
2020年10月24日
ハンガリーの南、ギリシャの北に位置する東欧の国、セルビア共和国。サッカー強豪国で、日本でも人気の高いストイコビッチ氏がナショナルチームの監督をつとめていることでも有名です。
そんなセルビア、実はワイン造りも盛んに行われています。セルビアワインって、あまり馴染みがないですよね。正直にいうと、わたしもつい最近知りました。ある日お店を物色していて偶然出会ったセルビアワインがぴたっとツボにはまり、それ以来存在感が急激に高まったのです。
どんなワインかというと、パスタ界の白い王様「カルボナーラ」になんとも良く合うやつでして……! カルボナーラはカルボナーラでも普通のカルボナーラではなく、少しこだわったレシピで作るのがポイントです。そうすれば、自宅で至高のペアリングを堪能できてしまうのです。
今回はセルビアワインの基本を簡単におさえつつ、わたしのツボにはまったセルビアワインと、合わせて欲しいこだわりカルボナーラレシピをご紹介します。
セルビアは夏冬の寒暖差がはげしい大陸性気候。土壌もよく肥えており、ブドウ栽培にとても適した環境です。ワインは国民の “ソウルドリンク”となっています。
ワイン醸造の歴史は、今から約2000年前までさかのぼります。当時、ヨーロッパを支配していたローマ帝国は、セルビア周辺を流れるドナウ川流域を守りの要としていました。そのため、駐在兵に支給するためのワイン造りが盛んに行われたと言われています。
その後もワイン造りは脈々と受け継がれ発展しましたが、1400年代から400年以上の間オスマン帝国の支配下でアルコールが禁止され(オスマン帝国はイスラム教の国でしたからね)、一時ワイン造りは低迷。さらにフィロキセラ(ヨーロッパで大流行したブドウの樹を枯らしてしまう寄生虫)の被害も拡大……悲しいことに、セルビアの多くの個性的な土着品種は絶滅の危機に瀕してしまいました。
1800年代末、「セルビア公国」としてオスマン帝国から独立したのをきっかけに、オーストリアやハンガリーから近代的な技術を輸入してワイン産業が復興。セルビアワインは他国からも注目され、1912年に沈没したタイタニック号ではセルビアの「ベルメット」と呼ばれるアイスワインが採用されていたのだとか。土着品種の復興にも注目が集まりました。
そんなイケイケ期も束の間。第二次世界大戦後、国営の大規模農園でブドウの大量生産が推し進められ、「質よりも量」派が席巻。再び、多くの土着品種が姿を消してしまいました。その後も歴史の荒波にもまれ、ワイン造りは低迷……ワインの世界ではどうしてもこうも大量生産で質を落とすケースが多発するのでしょう(イタリアのキャンティなど)。
2000年代に入り再び反省したセルビアワイン業界は、家族経営の小規模ワイナリーによる品質重視のワイン造りを推し進めました。そのため、市場に出回っているセルビアワインには家族の苗字が名付けられているケースが多いのだとか。そしてまたもや土着品種の保護を叫ぶ声が高まり、今では生き残った品種たちが大切に育まれているそうです。
セルビアワインの輸出量は、生産量のわずか5%程度。多くが東ヨーロッパで消費され、日本にはまだあまり入ってきていません。レアワインですが、2018年からスーパー「コストコ」で、1,000円以下で買えるセルビアワインが販売され一部で話題になりました。少しずつ、わたしたちも手に取りやすい存在になりつつあります。
わたしが出会ったセルビアワインは「タミヤニカ」というセルビアの土着品種をつかった白ワインです。
「B」の文字がスタイリッシュでクールですよね! タミヤニカは南フランス原産のマスカットの変種です。熟すと非常に強いフルーティな香りを放ち、収穫期の畑には芳しい香りが充ちるのだそうです。サクラアワード(日本の女性が審査する国際的なワインコンペティション)で、2018年、2019年と2年連続金賞に輝いた品種でもあります。
「ブレストヴァチキ」はワイナリーの名前でもあります。前述した、小規模家族経営ワイナリーのひとつです。こちらのワインはタミヤニカ100%で造られており、一本一本手作業で丁寧にこしらえているそうです。
フルーティで華やかな香り。トロンと濃い舌触りで、旨味が炸裂! 滋味深く、飲みごたえのある白ワインです。酸味はそんなに強くないけど、甘味や苦味(ミネラル感)が強くて、濃厚さを味わえます。酵母の香りが強く出ており、強いミネラル感とあわさって、チーズのようなテイストに。中でもイタリアチーズの王様ことパルミジャーノレッジャーノの味わいに近いイメージです。
そんな味わいのワインなので、パルミジャーノレッジャーノを使った料理に合わせるのがおすすめです。パルミジャーノレッジャーノといえば、やっぱりカルボナーラでしょう! カルボナーラは牛乳や生クリームを使うレシピが主流ですが、パルミジャーノレッジャーノの風味をめいっぱい楽しめるとっておきのレシピがあるんです。
材料(二人分)
・パスタ 200グラム
・卵黄 二個分
・ベーコン 80グラム
・パルミジャーノレッジャーノ 60グラム
・白ワイン(タミヤニカ「ブレストヴァチキ」) 100ml
・ニンニク 1かけ
・オリーブオイル 大さじ2杯
・黒胡椒 適量
※「パルメザン」はパルミジャーノレッジャーノとは異なるので注意! パルメザンはパルミジャーノレッジャーの風の味ではありますが少し香りが弱いので、できればパルミジャーノレッジャーノを用意しましょう。
(1)ボールにパルミジャーノレッジャーノをすりおろしして入れ、卵黄、黒胡椒を入れてよく混ぜる。ニンニクを包丁のはらでつぶす。ベーコンを食べやすい大きさに切る。
(2)フライパンにオリーブオイルを入れ、ニンニクを熱してオイルに香りをつける。ニンニクは焦げる前に取り出す。
(3)パスタを茹で始める。塩加減は、水1リットルに対して10グラム。
(4)2と同じフライパンにベーコンを入れて焼き色をつける(油はね注意!)。ちょうどいい焼き色が着いたら、一度火をとめて油を落ち着かせてから、白ワインを入れ、再び火をつけてアルコールをとばす。
(5)3の茹で汁をフライパンに大さじ3杯入れて味を整える。一度火を消して温度をさげておく。
(6)3のパスタをフライパンに移してソースと絡める(茹で汁はまだ捨てないで!)。少し温度を落ち着かせてから、1のボールの中身を入れてよく混ぜる。卵黄は80度以上で固まってブツブツした食感になってしまうので、できるだけフライパンの中身を70度以下まで下げてから入れるのがベスト。
(7)再び火を付ける(火加減は弱火!)。3の茹で汁をおたま1杯分入れ、ソースを乳化させる(油分と水分を溶け合わせてとろみをつける)。
(8)器に盛り付けて、黒胡椒をふって出来上がり!
カルボナーラは「炭焼き職人 (Carbonara)」が語源と言われています。 「まるで炭焼き職人が炭の粉を振りまきながら作ったようなパスタ」という意味なのだそうです(諸説あり)。この説にのっとるならば、カルボナーラに黒胡椒はかかせない! 黒胡椒はおしまずふんだんにきかせましょう。パルミジャーノレッジャーノの濃厚な風味と黒胡椒のスパイシーさがくせになりますよ。ワインのミネラリーかつクリーミーな味わいともマッチ! 料理にも同じワインを使うのがポイントです。
このレシピは以前料理教室で「ワインに合わせるなら牛乳や生クリームを使わないカルボナーラじゃなきゃ!」と先生に言われ、教わったものに自分流のアレンジをきかせた “マイ・ベスト・カルボナーラ・レシピ”です。白ワインととても相性がいいパスタです。特にパルミジャーノレッジャーノの風味を連想させるタミヤニカ「ブレストヴァチキ」にすっっっっごく合うこのカルボナーラ、ぜひ試してみてください!
ミネラリーで風味豊かなワインなので、もちろんお魚料理にもあいます。わたしの一押しはカツオです。お刺身だと生臭さが気になるので、すこし炙って生姜醤油で食べるのがおすすめ。ワインととってもあいますよ。
吉田すだち ワインを愛するイラストレーター
都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
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