2021年05月05日

甘美なアロマにうっとり。白ブドウ品種“リースリング”の特徴と魅力、おすすめの1本

皆様、こんにちは。インポーターの大野みさきです。
今日は私が愛して止まないぶどう品種リースリング、その知られざる魅力をお伝えします。

リースリングはなぜか知名度が低い…?

ワインショップやワインバーで、「リースリングを下さい」と頼んでも、叶わないことが多く、さらに私の場合は産地やタイプを指定するので、「すみません、ないです」と言われ兼ねません。マニアックな自分を除外しても、リースリングは絶大な人気を誇るシャルドネ、また意外によく飲まれているソーヴィニョンブランと比べて、あまり人気がありません。

こんなに美味しいのになんで?!と思うのですが、実際にワインショップやバーでは、「赤ワイン重いの、ボルドー頂戴や」「シャブリ(シャルドネ)あるか?」とお客様がリクエストされているのを耳にします。

日本における「おいしいワイン」の根深い固定観念

■日本で人気のあるワインのイメージ
赤ワイン…ボルドー(地方)/カベルネソーヴィニョン主体のボルドーブレンド
白ワイン…シャブリ(地区)/シャルドネ
スパークリングワイン…シャンパーニュ(地方)/シャンパーニュ、シャンパン、シャンペンと呼び方が様々
ロゼワイン&オレンジワイン…飲まない、飲んだことがない方が多数

赤ワインならボルドーのカベソー、白ワインならシャブリ。また、スパークリングワインなどの泡物は、全てシャンパンだと思われている方も非常に多く、年配の男性やそんなにワインに詳しくない方に多い傾向です。

昔、おじ様に連れられて北新地のクラブに行ったことがあります。ドレスを纏ったお姉さんが接客してくれるお店です。勉強がてらワインリストに目を通したら、白ワインはシャブリの一色でした。その数なんと9種類!さぞかしこだわりがあるに違いないとリストを読み込みましたが、あれ?お世辞でもセンスの光るラインアップではなかったのです。

興味本位でシャブリを揃えている理由を聞いてみたところ、「シャブリがよう出んねん」とママ。シャブリは夜のお店でも白ワイン部門の王座を獲得していましたとさ。

話が脱線しました。
シャブリと違ってリースリングはマイナーでよく知られていない品種です。かたや世界で最も高貴な白ぶどう品種と称され、その品質や長命さではシャルドネに匹敵するほど。だからこそ飲んで頂きたいと思うのです。

白ブドウ品種リースリングの特徴

その特徴は大きく4つあります。

1. 酸が豊かで長期熟成が可能

冷涼な地域(ドイツ、アルザス、オーストリア、ニュージーランドなど)で栽培されるので、美しい酸がのります。フレッシュな早飲みタイプから、長期熟成にも耐えられる、素晴らしいポテンシャルを兼ね備えています。

2. モノテルペンを多く含む

モノテルペンとは繊細な白いお花の香りです。ぺトロール香(石油香)もこの品種の特徴ですが、特にリースリングの上級キュヴェからは、上品で白い薔薇や鈴蘭などの甘美なお花の香りが漂います。

3. 顆粒が密で腐敗や貴腐化を起こしやすい

腐敗は好ましくないですが、貴腐菌は白ぶどうにはウェルカムです。貴腐化したぶどうからは程よく水分が抜け、極上の甘口ワインに仕上がります。甘口ワインの要でもある酸味も十分に含まれています。甘口~辛口まで幅広く多彩なワインが造られます。

4. 糖度が低くても生理的に熟成する(低アルコール傾向)

ぶどうの生理的熟成はワインの香味成分や複雑さに影響を及ぼします。リースリングはクールクライメイト/冷涼地を好むので、ややアルコール度数は低いですが、ハンギングタイム(ぶどうが木に生っている時間)が長いため、ゆっくりと熟成が進み、上品で繊細な酸、またテロワールの特徴がワインにも十分に反映されます。

世界中で生産されるリースリング

リースリングは冷涼地を中心に世界中で栽培されているので、そのシノニム(synonym)/地域名の多さには、群を抜いています。VIVCによれば、その数なんと143個!

自社(365wine)が輸入するスロヴェニアでもリースリングは栽培されています。国内最大の栽培面積を誇っています。しかし、それらはラスキリースリングと呼ばれているもので、ここで言及しているドイツ系リースリングとは異なります。イタリアではイタリアンリースリングやリースリングイタリコ、オーストリアではヴェルシュリースリングと呼ばれています。

リースリングのシノニム

リースリングのシノニムを幾つか挙げておきましょう。

ヴァイサーリースリング / ホワイトリースリング / ホッホハイマー / ヨハニスベルガー / ヨハニスベルクリースリング / モーゼルリースリング / プティットリースリング / ラインガウリースリング / エーデルリースリング / ラインリースリング / リースリングレナーノ / リースリンガー / レノリースリング / プフェルツァー / クリンゲルベルガー

今日のワイン ~リースリング~

今回はドイツのモーゼルで生産されたやや甘口のリースリングヘレンベルクファインヘルプ2018』を頂きました。

■本日のワイン


HOFGUT FALKENSTEIN ヘレンベルクファインヘルプ 2018 税込4,125円(参考小売価格)

ワインショップ ヴァインベルクで見る※ウェブ限定SALE税込3,500円で販売中

樹齢80年の自根ぶどう(フィロキセラの被害を受けていない)で、4.5房/木に絞って収穫されたぶどうを用いたワインです。チョークなどの石灰や石油の香りがします。アフターにじんわり滲み出るエキス分にヨダレが止まらない状態です。

酸味(りんご酸)は豊かなので、そこまで甘味を感じません。「クラシカルだけれど、どこにもあるわけではないこのワインは、ドイツだからこそのワインで、ドイツワインファンが賞賛する1本」と輸入元。

チャラつき感ゼロの真面目で誠実な印象です。やはり、リースリングは奥深いです!

あわせて覚えよう!“アルザスグランクリュ”

最後にリースリングを語るに外せない、アルザスグランクリュのお話をしましょう。

アルザス地方には3つのAOCがあります。AOCとは原産地呼称保護のことで、わかり易く言うと「地酒」です。特定の地域に限定され、栽培や醸造にも法律で縛りがあります。

■フランス アルザス地方のAOC
AOC Alsace/Vin D’Alsace アルザス
 地方のほぼ全域を包括する最大のAOC
AOC Cremant D’Alsace クレマンダルザス 仏で1番飲まれている瓶内二次発酵のクレマン(泡)
AOC Alsace Grands Crus アルザスグランクリュ 51のリューディから成る優れた畑その中でも「Grands Crus/グランクリュ」は、優れた畑と見なされています。

アルザスグランクリュの特徴

AOC Alsace Grands Crusは、フランス語でリューディ(Lieux dits)と呼ばれる小区画/小地区のことで、51ヶ所あります。アルザスワインの年間総生産量は約119万hlですが、グランクリュはその僅か4%に過ぎません。ぶどうは手摘みが原則で、白ワインのみに認められているAOCです。

品種はリースリングを筆頭に、ピノグリゲヴェルツトラミネールミュスカの上質指定4品種を単一使用(一部例外あり)のみで認められています。

AOCアルザスグランクリュは1975年に制定されました。それ以前はリューディで畑の良し悪しを認識していました。その後2011年のワイン法の改正により、下記の51のリューディが独立したAOCとして認められました。

Altenberg de Bergbieten 29.1ha / Altenberg de Bergheim 35.1ha / Altenberg de Wolxheim 31.2ha / Brand 58.0ha / Bruderthal 18.4ha / Eichberg 57.6ha / Engelberg 14.8ha / Florimont 21.0ha / Frankstein 56.2ha / Froehn 14.6ha / Furstentum 30.5ha / Geisberg 8.5ha / Gloeckelberg 23.4ha / Goldert 45.4ha / Hatschbourg 47.4ha / Hengst 75.8ha / Kaefferkopf 71.7ha 2011年認定 / Kanzlerberg 3.2ha / Kessler 28.5ha / Kirchberg de Barr 40.6ha / Kirchberg de Ribeauvillé 11.4ha / Kitterlé 25.8ha / Mambourg 61.9ha / Mandelberg 22.0ha / Marckrain 53.4ha / Muenchberg 17.7ha / Osterberg 24.6ha / Pfersigberg 74.6ha / Pfingstberg 28.2ha / Rangen22.1ha / Rosacker 1.38ha / Saering 26.8ha / Schlossberg 80.3ha / Schoenenbourg 53.4ha / Sommerberg 28.4ha / Sonnenglanz 32.8ha / Spiegel 18.3ha / Sporen 23.7ha / Steinert 38.9ha / Vorbourg 73.6ha / Wineck Schlossberg 27.4ha / Zinnkoepflé 71.0ha / Kastelberg 5.8ha / Moenchberg 11.8ha / Ollwiller 35.9ha / Praelatenberg 18.7ha / Steingrubler 23.0ha / Steinklotz 40.6ha / Wiebelsberg 12.5ha / Winzenberg 19.2ha / Zotzenberg 36.5ha

かねてからアルザスグランクリュは、生産者の間で賛否両論が繰り広げられて来ました。消費者も意見が分かれるところです。

「地方の優良畑を顕揚できて素晴らしい!」という賛成派とは裏腹に、「境界線が厳密ではないので、広いグランクリュでは80haの面積があり、テロワールの条件にばらつきが生じる」「グランクリュ畑のぶどうを使っても、一部を除いて単一品種で使用しないとグランクリュを名乗れない」などの反対派の意見もあります。

あえてグランクリュを名乗らない生産者も

トリンバック社のプレステージである「クロサンチューヌ」は、グランクリュのRosacker(1.38ha)で栽培されていますが、グランクリュ表記もAOC Rosacker表記もありません。これは生産者がRosackerの畑の一部のポテンシャルに疑問を感じているからです。

事実2013年にトリンバック社を訪問し、06年と07年の比較試飲をした際に、この話を投げかけたところ、「グランクリュなんて関係ないわ、私達はその前からずっとワイン造りを営んで来たのだから」とマダム。確かにドメーヌの方が何世代にも渡りその土地に根を下ろし、精通しているのですから、彼らからしたらグランクリュなどお構いなしです。

賛同しないトリンバック社らは、クロclosという単語の後に、自らが所有しているグランクリュ畑より、さらに限定された特別区画名を付けて対抗しています。

この賛否を踏まえて、昨今では協同組合の政治的な働き掛けにより、境界線の策定を甘くすることで落ち着いたようです。

美味しいワイン探しの心得

冒頭にも書きましたが、世間はネームバリューやハイブランドを好む傾向があります。産地がブランド化され地位が確立すると、さほど努力しなくてもワインに高値が付くため、あぐらをかく者も少なからずとも出てきます。銘醸地でさえもそんな怠慢な生産者が後を絶ちません。

フランス滞在中には、アルザスグランクリュだけの試飲会に恵まれたこともあり、Zinnkoepfléより上の42リューディを経験しました。残念なことにその名に値しない造り手も沢山いたように記憶しています。

グランクリュだから、シャブリやボルドー赤だから良いということはありません。ネームバリューには安心感や信頼性がありますが、ブランドものでなくても、誰も知らない産地や品種であっても、美味しいワインは美味しいのです。

装飾に惑わされず、皆様には自分が心で「良い」と感じたワインを楽しんで貰いたいと願います。
それでは皆様、ごきげんよう!

 


365wine 大野みさき

スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。

【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/

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