2021年09月08日

リンゴのワイン「シードル」が気になる! タイプの違う日本のおすすめシードルをご紹介

 

シードルとは「リンゴを原料にワインと同じ製法で造ったお酒(リンゴの “ワイン” )」です。有名な産地はフランス北西部のブルターニュ地方やノルマンディ地方。人気の観光地「モン・サン=ミシェル」があるあたりです。

数年前フランスを旅行した際モン・サン=ミシェルにも足を運んだものの、「 “葡萄酒” 命!」と頑なだった私はシードルを楽しむ余裕を持ち合わせていませんでした。過去に甘くてジュースみたいなタイプのシードルを飲んだことがあり、その時はあまり美味しく感じられず、シードルに対する偏見を持ってしまっていたのです。

それからしばらくして富山県にあるワイナリー「SAYS FARM(セイズファーム)」さんを訪れたときのこと。 “辛口シードル” が目玉商品にラインナップされていると聞き、興味本位で手に取りました。ワインも何本か購入したうちの1本だったのであまり意識せず栓をあけたのですが、私の中のシードルの概念が覆ることになったのです。「なんてスッキリ! なんて辛口! なんて芳醇!」シードル=ジュースみたいなもの……と思っていた初心者の私がシードルに興味を持つキッカケとなりました。

今回は、シードルの味わいを決めるポイントをおさえつつ、タイプの違う日本のシードルを2つご紹介します。

SAYS FARM 公式サイト

シードルの味わいとリンゴの品種

リンゴにもブドウと同じように品種があります。調べると、世界にはなんと2万品種以上ものリンゴがあるのだとか……(諸説あり)。ワインのように明確な規定はないものの、一応 “シードル用リンゴ”“生食用リンゴ” に分けられます。“シードル用リンゴ” は小ぶりで皮が厚め、酸味が強くフルーツとして食すには向きません。この点もブドウとよく似ています。シードル造りにおいては、ヨーロッパや北米では “シードル用リンゴ” が、日本では “生食用リンゴ” がよく使われます。

日本産 “生食用リンゴ” の代表格といえば「ふじ」ですよね! 青森県で生まれ、今や日本のリンゴ生産量の約半分を占めるメジャー品種です。実は世界的に見ても「ふじ」のシェアはダントツ1位! 世界最大のリンゴ生産国である中国で「ふじ」の単一品種特化栽培が行われているからなのですが、日本発のリンゴが世界シェアトップに君臨していると思うと、とても誇らしい気持ちになります。一方、日本を含むアジアのシードル生産量シェアはとっても小さく、同時にもどかしさも感じるのですが……。シードルもまた、ワイン醸造が進化しているヨーロッパや北米のシェアががダントツという状況なのです。

閑話休題、「ふじ」の他にも「王林」や「つがる」など、さまざまな品種の “生食用リンゴ” が出回っていますが、品種によって味わいの特徴が異なります。例えば「ふじ」は「糖度が高くジューシーな果汁が特徴的」、「王林」は「甘く爽やかな独特の強い香りが特徴的」というように。甘味の強いリンゴ、香りの強いリンゴ、酸味の強いリンゴ……それぞれの特徴を生かしたりブレンドしたりしてシードルは造られます。ワインと同じく、シードルにも色々な味わいがあるわけです。シードルを選ぶ時はリンゴの品種に注目してみましょう。

シードルの味わい製造方法

イギリスなど、海外では非発泡のシードルもよく飲まれているようですが、日本で手に入るシードルはほとんどがスパークリングタイプではないでしょうか。その作り方を調べると、「シャルマ方式」(密閉タンクの中で二次発酵させる製法)や「瓶内二次発酵方式」(ボトルの中で二次発酵させる製法)、「メトード・リュラル方式」(一次発酵の途中で瓶詰めして残りの発酵をボトル内で行う製法)などのキーワードが出てきます。シャンパーニュをはじめとするスパークリングワインの製法とほとんど同じです。ワインと違うのは、原料果実の大きさ、硬さゆえ破砕(果実を砕く工程)・搾汁のプロセスに工夫が必要な点……でしょうか。

リンゴ品種以外に味わいに大きく関係するのは、製造過程でのオリとの接触面積・接触時間です。これもワインによく似ていますね。「シャルマ方式」は大きなタンクで二次発酵させるためオリとの接触面積が小さくなり、オリ引き(濾過)もしやすいためクリアでシャープな味わいになります。「瓶内二次発酵方式」はオリとの接触面積が比較的大きく、オリの影響を受けてバランスのとれた味わいになります。「メトード・リュラル方式」は発酵途中で瓶詰めしオリ引きを行わずに出荷するため、最もオリとの接触時間が長く味わいに厚みが出ると言われます。

製法の違いを意識できるようになったら、もうシードル通と言っても過言ではありません! 販売サイトの商品プロフィールには詳しい製法が載っている可能性が高いので、チェックしてみましょう。

タイプの違う日本のおすすめシードル

味わいのポイントがわかったところで、タイプの異なるおすすめシードルをご紹介します。どちらも東北地方で、どちらも東日本大震災からの復興に力を入れている素敵なワイナリーさんです。

CIDRE 2020(南三陸ワイナリー)¥990

クリアでスッキリシャープな味わい!

宮城県南三陸町にある「南三陸ワイナリー」さんの1本。お試ししやすい375mlサイズ! ラベルは江戸切子をモチーフにデザインしているそうです。このワイナリーさんは他のワインも江戸切子風のラベルデザインが光っています。

宮城県のリンゴ農家から仕入れたリンゴで造られた純宮城産のシードルです。使用しているリンゴは「ふじ」と「サワールージュ」。「サワールージュ」は宮城県原産のリンゴで非常に酸味が強く、アップルパイなどのスイーツやジャムによく使われます。糖度の高い「ふじ」とブレンドすることで、バランスのいい味わいに仕上がっています。

甘味はほとんどなくキレのいい辛口スタイルです。販売サイトで「まるでリンゴを食べているような味わい」と紹介されていますが、芳醇な香りはまさにリンゴそのもの。淡く透き通った色合いが涼しげです。夏の夜によく冷やしてご賞味ください。サバ寿司との相性が抜群ですよ。

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南三陸ワイナリー 公式サイト

Nanyo Cider(GRAPE REPUBLIC)¥2,750

厚みのあるキュートな味わい!

山形県にある「GRAPE REPUBLIC」さんの1本。ラベルのイラストからもわかるように、リンゴと洋ナシ(ラ・フランス)をブレンドして造られています。「フレーバード・シードル」といって、洋ナシをブレンドするとボディーに厚みが増すのだそうです。リンゴだけかと思いきや洋ナシもありなのか……と、またひとつ勉強になりました。フランスでは洋ナシ100%のシードル(別名「シードル・ポワレ」)も人気なのだとか。

このシードルの最大の特徴は、瓶底にたまったオリ! 栓の王冠をはずすとオリがふわ〜っと瓶口に浮いてきます。オリは旨味の塊なので、料理に使うのがおすすめ……とのこと。なるほど! そのアイディアはありませんでした。

「メトード・リュラル方式」でオリ引きせずに出荷されているため、シードルにオリの旨味がたっぷり溶け込んでいます。香りにはどことなくナシの爽やかさがまじります。甘酸っぱさと複雑な味わいが印象的。主役をはれる1本です。リンゴ、洋ナシともに山形県南陽市産です。

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GRAPE REPUBLIC 公式サイト

最後に

参考にした本をご紹介します。シードルのテイスティング・ポイント(味覚チャート)や、日本で主に販売されているリンゴの品種ごとの特徴などが解説されていて、読み応えのある1冊です。国内外のシードルメーカーもたくさん紹介されているので、お気に入りの1本を探してみてはいかがでしょうか。

シードルの事典(誠文堂新光社)

日本でリンゴの栽培が本格化したのは、実は明治に入ってからなのだそうです。まだ歴史が浅いものの、世界的にみて日本のリンゴ栽培の技術はトップクラスです。日本発のリンゴ「ふじ」も世界に受け入れられています。米の不作で生活に困った農家の救済を目的にリンゴの品種改良や栽培技術の向上に力を注いだ結果、いまのポジションを手に入れた……そんな歴史的背景もあるのだとか。美味しいリンゴには人々の努力と情熱が詰まっているのですね。

今のところまだシードルのシェアは小さいけれど、いつの日か日本のシードルが世界を席巻する日がくるかもしれません。そんな期待を胸に、美味しい辛口シードルをグラスに注いで夏の終わりを堪能しようではないですか!

 


吉田すだち ワインを愛するイラストレーター

都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
【HP】https://yoshidasudachi.com/
【instagram】https://www.instagram.com/yoshidasudachi

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