2021年11月10日

ボジョレー・ヌーヴォーに白ワインはないの? 実はカラフルで楽しい “ヌーヴォー” の世界

秋が深まってきましたね! ハロウィンを過ぎたら街はクリスマスカラーに染まりますが、ちょっと待ってください。クリスマスの前に忘れてはいけないあのイベントがありますぞ。そう、ボジョレー・ヌーヴォー解禁です!

ボジョレー・ヌーヴォーはその年の「新酒」(その年に収穫したブドウで造られるできたてほやほやのワイン)で、毎年11月の第3木曜日に “解禁” となります。世界的に「11月第3木曜日までは飲んじゃだめ!」というルールが徹底されているのです。今年、2021年の解禁日は11月18日です。来る解禁日にあわせて、ワインショップではボジョレー・ヌーヴォーの予約合戦が活気をおびています。日本は時差の関係で本家フランスより8時間早く解禁となるので、特に注目度が高まるといわれています。

ここでひとつ問題です。商品ラインナップをよく見ると、どのボジョレー・ヌーヴォーも赤ワインばかりであることに気が付くと思います。お店に置いてあるその他のワインには、白やロゼ、スパークリングなど様々なラインナップが揃っているのに、なぜボジョレー・ヌーヴォーは赤ばかりなのでしょうか。白やロゼのボジョレー・ヌーヴォーをおいているお店はないのでしょうか。

今回はそんな疑問にお答えする回。ボジョレー・ヌーヴォーの基礎知識をおさえつつ、白ワイン好きさんのために耳寄りな情報をお届けします。

ボジョレー・ヌーヴォーに「赤」以外はないの?

早速ですが結論をいうと、ボジョレー・ヌーヴォーに赤以外の色のワインはありません! ボジョレー・ヌーヴォーは「シャンパーニュ」と同じように、ある一定の条件をクリアしたワインだけが名乗ることができるブランドです。条件というのはこちら。

一つ、フランス・ボジョレー地区で栽培されたブドウを100%使うこと
一つ、使っていいのはその年に収穫された「ガメイ種」のブドウだけ
一つ、ボジョレー・ヌーヴォーとして認められるのは赤ワインだけ

フランスの法律で、「ボジョレー・ヌーヴォー」のブランドを冠して販売する場合は、これらの条件を全てクリアする必要があると定められているのです。たまに「ボジョレー・ヌーヴォーってなんとなく安っぽい」とか「量産品っぽくて飲む気がしない」なんて声が耳に入りますが、実際は厳格なルールのもと育まれてきた立派なブランドワインなのです。

ボジョレー・ヌーヴォーの味わいに関する評価は人それぞれあっていいと思います。重厚感のある渋い赤ワインが好きな人にとっては少し物足りなく感じるかもしれません。もともとライトな味わいが特徴のガメイ種を使った新酒なので、さらっと軽やか、フルーティな赤ワインだからです。そういった感想を言い合うこと自体は悪いことではありません。でも「ボジョレー・ヌーヴォー=安っぽい」とか「ボジョレー・ヌーヴォー=まずい」といったネガティブな評価を耳にすると、「ボジョレー・ヌーヴォーのこと何にもわかってないくせに〜!」と心の中で叫ばずにはいられません。

……おっと、つい熱くなってしまいました。要するにボジョレー・ヌーヴォーにはボジョレー・ヌーヴォーの良さがある! 1年に1回、その良さを楽しむお祭りがやってくるんだと思うと、楽しまなきゃ損ってものです。

白い “ヌーヴォー” の正体

ボジョレー・ヌーヴォーを名乗れるのは赤ワインだけ……といいましたが、実は白い “ヌーヴォー” も存在します。その名も「マコン・ヴィラージュ・ヌーヴォー」です。

マコン・ヴィラージュ・ヌーヴォーは、その名のとおり「マコン・ヴィラージュ(マコン地区の指定された村)」で造られる「ヌーヴォー(新酒)」です。マコン地区はボジョレー地区のすぐ北側に位置しています。日本のワイン産地でたとえるならば、長野と新潟みたいな関係……でしょうか。物理的に距離が近いこともあり「ボジョレー・ヌーヴォーの姉妹酒」的なポジションで、同じく11月の第3木曜日に解禁となります。

ボジョレー・ヌーヴォーと同様にマコン・ヴィラージュ・ヌーヴォーにも決まりがあります。使えるのはマコン地区の特定の村で収穫したシャルドネ種のブドウだけ。透き通るようなレモンカラーの色合いに、キュンと舌を刺激する酸味とほのかな甘味のバランスが絶妙な、とってもフレッシュなワインに仕上がります。そもそも「ヌーヴォー(新酒)」の最大の特徴は「フレッシュであること」です。そう考えると白ワインであるマコン・ヴィラージュ・ヌーヴォーこそ、「ヌーヴォー」の特徴が生きる至高のヌーヴォーといえるのではないでしょうか。

ボジョレー・ヌーヴォーとマコン・ヴィラージュ・ヌーヴォーの両方を取り揃えて、赤ワイン好きさんも白ワイン好きさんも楽しめる、紅白ヌーヴォー・パーティなんていかがでしょうか。

マコン・ヴィラージュとおすすめマリアージュ

せっかくなら美味しいおつまみを用意して楽しみたい! ということでおすすめマリアージュをご紹介します。今回は白のヌーヴォーことマコン・ヴィラージュ・ヌーヴォーにフォーカス。ヌーヴォーは解禁日にならないと手に入らないので、2019年生産のマコン・ヴィラージュに合わせてみました。

ジョセフ・ドルーアン/マコン・ヴィラージュ 2019

生産されてから少し時間が経っているものの、フレッシュさが残っています。口に含むと少しとろみのある食感で、甘味がふわっと広がります。一方シャルドネ種のブドウらしい爽やかな酸味が心地よく舌を刺激します。このちょうどいい軽さ! この軽さがマコン地区の白ワインの特徴です。ヌーヴォーではさらにフレッシュな感覚を味わえると思うと、ますます楽しみになってきます。

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おすすめマリアージュ(1)

まず最初にピックアップしたいのは、クリームシチューです。

とろんとした口当たりにクリーミーなシチューがマッチ! シチューに溶け込むバターの香ばしい香りとワインの香りがよくあいます。ワインの最大の特徴である酸味がいいアクセントとなり、スプーンを持つ手がとまりません。特におすすめなのは、クリームシチューにパルミジャーノ・レッジャーノをふんだんにかけて食べること!

パルミジャーノ・レッジャーノは、北イタリア産のハードチーズです。「イタリアチーズの王様」とも呼ばれます。熟成が進むとじゃりじゃりとした食感が際立ちますが、それはアミノ酸が結晶化したもの。豊富な旨みとふくよかな香りがたまりません。そんなパルミジャーノ・レッジャーノをクリームシチューにふりかけるとコクが何倍にもふくれあがり、白ワインとの相性もさらにグッと高まります。酸味が柔らかくなり、飲み疲れることなく楽しめますよ。

おすすめマリアージュ(2)

続きましてはオシャレ和風居酒屋御用達のおつまみ、いぶりがっこマスカルポーネです。

干大根を燻して作る秋田名産のいぶりがっこに、イタリア・ロンバルディア地方原産のマスカルポーネチーズをあえるだけの簡単おつまみ。簡単なのに味わいレベルは名店級。いぶりがっこの燻した香りとワインの奥にひそむ樽の香りがよい塩梅でマッチします。大根の酸味とワインの酸味、マスカルポーネのクリーミーな風味とワインの旨みがそれぞれ調和して、これまた箸が進む組み合わせです。マコン・ヴィラージュ・ヌーヴォーのおともにご用意してみてはいかがでしょうか。

他にもある! カラフルなヌーヴォーたち

最後に、実は赤と白以外にもいろいろあるヌーヴォーをご紹介します。「ボジョレー・ヌーヴォー」と「マコン・ヴィラージュ・ヌーヴォー」は法律で定められたルールに従わないと名乗ることはできませんが、生産者たちが独自のブランドでカラフルな「ヌーヴォー(新酒)」をリリースしています。

最も代表的なのは、ボジョレー・ヌーヴォーブームの火付け役ともいわれるジョルジュ・デュブッフです。彼らは王道のボジョレー・ヌーヴォーの他に、ガメイ種のロゼワイン「ボジョレー・ロゼ・ヌーヴォー」や、グルナッシュ・ブラン種とミュスカ種をブレンドしたオレンジワイン「オレンジ・ヌーヴォー」を造っています。

赤と白に加えてロゼやオレンジも並べたら、ボジョレー・パーティがさらに華やぐこと間違いなし! 1年に1回のお祭り騒ぎを全力で楽しみましょう。

 


吉田すだち ワインを愛するイラストレーター

都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
【HP】https://yoshidasudachi.com/
【instagram】https://www.instagram.com/yoshidasudachi

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