2021年06月04日

意外と知らない?ワインとナッツの美味しい関係

チーズやドライフルーツ、肉料理、魚料理……ワインに合う食べ物はいろいろありますが、「ナッツ」もそのうちの一つです。ナッツそのものをつまみながらワインを飲むこともあるし、料理の隠し味や飾りとして添えられることもあります。ただ、「ナッツとワインの相性」を意識しながらペアリングする機会って、あまりないのではないでしょうか。

そこで今回は「ナッツとワインの相性」にフォーカスして、マリアージュを検証してみました。

ナッツの基本と合わせ方のコツ

そもそも「ナッツ」とは、硬い皮や殻につつまれた食用の木の実のこと。ナッツはしばしば、白ワインや樽熟成された赤ワインの香りを表現する際に登場します。マリアージュの大原則=「共通要素を持つもの同士は合わせやすい」にしたがって考えると、ナッツとワインの相性の良さは必然。ワインのおつまみにナッツが出てくるのには、ちゃんと理由があるのですね。

では「ナッツの香りがするワイン」とはどのようなワインでしょうか。一言でいうと「まろやかさや複雑味が出るような製法で造られるワイン」です。具体的には、次の3つがあげられます。

1、樽熟成したワイン

ブドウ果汁を木樽で発酵・熟成させると、いわゆる「樽香」のするワインになります。樽香のするワインには熟成感や複雑味が感じられ、さまざまな食材との共通点が多く生まれます。特にナッツは木の実なので、木樽由来の香りにとても馴染みやすいといえます。

2、マロラクティック発酵したワイン

マロラクティック発酵とは、ワインに含まれる「リンゴ酸」が乳酸菌によって「乳酸」と「炭酸ガス」に分解される発酵のこと。酸味が柔らかくなるとともに、副産物として様々な化合物が生成され、香りや味わいに複雑味が増します

3、シュール・リー製法などでオリと長時間接したワイン

フランス語の「シュール・リー」を日本語に訳すと「オリの上」という意味。発酵後のワインをオリ(酵母の残骸など)の上で一定期間おいておく製法のことです。オリからアミノ酸が溶け出て、ワインに深みが出ます。オリを取り除かずに瓶詰したワインにも、シュール・リー製法と同じ効果が生まれます。

このようなワインをチョイスすれば、ナッツとのマリアージュが成功しやすいわけです。

検証!ナッツとワインのペアリング

ワインとナッツの組合せには「特に相性のいい組合せ」があるといわれています。ワインの香りの表現によく使われるナッツをピックアップしつつ、どんなワインにどんなナッツが合うのか、実際にペアリングして検証してみました。ナッツごとに一般的なウンチクをまとめつつ、今回検証に使ったワインとの相性をランキング形式でお伝えします。おつまみ選びの参考にしてみてください。

検証に使ったワイン

1、ジャムセラーズ バター・シャルドネ

アメリカ、カリフォルニアの樽熟シャルドネ。ナッツの香りがするワインの代表格といえば樽熟シャルドネ!少しリッチで濃厚な白ワインです。
※検証にぴったりな少量サイズの缶タイプをチョイスしましたが、ボトルタイプも販売されています。

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2、ドメーヌ・アザン ヴィオニエ

南フランスの白ワイン、ヴィオニエ。「南仏のヴィオニエはローストしたヘーゼルナッツの香りがする」という前情報をもとにチョイス。お財布に優しいカジュアルラインのワインです。

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3、フォルス・ベイ シラー

南アフリカのシラー100%、樽熟赤ワイン。ナッツに赤ワインをあわせるなら、ぜったい樽熟成したものを……! ほどよい渋みとスパイシーな風味がくせになる。こちらもポケットマネーで買えるリーズナブルな一本です。
※現在オンラインでは販売されていないようです。ショップで見つけたらぜひ手に取ってみてくださいね!

検証に使ったナッツ

(1)ミックスナッツ(アーモンド、カシューナッツ、くるみ、マカダミア)
(2)ヘーゼルナッツ
(3)ピスタチオ

これらのナッツとワインとの相性を探っていきます。ちなみに「ピーナッツ」はナッツではなく、豆に分類されます。名前に惑わされてはいけません。美味しいですけどね。

ワインとナッツの相性ベスト3

第1位:ヘーゼルナッツ

ヘーゼルナッツは「セイヨウハシバミ」の果実です。日本ではチョコレートでコーティングされたお菓子のイメージが強いかも……。シャルドネの香りの表現として登場することが多いナッツです。

ヘーゼルナッツの香りは「ピロール」という化合物によるもの。ピロールは白ワイン用のブドウに元々含まれています。また、酸味のキリッとした寒冷地方のブドウで造るワインよりも、酸味が穏やかで厚みのある温暖地方のぶどうで造るワインの方が、ピロールを多く含んでいるようです。前述のとおり、ローストしたヘーゼルナッツはヴィオニエの香りに近づくのだそう。

実際に合わせてみると、ヴィオニエとの相性がバッチリ! 香りが寄り添っている感じがして、とても美味しく合わせられます。シャルドネとの相性もまずまず。ヘーゼルナッツは白ワインに合わせやすいナッツだといえそうです。無塩タイプものがおすすめです。

第2位:カシューナッツ

カシューナッツは「ウルシ科カシューナットノキ属」の種です。収穫前のカシューナッツは種が果実の外側に出ており、とても不思議な見た目……。ポクポクした歯ごたえと、バターのように濃厚な味わいが特徴的です。

樽熟成やマロラクティック発酵をほどこしたコクありの白ワインの香りとして使われるカシューナッツ。しっかりとした骨太タイプのワインであれば、どんなワインにも合わせられる万能ナッツといわれています。

検証すると、特に樽熟シラーとの相性がバッチリ! 少しクセのある燻したような香りが、シラーのスパイシーな香りをよく引き立ててくれます。ヴィオニエの後味に感じる生姜のようなピリッとした香りにもよく合います。カシューナッツはスパイシーな香りのワインと相性がいいようです。

第3位:ローストアーモンド

アーモンドは「バラ科サクラ属」で、実は桃の仲間。種の中身の部分をローストして食べるのが一般的です。生のアーモンドも甘くて美味しいらしいのですが、生食するときは水に12時間ほど浸しておく必要があるそう……。

アーモンドの香りは「ベンズアルデヒド」という化合物によるものです。酸化熟成したワインやオリと長時間接触したワインに多く含まれているそうです。ワインは熟成時間が長いほどロースト香が出てくるため、ローストアーモンドには長期間寝かせたワインの方が相性が良いといわれます。

ペアリングの結果、樽熟シラーとの相性がよく、感動的にマッチしていました。香りはもちろん、甘味やタンニンにも共通点があって、合わせやすい組み合わせと言えます。また、樽熟・濃厚シャルドネも悪くない組み合わせです。アメリカンオークの強めの香りがアーモンドのロースト香によく合います。

惜しくもランク外になったナッツたち

今回用意したワインとはベストマッチとならなかったのは、ピスタチオくるみマカダミアの3つ。どれも「悪くはないけど、あえて合わせなくてもいいかな」と感じました。

ピスタチオはどちらかというと白ワインに合わせやすく、くるみとマカダミアは赤ワインに合わせやすい印象です。ピスタチオにはよりキリッとした辛口タイプの白ワイン(リースリングなど)、くるみやマカダミアにはフレッシュで甘い香りのする赤ワイン(ピノノワールやマスカット・ベーリーAなど)が良いかもしれません。

フレーバーナッツで変化を楽しむ

プレーンなナッツに少し物足りなさを感じる人には「フレーバーナッツ」という楽しみ方もあります。チーズフレーバーやハニーフレーバー、チリフレーバーなど……スーパーで手に入る調味料を使い、ナッツをお好みに味付けして楽しむやり方です。ウェブで検索するとたくさんレシピが出てきます。

「自分で作るの、めんどくさいなあ」という私のような横着者のために「無限ナッツ」という商品も出ています。見つけた瞬間、早速5種類のフレーバーをゲットして試してみました。

無限ナッツ 公式サイト

個人的な感想ですが、すべて赤ワインにとってもよく合うと感じました。基本的にスパイシーな風味が足されているので、樽熟シラーと相性がいいのでしょう。今回用意した白ワインとの相性は、正直なところ少し微妙……。フレーバーがついていないプレーンなナッツの方がよりワインの良さを楽しめそうです。

一方で「白の辛口スパークリングにはとても合いそうだな」なんて妄想が膨らみました。フレーバー付きのナッツは、濃厚で力強い赤ワインかキリッと辛口の白、スッキリ系の泡……そんなワインに合わせて楽しむのが良さそうです。

最後に

ナッツとワインを合わせる際には、ワインの造られ方を意識するとより完璧なマリアージュが完成します。これもワインの楽しみ方のひとつです。この記事でご紹介したランキングは、あくまで今回用意したワインとの相性。ワインによっても変わってくるものなので、興味のある方は色々な組み合わせを試してみてください。もし新しい発見があったら、ぜひ教えてくださいね!

 


吉田すだち ワインを愛するイラストレーター

都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
【HP】https://yoshidasudachi.com/
【instagram】https://www.instagram.com/yoshidasudachi

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