2021年09月15日

サイダー(シードル)インポーターをインタビュー!イギリスで注目の造り手「オリバーズサイダー」を紹介

皆様こんにちは、インポーターの大野みさきです。

今日はワインとは打って変わって、「サイダー」への誘い、その魅力についてレポートしたいと思います。

「サイダーってあれやんな、三ツ矢サイダー」 甘い炭酸飲料水、その他にスプライトや7upが浮かんできました。はい、一足先にサイダーを学んだ者からすれば、「えーマジで知らないの?」と鼻で笑ってしまいます。

でもご安心下さい。サイダーの世界を一緒に勉強していきましょう!

サイダーはお酒!?インポーター道心さんインタビュー

今回、お話し頂いたのは、横浜でイングリッシュパブFULL MONTYを経営しながら、傍らでサイダーを輸入している道心華衣さん。

「日本人の99%が、サイダーがシードルであることを知りません」と道心さん。シードルは言わずと知れた、りんごが原料の醸造酒です。フランスではノルマンディやブルターニュ産が有名ですよね。発泡性と非発泡性のものが存在し、フランス産のシードルは、比較的アルコール度数が低いのが特徴です。なかには産地を問わず8%を超える高アルコール度数のものもあります。

ご存じの通り、シードル/cidreはフランス語です。英語だとサイダー/ciderになります。どうして今まで気が付かなかったのでしょうか。外大卒です。英語はフランス語(ドイツ語)に派生していると、綴りを見て思い出しました。(以下シードルはサイダーと表記します)

つまり、サイダーとシードルは同一なのです。にもかかわらず、日本ではサイダーは炭酸の清涼飲料水を指し、本家のサイダーと認識されていません。先ずは、その理由を伺いました。

三ツ矢サイダーの誕生

1868年(明治元年)、薬種商ノース・アンド・レー商会が、横浜の外国人居留地の英国海軍人らの要望に応え、レモネード、ジンジャエール、トニックウォーターなどの10種類の炭酸飲料水を発売しました。そのうち一つにりんご味の炭酸がありました。

イギリスで馴染み深いサイダーはアルコールであるものの、このりんご風味の炭酸飲料がサイダーと呼ばれることになります。これが現在の三ツ矢サイダーの原型になったと言われています。その後、三ツ矢サイダーが全国的に認知され、いつしかサイダーはアルコールを含まない炭酸飲料水として知られるようになりました。

サイダー消費量世界一の国イギリス

アメリカでもサイダーは炭酸飲料水を指す場合もありますが、りんごの醸造酒は『ハードサイダー』と言います。ポップ、パイナップル、シナモン、生姜などの副原料を入れるサイダーもあります。

ヨーロッパに置いてサイダーは、ワインやビールと同じぐらい生活に密着している飲み物です。なかでもイギリスは、世界一のサイダー消費量を誇り、人々に広く馴染みのあるものです。そのサイダー愛も深いものだと聞きます。

とは言っても、流行り廃りはあります。 2006年、イギリスは記録される猛暑年でした。真夏には、500mlサイズのグラスを氷で満たして、ボトルと共に提供するスタイリッシュさが若者にウケました。それと共にボトルに貼られたラベルがCMとして功を成しました。

大手サイダリー(サイダー醸造所)は以前と比べて良質なサイダーを造るようになっています。ブームによって、大手も小規模なクラフトサイダリーも生産量を底上げしました。

イギリスのサイダーブーム

現在イギリスでは、若者を中心にフルーツサイダーがブームです。

日本でも、4年ぐらい前から第三次サイダーブームでバブルが到来していますが、イギリスではブームの下火でメーカーの生産量が落ち込む事態になると、それに比例してりんごの需要も落ちます。農家はせっかく作ったりんご半分を廃棄した年もありました。

ブームの再来で、伐採した果樹園を再び復活させないとならないことに。りんごの木です。実をつけるまでに何年もかかります。大手メーカーハイネケンやブルマーズの取引先の農園は、流行に振り回されているという問題も抱えています。

一貫してブランド力のある果樹園のサイダーは美味しいそうです。食用か醸造用かはもとより、りんごの品種やブレンドによって、バラエティのある味わいに仕上がります。

例えば、イギリス東部のサフォークでは食用のりんごで造られるので、渋味の控えめな飲みやすいサイダーが出来上がります。国の文化や産地でサイダーのキャラクターも異なります。

自然派ワインないし、自然派サイダーも存在するのですが、なんせオーガニック認証の取得が大変なので、認証の有無とは関係なく、酵母の添加をしない昔ながらの製法で造る生産者もいて、野生酵母で造られたサイダーは、りんごをそのまま潰し、ゆっくりと発酵させるので、複雑味が豊かでとても深い味わいだと道心さん。

しかし、ワインと同じく、果実をただ潰して発酵させただけで、最高のサイダーができるわけではないので、そこには高い醸造技術が必要です。

泡の発生方法も様々で、炭酸を添加しているもの、瓶内二次発酵(滓引きもする)のもの、最近はやりのぺットナット(一次発酵途中で残りの発酵を瓶内で終わらせる)などがあります。泡の質によってサイダーの印象も異なるそうです。スティルサイダーや微発泡タイプは、繊細で果実そのものの魅力を損なわないので、おすすめなのだとか。

フランスでは、果汁に塩化カルシウム(かつては灰と塩が使われていた)を加えたキーヴドという製法で作られます。ペクチンを呼び込み、糖分を残して仕上げるので、甘めで低アルコールになります。一方イギリスでは、少数ではありますがキーヴィング製法で造っている醸造家もいます。すっきり飲みやすいサイダーが主流ではありますが、フルーツやホップを添加したり、オークやウイスキー樽を使ったりしたサイダーもあります。

道心さんとサイダーの出会い

イギリス人の旦那様と切り盛りされているパブFULL MONTYでは、フランス、スペイン、アメリカ、スウェーデン、エストニア、ラトビアなど、世界中から選りすぐった90種類のサイダーが楽しめるというので驚きです。

そんなに好きなら自分で輸入したら良いのではと周囲が後押しし、6年ほど前からイギリス産のサイダーを直輸入しています。道心さんのサイダー愛は一体どこから来るのでしょうか。

彼女のサイダー愛は幼少期からはじまります。 クリスマスに母と父用のお酒を買いに行った時、偶然目にしたアサヒニッカサイダーのボトルの可愛いデザインに一目ぼれ。バンドに明け暮れた学生時代はお子様りんごサワーをひたすら飲み、大人になってニッカサイダーを愛飲。

紆余曲折ありバーテンダーの道を進みます。大手メーカーのサイダーを取り扱う、地元のパブに入り浸り、そちらで旦那様とも知り合いました。「そんなにサイダーが好きだったら、こんな不味いサイダーじゃなくて、本当のサイダーを教えてやる」と言われ、今はない東京目黒の本格イングリッシュパブに連れて行って貰います。

サイダー愛が繋げた2人の仲です。その後、夫婦でパブを開業して世界中のサイダー取り扱い、しまいには現地イギリスに赴き直輸入まですることに。

「私の血はサイダーでできているのではないでしょうか」と道心さん。「本当にただの酒飲みでしかないですが、特段りんごが好きでもなかったし、旦那と出会うまではイギリスにも興味なかったです。子供の頃にサイダーと出会い、年を重ねるごとに美味しいサイダーを知り、どんどん魅かれていきました。イギリスのこの飾らない味が好きなのだと思います」と。

参りました。好きこそものの上手なれとはまさにこのことです。素敵なサイダー愛です。早速、3種類のホンモノのサイダーを試してみました。

道心さん一押しのサイダーの造り手

オリバーズサイダー

南西部のヘレフォードは、醸造用りんごでイギリストップの生産地です。新鮮な果実を圧搾し、野生酵母によってゆっくりと丁寧に発酵させるクラフトサイダーです。造り手のトムオリバーの大らかで朗らかな人柄と笑顔は、奥深いサイダーの味わいにも表れています。真摯に果実と向き合い、どんなサイダーになりたいか、その鋭い感覚を研ぎ澄ませながら醸造を手掛けます。サイダーに先入観は禁物ですよ~!とオリバー。つべこべ言わず、先ずは飲んでみなさいと聞こえた気がしました。

Oliver‘s Fine Cider “Gold Rush #8”


オープン価格/330ml/アルコール6.5%

注いでいる最中からりんごが香ります。りんごの皮、フラワリーさもあって、醸造由来の酵母のニュアンスが全開です。使い込んだオーク樽とタンクで野生酵母によってゆっくりと発酵されます。鋭角なりんご酸はマロラティック発酵により、丸みを帯びた乳酸となり円やかな味わいに。複雑味も感じられ、アフターには果実由来の甘さを残し、酸とタンニンが全体をキレイにまとめます。りんごの魅力が満載の1本です。

Oliver’s Fine Cider ” Pomona Rolling Blend”


オープン価格/330ml/アルコール6.5%

野生酵母が仄かに香るトラディショナルスタイルでありながら洗礼されたタイプです。ステンレスタンクで発酵。ややツンとしたインパクトのあるアタック、紅茶、漢方、スパイス、落ち葉、刻みタバコなどのドライな印象。更に燻し香も感じます。カットりんごのような酸化的なニュアンスからナチュラルさも存分に感じられ、深みと落ち着きがあります。ヒノキのような独特の香りがクセになるアフター。程よくドライで渋味が最高のサイダーです。

Oliver’s Fine Perry


オープン価格/330ml/アルコール4%

ペリーペアーと呼ばれる醸造用の洋梨から造られたお酒です。道心さんがサイダー博士と果樹園を訪問した時、その洋梨を一口かじったところ、死ぬほど渋くてそれは丸1日続いたと言います。しかし、上手に醸造されたペリーは「天使の涙」と称されるよう、絹のような舌触りで上品なシャンパーニュのように変身するのだとか。正しくこのペリーは天使の涙。ミッドシーズンに収穫できる古典的なペリー品種ブレイクニーレッド、ジン、レッドペア、レッドロンドンをブレンドして造りました。淡い黄色の輝き、白い小花やみかんの花、蜜、エルダーフラワーなどの上品な香りにうっとり。カモミールアイスティーのよう。心地良い酸味に、アフターに感じる僅かな甘味がエレガントです。サイダー/シードル界のクロサンチューヌ(ロマネコンティ)と名付けたいぐらい素晴らしいペリーでした。

日本で注目のクラフトサイダー

サイダーブーム到来中の日本では、長野県のりんご果樹園がサイダーを手掛けるなど、エンドユーザー向けにグループ活動やイベントのアピールをして、精力的な活動がみられます。

道心さん曰く、日本のサイダーなら、長野県のSon of the Smith Hard Cider(サノバスミス)が、他と一線を画す、大絶賛の造り手!海外の醸造用りんご品種やホップを用いて、モダンなサイダーを造ります。ホップとりんごは相性が抜群!仕上がるサイダーも、それは、それは絶品なのだとか。

この酸味と渋味の絶妙なバランスは、味の細分化と分析&研究の賜物だと思います、と道心さん。10月の収穫期には搾汁のお手伝いに行くほど。サノバスミスのサイダーを愛しているのが伝わってきます。

最後に

ぶどう原料の醸造酒がワインです。果実の種類こそ違いますが、サイダーはその兄弟のようなものだと感じました。品種だけでなく産地でも味わいは異なり、それらはそもそも国の文化や伝統などにも影響を受けているとは、ワイン通からしても実に興味深いです。

いやはや、あっぱれなサイダー愛でした。これを機会に私もサイダーが好きになりました。ALL YOU NEED IS LOVE(愛こそはすべて)です。そう言えばビートルズもアップルでしたよね。それでは皆様、ごきげんよう!

■FULL MONTY imports

横浜市中区福富町西通41 北原ビル102

045-334-8787

公式インスタグラムはこちら

サイダー取扱店はこちら

 


365wine 大野みさき

スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。

【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/

この記事をSNSでシェアする