
2020年10月24日
皆様こんにちは、インポーターの大野みさきです。
暑くも寒くもない過ごしやすい日々が続いていますね。窓辺でそよ風に吹かれながら白ワインを頂くと、それはそれは心地好く、春から夏へのあわいを感じます。
さて、今日は金銀銅の表彰台を争うぐらいの人気を誇る、白ワイン品種についてお伝えします。それはズバリ、「ソーヴィニョンブラン」です。
昨年に開催された、【家飲みワインコンテスト】では、「ソーヴィニョンブランを頂きました~」のSNS投稿が多かったことを記憶しています。人気不動の『シャルドネ』、そして我が国が自慢とする『世界の甲州』と、肩を並べるほどの登場回数。事実、スペインのアイレンや各国のシャルドネに次ぐ、広大な栽培面積を有する品種です。ニーズも高いのでこの20年、生産量もずっと右肩上がりです。
ワイン愛好家にとっては、もはや定番品種なのではないでしょうか。ハーブやグレープフルーツが香るフレッシュで伸びやかな酸が、典型的なソーヴィニョンブランの特徴ですが、それだけではありません。ナチュール生産者が手掛ける長期熟成タイプのしっかりとしたソーヴィニョンブランもあります。今日は知られざるソーヴィニョンブランを紐解いていきましょう。
まず、初心者がソーヴィニョンと聞いて混同してしまうのが、黒ぶどうの「カベルネソーヴィニョン」です。下記の家系図をご覧下さい。ソーヴィニョンブランには、ピノノワールやサヴァニャンの遺伝子も混ざっています。さらにソーヴィニョンブランとカベルネフランの交配では、言わずもがな両親の名前を取って付けられた『カベルネソーヴィニョン』が誕生しています。キングオブ赤ワインの片親がソーヴィニョンブランです。
■原産地:ボルドーとされてきたが、最近の研究ではロワールの説が有力
■主な生産地:フランスロワール、ボルドー、ニュージーランド、南アフリカ、カリフルニア、オーストリア、オーストラリア、チリ
■シノニム:ブランフュメ、ソーヴィニョンジョーヌ(フランス)、フュメブラン(アメリカ)、ムスカートシルバーナー(ドイツ、オーストリア)
■栽培:樹勢は強い、果房および果粒は小さい、芽吹きは遅いが早熟
■テイストの特徴:
・冷涼地 緑がかったイエロー、レモンイエロー、外観に緑色のニュアンスが出る。グリーンさと柑橘香が特徴。ハーブ香、葱、あさつき、根セロリ、シシトウ、ピーマン(メトキシピラジン)、ライムなどの柑橘香、こぶ蜜柑の葉、カシスの新芽、ミネラル香。フレッシュで酸(りんご酸)が豊かに広がる。
・温暖地 黄金の色素量が増し、粘性もUPする。冷涼地の香りプラス、トロピカルさが満載で、産地によっては樽を使っている場合、木や樹皮の香りがする。酸はしかりとあり、グレープフルーツのような苦みと厚みを伴う味わい。樽由来の味わいを感じる場合は余韻も長くなる。
気候が暑いとアロマが上手くのらないので、比較的、涼しいエリアで栽培される品種です。フランスロワール、ボルドー、ニュージーランド、南アフリカ、カリフルニア、オーストリア、オーストラリア、チリなどが代表的な産地として挙げられます。
それぞれの産地を見ていきましょう。
ソーヴィニョンブランと言えば、一般的には爽やかなすっきりタイプのワインになることが多いです。その一方で、ボルドー(グラーヴ、ペサックレオニャン)では、セミヨンとブレンドして、酸とアロマを与える補助品種として用いられ、ややボリュームのあるワインに仕上がります。
(オーストラリアでは単一品種で造られることがありますが、マーガレットリバーではボルドーと同様にセミヨンとブレンドされることが多いです)
また、ボルドーでは甘口の貴腐ワインも造られます。
ロワール(サンセールやプイィフュメ)では白亜質土壌の影響を受けて、複雑で長期熟成タイプのワインが造られます。
ニュージーランドではハーブやパッションフルーツなどのトロピカルな芳香性が強い、世界屈指のソーヴィニョンブランが生まれます。
これら代表的な産地以外にも、あまり知られていませんが、南オーストリアの果実の厚みのある長期熟成タイプのソーヴィニョンブランやスロヴェニアのふくよかなオレンジワインもおすすめです。
これらの産地のソーヴィニョンブランは、私たちがイメージする典型的なソーヴィニョンブランとは全く異なります。黄桃や黄色い花の香りが広がるフルボディタイプで、ずっしりと重心の低いワインです。少しマイナーではありますが、初めての方にはまずは知ってもらい、熟練のワインラバーにも一歩踏み込んでもらいたいので、最後におすすめ5選をご紹介して終わりたいと思います。
SUMANサンドロップ2017 参考小売価格10,000円
陶器ボトルがユニークなのは、スロヴェニアのラドヴァンシュマン。ソーヴィニョンブラン以外もブレンドされているが、貴腐がかったぶどうを用いてオレンジワインを手掛ける。酢酸エチル(パイナップルや除光液のような華やかな香り)のチャーミングな香りでグラスがすすむ。
左から)MAROFブレグソーヴィニョン2017 参考小売価格3,980円
MAROFボドンツイソーヴィニョン2017 参考小売価格5,980円
お次はスロヴェニア北東部、ハンガリーとオーストリア国境に位置するマロフの白ワイン2本。同じ区画のぶどうだが、ボドンツイの方が更に選果基準が厳しい。こってりと厚みのあるボディで果実味が満載。長期熟成にも耐えられる偉大なポテンシャルを兼ね備える。
MAROFブレグソーヴィニョン2017
365wineで見る
MAROFボドンツイソーヴィニョン2017
365wineで見る
ANDREAS TSCHEPPEブラワーリベル2016(青トンボ) 参考小売価格7,000円
南オーストリアのシュタイヤ-マルク、アンドレアスツエッペ。ふくよかでとろりしたテクスチャーは何とも言えない旨味と丸みがある。エネルギーが口の中で爆発する。本当に良いワインなので、時間をかけてゆっくり頂きたい。
SEPP MUSTERフォムオポーク2015 参考小売価格3,500円
同じくオーストリアのシュタイアーマルクのセップムスター。オーストリア自然派の造り手の真骨頂!ミネラル感と温かみの調和が絶妙。ただひたすらに旨いの一言!
ビオディナミ率が高いのとお値段もそこそこしますが、そこには今まで体験したことのない、ソーヴィニョンブランの世界が広がっています。青トンボを筆頭に絶大な人気を誇るので売切れワインも続出です。見つけたら思い切って入手して、記念日まで大切に育てるのも良いのではないでしょうか。
ソーヴィニョンブランの美味しい季節の到来です。楽しんで下さい。それでは皆様、ごきげんよう!
365wine 大野みさき
スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/