2021年05月26日

“ポケットマネーで買えるスーパータスカン”を飲んで「ブランドワイン」と「カジュアルワイン」に思いを馳せる

キャッチーなワインをゲットしました。花の都フィレンツェで有名なイタリア・トスカーナ州出身の、”ポケットマネーで買えるスーパータスカン”です。その名も「モンテ・アンティコ(2015)」。

スーパータスカンといえば「サッシカイア」をはじめとする高級ワインのイメージがあります。しかしモンテアンティコのお値段は¥1,500円ちょっと。数万はくだらない高級ラインの中に3コインで買えるワインがあったら、気にならないわけがない。

このワインを一言でいうと、スーパータスカンの精神を体現し続ける自由のワイン。今回は「イタリアワイン法」と「スーパータスカン」、この二つのキーワードについて理解を深めつつ、モンテ・アンティコの魅力を紐解いてみます。

イタリアワイン法と醸造家の不満

スーパータスカンの誕生は、イタリアのワイン法の歴史と密接に関わっています。

イタリアはもともと、”ワイン保護のリーディングカントリー”でした。さかのぼること300年、トスカーナの君主コジモ3世が自領土のワインブランドを守るため、世界初となるワインの原産地保護のお触れを出しました。さすがは世界の名だたるハイブランドを輩出した国、ワインのブランド化にもいち早く取り組んだというわけですね。

しかしその後の法整備には遅れをとってしまいます。当時の法律は、内容や運用にもツッコミどころ満載。多くの情熱的なワイン醸造家が不満を募らせる結果となりました。

ツッコミどころその1

ワイン法のコンセプトで最も重視されたのは”イタリアらしさ”です。特に品種について、上級ブランドのD.O.C.G.やD.O.Cに認定されるにはイタリア土着品種を使う必要がありました。カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどの国際品種を使うと、最下級のVdT(テーブルワイン)に格下げされたのです。品種の制限なく美味しいワインを造りたいと考える醸造家の不満の種になりました。

ツッコミどころその2

D.O.Cから最上位のD.O.C.G.へ昇格したものの中には「品質」に対する評価ではなく、「政治的」事情で昇格が認められたものもありました。これに対して情熱的にワイン造りをしている醸造家たちが激怒。「D.O.C.G認定なんていらない! 最下級のVdTで構うもんか!」と割り切り、自由にワインを造り始めたのです。

情熱と自由の象徴 “スーパータスカン”誕生

ワイン法に抗う流れで生まれた自由なワイン造りの代表格こそがスーパータスカン。スーパータスカンとは、イタリア中部のトスカーナ州で生まれたモダンな造りのイタリアワインのことです。

世界で人気のワイン番組「The Wine Show」では、スーパータスカンを”反逆のワイン”と称し、「地主がその土地のワインを気に入らず、カベルネを植えたらお気に入りができたのよ」と紹介していました。


ワイン番組「The Wine Show」(画像引用元:https://dramanavi.net/db/drama/season/461/1/

その説明通り、スーパータスカンの造り手たちはワイン法で定められた基準をあえて無視し、土着品種だけでなくカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどの国際品種を用いて、自由と美味しさをとことん追求したのです。

スーパータスカンの火付け役となったのは、かの有名なサッシカイア。トスカーナのボルゲリ地区に位置する名門ワイナリーです。

サッシカイアは、ボルドーワイン・フリークの侯爵が名門ワイナリー、シャトー・ラフィット・ロートシルトから苗木を譲り受け、自分の土地(ボルゲリ地区)に植えたことから始まります。当時ボルゲリでは赤ワインや国際品種のワインは認められていませんでした。しかし侯爵はそんなことお構いなし! 自分の好きなワインを造ることだけを考えていました。

ワイン造りは侯爵の息子にも引き継がれ、最新鋭の技術を駆使してワインの美味しさを追究しました。例えば、当時イタリアではクロアチアのスラヴォニア・オーク樽が主流でしたが、彼はフレンチオーク樽を使用。今となってはスタンダードですが、当時の人たちは大きなショックを受けたといいます。

少しずつ品質が向上したサッシカイアは、ついにボルドー格付け1級シャトーをおさえ「ベスト・カベルネ」に輝きます。ボルゲリはモダンスタイル・ワイン造りのメッカになったのです。その後、国際品種を使った品質重視のワイン造りはイタリア全土に波及。イタリアワインの発展につながりました。

制約はクリエイティブの母」といいますが、イタリアではワイン法が制約となってクリエイティブなワイン造りが推し進められたのです。

白熱するスーパータスカン人気に対する “ポケットマネー”というアンチテーゼ

その質の高さから世界的に評価されるようになったサッシカイア。イタリア政府はサッシカイアの人気と功績を認め、1994年に唯一の単独ワイナリーD.O.C.として「ボルゲリ・サッシカイア」を認定しました。スーパータスカン人気は年々高まり、すっかりブランド化。有名ワインは数万円というなかなかの高級価格で販売されています。

しかし前述した通り、スーパータスカンとはもともと「情熱と自由の象徴」でした。法の枠内に収まったり、ブランドイメージでがんじがらめになることは本意ではないのでは……既成概念に反逆して、新しい自由なワインを造ることこそスーパータスカンのポリシーなのでは……という気がしたりしなかったり。

冒頭で紹介したモンテ・アンティコの造り手、エプソン氏は「多くの人に気軽に美味しいスーパータスカンを楽しんで欲しい」という思いを大切にしているそうです。彼は近年のブランド化するスーパータスカンに対して、「ポケットマネーで買える」というアンチテーゼを唱えているのかもしれません。

モンテ・アンティコは、ワイン法のカテゴリーでは「VdT」(テーブルワイン)。日常消費用の安ワインクラスです。しかし品質は決して低くなく「¥1,500円のテーブルワインなのにこのクオリティ、すごくない!?」と感嘆のため息が漏れる味わい。ブランドよりも中身が大事、それを体現するワインだと感じます。

【テイスティングノート】
酸味と甘味のバランスがよく、とてもフレッシュ。まるで柘榴の果実を食べているようです。駄菓子の「さくらんぼ飴」のような、素朴でキュートな印象のワインです。一方で、フレンチオーク樽由来の複雑な風味もしっかり溶け込んでいます。かの有名なロバート・パーカー氏も「ケース単位で買うべき!」と絶賛したのだとか。トマトソースのピザや、牛肉を使ったミートソースとの相性がバッチリです。

「ブランド=悪」ではない

しかし、サッシカイアをはじめとする高級スーパータスカンの功績と品質の高さが揺らぐことはありません。彼らが作り上げたスーパータスカンというブランドイメージがあるからこそ、「ポケットマネーで買えるスーパータスカン」というコピーがキャッチーに響くのだと思います。実はエプソン氏も、高級ラインのワインも造っています。

伝統あるブランドは素晴らしく、歴史や造り手の技術、功績に対して高い値がつくことは妥当です。じゃないと夢がないし、発展もない。でも高級なものには手が出しにくいのも事実。「いいワインは高くて当然」というイメージが定着してしまうのもまた、ワインの発展を妨げてしまいます。モンテ・アンティコのような、 “品質にこだわりつつもポケットマネーで買えるワイン”も必要です。

高いブランドワインと安い高品質ワインがともに共存し、TPOに合わせて選べる状況が理想ではないでしょうか。廉価なスーパータスカンでその素晴らしい精神を堪能し、特別なタイミングで高級なスーパータスカンを賞味してその最高峰を体感する……そんな楽しみ方が乙だと思うのです。

今回調べてみて、廉価で買えるスーパータスカンは他にもいくつかあることに気づきました。安いからとみくびってはいけません。造り手の情熱が詰まった1本は、スーパータスカンの名に相応しく奥深い味わいのハーモニーを奏でてくれるはずです。皆さんも廉価なスーパータスカンを気軽に楽しみつつ、高級ラインに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

ワインのオンライン販売情報

モンテ・アンティコ 2015

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※オンラインで販売されている商品の価格は送料が含まれている分、少し高めに設定されているケースがあります。

 


吉田すだち ワインを愛するイラストレーター

都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
【HP】https://yoshidasudachi.com/
【instagram】https://www.instagram.com/yoshidasudachi

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