2021年09月01日

常識破り! バリ島生まれの熱帯ワインを飲んでみた

良いブドウを実らせるには暑すぎても寒すぎてもダメ。ブドウ栽培に最適な年間平均気温は10度〜20度程度です。理想的な降雨量は年間500ミリ〜800ミリ程度で、降りすぎず降らなさすぎない絶妙な塩梅が求められます。さらに十分な日照時間や昼夜の寒暖差など、様々な条件が整ってようやく高品質なブドウ、美味しいワインへとつながるのです。ブドウ農家やワイナリーは条件がそろう限られたエリア、「北半球の北緯30度〜50度の間」と「南半球の南緯20度〜40度の間」に集中し、これらのエリアは “ワインベルト” と呼ばれます。

……というのが過去の常識でした。最近では地球温暖化の影響でワインベルトの範囲が少しずつ広がっています。これまでワイン銘醸地と呼ばれていた場所の気温が上がりブドウ栽培が困難になったり、逆に不可能といわれていた極寒の地で良いブドウが育つようになったり。年々、ワインの世界の常識が塗り替えられています。

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。先日、私の中の “ワインの常識” がアップデートされる刺激的な1本に出会いました。まさに常識破り! エキゾチックな魅力たっぷりの、インドネシア、バリ島のワインです。

地球温暖化により寒い地方へとワイン造りが広がっている話はよく耳にしますが、それとは真逆の熱帯の国でワイン造りが行われているなんて、驚きませんか?

ブラック・ベルベット(サバベイ・ワイナリー)

サバベイ(Sababay)ワイナリーはバリ島南東部、「Saba」という入江近くにあるワイナリーです。

バリ島といえば南国リゾート地。初めてこのワインを目にしたとき、「赤道に近い場所でワイン造りをしているって、本当かな?」と懐疑的でした。

よくあるのは、海外から濃縮ブドウ果汁を輸入して発酵させるスタイル。ひと昔前の日本でも主流だった製法です。東南アジアには主にオーストラリア産の果汁を使ってワイン造りを行うワイナリーが数多くあるといいます。それも確かに「バリ産」には違いないし、多分このやり方で売り出しているんだろうなと思っていたのですが……調べるとなんとバリ産のブドウを使っているというではありませんか! がぜん興味がわいてきました。

バリ産のブドウにこだわるわけ

近年インドネシアでは、気候変動による農産物収量の減少やそれに伴う農業従事者の貧困が大きな問題になっています。ある調査によると国民の3割にあたる7500万人もの人々が農業に携わっているのだとか。農業に影響がでると多くの人の生活が困窮してしまう……インドネシアはそんな爆弾を抱えてしまっているのです。

その状況を憂いたサバベイワイナリーの創設者、ムリャティ・ゴザリ(Mulyati Gozali)氏は「農業振興によりインドネシアの……特にバリ島の人々の生活を支えたい!」という高い志を掲げ、ワイナリーを立ち上げたのだとか。それが「バリ産のブドウ」にこだわる理由……というわけですね。今はやりの “SDGs(Sustinable Development Goals | 持続可能な開発目標)” にも沿った取り組みです。

とはいえバリ島の緯度は南緯8度。前述したワインベルトの範囲からは大きく外れています。年間平均気温は28度、1年を通して非常に暑い……! 幸いにも乾季(4月〜10月)のおかげで降雨量は農家の味方をしてくれているようですが、それでもブドウには厳しい環境に違いありません。そんな環境でワイン用ブドウを育てるのは簡単ではないはず。実際、サバベイワイナリーでは広く流通している国際品種ではなく、バリ島の気候に適したレア品種を栽培しています。

レア品種「アルフォンス・ラヴァリー」の熱帯ワイン

ヨーロッパ系品種の「マスカット・ハンブルグ」と、ワイン発祥の地ジョージアの土着品種「Kharistvala Kolkhuri(発音が難しい……カリストゥアラ・コルホォリ?)」の交配によって誕生した「アルフォンス・ラヴァリー(Alphonse Lavallee)」は、インドネシアなどの熱帯エリアでも栽培可能なレア品種です。むしろ「インドネシア固有品種」といいたくなるほど、現状そのほとんどがインドネシアで栽培されているのだそう。貴族のような麗しい名前は開発者の名前からとってつけられました。

マスカット・ハンブルグ……と聞いて思い出す品種はありませんか? そう、日本が誇るワイン用ブドウ品種、マスカット・ベーリーAです。ベーリーAはマスカット・ハンブルグとベーリーの交配で誕生したブドウですよね。アルフォンス・ラヴァリーもマスカット・ベーリーAと同じ親をもつブドウなのです。親近感がわきます。

いくら熱帯に順応できる品種だからとはいえ、世界中のワイン好きの舌を納得させるのは至難の技。そのためサバベイワイナリーをはじめとするインドネシアワイナリーでは、アルフォンス・ラヴァリーにオーストラリアからの輸入果汁によるワインをブレンドして味を整えてきました。今もその流れは大きく変わっていませんが、最近では栽培技術や醸造技術の向上によりアルフォンス・ラヴァリー100%のワインも登場し、人気を博しつつあるようです。

サバベイワイナリーの公式サイトTOPには「New Attitude from a New Latitude」という言葉が並んでいます。「熱帯という未知の低緯度エリアで革新的なワイン造りをする」という強い想いをひしひしと感じます。

熱帯ワインと中華の共演

さて、先ほど紹介したワイン「ブラック・ベルベット」についてです。アルフォンス・ラヴァリーとオーストラリアのカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドした赤ワインです。ラベルとキャップにあしらわれた南国の鳥がアジアン・リゾートムードを盛り上げてくれますが、味わいもとってもエスニック!

アジア料理の香辛料のようなスパイシーな香りが特徴的です。はっきりとした酸味と存在感のある甘味が口いっぱいに広がって、濃いめのテイスト。ほんのりカスタードクリームのような香りも感じます。実は私、マスカット・ベーリーAのワインにも感じるんです、カスタードクリーム感。これは同じルーツをもつブドウがなせるわざ……なのでしょうか。

そんなブラック・ベルベットにあわせたい料理はこれ。

麻婆豆腐! 花山椒をたっぷりかけてピリッと辛口に仕上げた麻婆豆腐とよく合うんです。ワインの香りや風味が山椒の辛味や独特な香りに負けずに寄り添ってくれます。どことなく杏露酒や桂花陳酒などの中国の果実酒のような雰囲気が漂って、不思議な気分に……。ぜひ一度試していただきたい組み合わせです。

もう一つおすすめのペアリングは、ポタージュスープ!

ポタージュのクリーミーな甘味がブラック・ベルベットのフレッシュさを引き出してくれます。麻婆豆腐に合わせると熟成された妖艶さが漂うのに、ポタージュに合わせるとフレッシュなブドウの息吹を感じる……パートナーによって異なる顔を見せてくれる、不思議なワインです。

Yahoo!ショッピングで見る

サバベイ・ワイナリー公式サイト

 


吉田すだち ワインを愛するイラストレーター

都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
【HP】https://yoshidasudachi.com/
【instagram】https://www.instagram.com/yoshidasudachi

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