーナ種」「コルヴィオーネ種」「ロンディネッラ種」「モリナーラ種」などが使われます。

コルヴィーナ種
アマローネの主要品種。果皮が厚くアパッシメントに向いていて、酸味が強くタンニンは中程度、サワーチェリーのような香りが特徴です。ワインになるとプラムやキャラメルのような香りが表れます。

コルヴィオーネ種
ほろ苦いアーモンドの風味やフルーティな香りがあり、酸味が強くタンニンがほとんどありません。ぶどうの房の密度がゆるやかで風通しがいい品種で、アパッシメントに向いています。

ロンディネッラ種
ほどよい酸味と低いタンニンが特徴の混醸用のぶどう品種。力強いコルヴィーナ種と合わせることで、バランスのよいワインに仕上がります。

モリナーラ種
ヴェネト州やロンバルディア州など広い地域で栽培され、ワイン全体をまとめる役割を果たします。

これらのぶどうが十分に熟成した10月頃、品種ごとにひとつひとつ手摘みで収穫してから、風通しのよい部屋でアパッシメントしていきます。ぶどうの収穫の際は、ひとつずつ完熟具合を確認して慎重に選別します。さらに傷ついたり腐敗したりしているものは、ほかのぶどうに悪影響を与えるため取り除かれるなど、すべての作業に手間暇をかけているのです。

アマローネと表記できる条件

アマローネは2010年にD.O.C.G.に認定されましたが、それまでは生産者によってアパッシメントの期間が異なっていたため長らくD.O.C.認定のワインとされていました。

D.O.C.G.ワインに昇格したアマローネは、アパッシメントの期間や樽熟成期間、瓶熟成期間、最低アルコール度数、使用するぶどう品種などさまざまな規定をクリアしなければアマローネと表記することはできないこととなり、その基準が統一されています。

アマローネの基準は、熟成期間は最低でも2年以上、アマローネ・リゼルヴァは4年、そしてアルコール度数は14%以上と、ほかのD.O.C.G.ワインと比較しても高い規定となっています。

醸造方法にもこだわりが

ぶどうを干している様子
iStock.com/sebastianosecondi

アマローネは、手摘みで収穫した完熟ぶどうを約3〜4ヶ月かけてアパッシメントし、40〜45%の水分が蒸発するまで乾燥させます。その間も、カビが発生していないか、均一に乾燥できているかなどを毎日確認し、気温や湿度の調節を頻繁におこないます。

水分が40〜45%失われることで、ぶどうに含まれる糖分やタンニン、酸、ポリフェノールなどが凝縮され旨味の詰まった状態となります。アパッシメントとは、大変労力を要する作業ですが、これが濃厚な旨味と豊かな香りを生むのです。

干しぶどうにしてから発酵させたあと、樽で最低2年以上熟成させ、そして瓶詰めしたあとにさらに6ヶ月以上熟成させて、ようやく出荷ができる状態とななります。

ぶどうをアパッシメントするこだわりの醸造方法は、醸造に使う果汁が半分近くまで減ることになり、一般的な製法のワインと比べても、必然的に生産量が少なくなることが分かるでしょう。アマローネとは、できあがるまでに時間も生産コストもかかる希少性の高い贅沢なワインと言えます。

リパッソという方法も

リパッソとは「元に戻す」という意味の、ヴェネト州における伝統的な醸造方法。アマローネを造る際に、アパッシメントしたぶどうを絞って果汁を取り出しますが、リパッソではこの搾りかすを使用します。

リパッソという醸造方法は、再びアルコールの発酵を起こすという意味合いで、アマローネの搾りかすにアルコール発酵が終わったフレッシュなワインを注ぎ入れて、再び発酵させて造ります。

リパッソで造られたアマローネは「プチ・アマローネ」と呼ばれ、その味わいは、アマローネと同じような華やさと複雑さ、そして豊かな香りが感じられます。アマローネの価格は5,000円〜1万円ですが、リパッソは1,500円~3,500円程度と、アマローネよりもお手頃なので、お手軽にアマローネを味わってみたい人におすすめですよ。

リパッソのアマローネには、「ヴァルポリチェッラ」というワインのラベルにリパッソと表記されますので、ラベルを確認してみてくださいね。

代表的なアマローネの生産者

ぶどうの木からぶどうを摘んでいる様子
iStock.com/Pawzi

手間暇をかけて造られる最高峰ワイン「アマローネ」を味わううえで、代表的なアマローネ生産者を確認しておきましょう。

ジュゼッペ・クインタレッリ

「ジュゼッペ・クインタレッリ」は、1924年に創業した、アマローネを語るうえで欠かせない功績のあるワイナリー。ワイン造りに妥協を許さず、ぶどう栽培から収穫、醸造、ラベル貼りまで手作業でおこなう造り手です。

伝統的な醸造方法にこだわったアマローネは、ぶどうのでき具合に納得がいく年にしか造られず、仕上がりの品質に満足できない場合はリリースされないというこだわりよう。「ジュゼッペ・クインタレッリ」のアマローネは、世界でも高品質と称えられています。

ベルターニ

「ベルターニ」は、1857年にヴェネト州ヴェローナ初のワイナリーとして設立されました。創業以来ぶどうの収穫量よりも品質を優先し、垣根仕立てでぶどうを栽培して、ぶどう栽培から醸造まで妥協しない丁寧な作業をおこなっています。

「ベルターニ」では、アパッシメントは4ヶ月以上、熟成は、樽熟成と瓶熟成を合わせると7年以上にも及ぶ「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ」を生み出しています。伝統的な製法を受け継ぎ時間をかけて丁寧に造られるアマローネは、世界中で高い評価を受けています。

マァジ

1772年ヴェネト州ヴァルポリチェッラの地に初めて設立された老舗ワイナリー「マァジ」。古くからヴェネト州の固有品種を用いたワイン造りをおこない、伝統的な醸造方法「リパッソ」を現代に復活させ、その名を世界に広めました。

「マァジ」では、ヴェネツィア地方の古来品種や醸造技術の研究をおこない、アパッシメント技術のシステム開発に積極的に取り組んでいます。アパッシメントのスペシャリストとして、伝統的なワイン造りを進化させ続ける、アマローネ生産者の草分け的存在です。

アレグリーニ

「アレグリーニ」は、16世紀初頭に設立された家族経営の名門ワイナリー。イタリアの有名なワイン評価誌『ガンベロ・ロッソ』で「ワイナリー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、イタリア最高の生産者として評価されています。

世界最高峰のアマローネ「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ」は、1996年以降ワイン・スペクテーター誌で必ず90点以上を獲得する評価の高さで、アマローネの実力派生産者として認められています。

おすすめのアマローネ5選

1. ヴァルポリチェッラ リパッソ

緑色の瓶にBERTANIと表記された白いいラベルの赤ワイン
¥2,322(税込)〜/ベルターニ

手頃な価格で味わえるリパッソのアマローネ。「ベルターニ」が、リパッソワインのなかでトップに立つことを目指して造った品質の高いワインですよ。チェリーやカシスの甘い香りと酸味、長い余韻が感じられる上品な味わい。アマローネを気軽に楽しみたい人にうってつけです。

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2. コスタセラ アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラシコ

緑色の瓶にMASI COSTASERAと表記された白いラベルの赤ワイン
¥4,719(税込)〜/マァジ

イタリアを代表するワイナリーのひとつ「マァジ」。ヴァルポリチェッラ地区でもっとも優れた土地「コスタセラ」のぶどうで造られるアマローネで、ワイン愛好家や専門家から注目を集めるひと品です。プラムやチェリーをコンポートにしたような甘やかで濃厚な香りと、ハーブ、スパイス、コーヒー、チョコレートなどのさまざまな風味が魅力のアマローネです。

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3. アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラッシコ アレグリーニ

緑色の瓶にAMARONEと表記された黒いラベルの赤ワイン
¥8,800(税込)〜/アレグリーニ

アッレグリーニの最上級キュヴェ「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ」です。ドライチェリーやブルーベリーなど濃厚な果実の香り、スパイスや杉、バニラやチョコレートなどの複雑な風味が印象的で、やわらかなタンニンと酸味のバランスがよいアマローネですよ。グリルした赤身肉や熟成したチーズによく合います。

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4. ベルターニ アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラッシコ

緑色の瓶にぶどうの絵とAMARONEと表記された白いラベルの赤ワイン
¥9,548(税込)〜/ベルターニ

すべて自社畑のぶどうを使用し、ひとつずつ丁寧に手摘みして収穫するベルターニのアマローネです。規定で定められる熟成期間は最低2年以上ですが、ベルターニでは6年間、そして瓶内熟成を1年間おこない、旨味が増した余韻の長い奥深い味わいですよ。

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5. アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラシコ

緑色の瓶にオレンジ色のラベルの赤ワイン
¥37,400(税込)〜/ジュゼッペ クインタレッリ

伝統的な醸造方法にこだわって造られる大変希少なアマローネ。味わいは、干しブドウやチェリージャムを思わせる濃密な香りと、アーモンドや甘いスパイスなどの複雑な風味が口のなかで広がります。特別な日に高品質のアマローネを飲んでみたいなら、ぜひおすすめしたいひとつです。

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アマローネのおすすめの飲み方

グラスワインを飲んでいる女性
iStock.com/yula

アマローネは、しっかりとした力強いフルボディタイプのワイン。おいしく飲むには温度調節が重要なポイントですが、フルボディワインの適温は、16~18℃。常温に近いとその苦味や渋味がやわらいでまろやかに感じられ、アマローネの甘美な風味を堪能できますよ。

そして、アマローネを飲むなら、ワイングラスはボウルの部分が膨らんだ大きい形状がおすすめ。口のすぼまりが緩やかなボルドー型なら、アマローネの複雑で芳醇な風味や香りが引き立ちおいしくいただけるでしょう。

濃厚なアマローネに合わせる料理は、しっかりとした肉料理がおすすめ。タンシチューや牛肉の赤ワイン煮込み、またジビエ料理がよく合います。ヴェネト州の郷土料理には、馬肉を長時間煮込んだシチューがあり、アマローネと最高の組み合わせです。

また、高級ワインであるアマローネは食中に料理と合わせてもおいしいですが、食後酒としてビターチョコレートや熟成したチーズとゆったり楽しんでもいいですね。

唯一無二のワイン「アマローネ」を試してみて

時間も手間もかけて造られる高品質な赤ワイン「アマローネ」。かつては王侯貴族しか味わえなかった希少で高級なワインでした。ご紹介したおすすめアマローネは、どれもこだわりを持った生産者が丁寧に造るものばかり。ビターチョコレートを思わせる独特の苦味と芳醇な香り、ビロードのようななめらかさを持つ濃厚な味をぜひ試してみてくださいね。

※商品価格は、2021年04月03日時点での情報です。

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