
2020年07月08日
皆様、明けましておめでとうございます。インポーターの大野みさきでございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。
さて、今日の地球温暖化の問題は深刻で、その影響はワインにも及んでいます。南の温暖なエリアでは、主力品種の戦力外通告、酸の欠乏、異常気象による悪影響が報告されています。
今回は地球温暖化がワイン造りに与える影響についてお送りします。
第一に栽培適応品種が変わります。今まで問題なく育てられた品種が、気候変動によってその土地に適さなくなります。
例えばボルドー地方では、下記の6品種が、気候変動への適応で、いち早く導入されました。
■黒ぶどう
アリナルノア Arinarnoa
カステ Castets
マルセラン Marselan
トウリガ・ナショナル Touriga Nacional
■白ぶどう
アルヴァリーニョ Alvarinho
リリオリラ Liliorila
ボルドーと双璧のブルゴーニュでも、賛否両論ありますが、次のような品種の導入が検討され、既に実験段階で栽培が行われています。
■黒ぶどう
シラー Syrah
カベルネフラン Cabernet Franc
ネッビオーロ Nebbiolo
クシノマーヴロ Xinomavro
セザール Cesar
トゥレソ Tressot
■白ぶどう
Sacy サシー
Roublot ルブロ
Melon ムロン
Aubin オーバン
将来、ブルゴーニュではシラーやネッビオーロが、一軍で活躍する品種となるかもしれません。生息する草木が変われば、そこに住む生き物も変わります。つまり、地球環境の生態系そのものが、変わってしまうことが懸念されているのです。
その次に、温暖化によってぶどうの成熟が変化し、ワインスタイルが変わります。気温の上昇で、糖度が上るのに比例して、アルコール度数は高く、逆に酸は反比例で乏しくなる傾向があります。今までのワインスタイルではなくなるのです。その対策として、ブルゴーニュでは糖度(アルコール度数)を抑えたクローンぶどうの研究が行われ、シャンパーニュでも酸度が残る品種の植え替えを検討しています。
ここまでは、地球温暖化によるネガティブな影響と、その対応策をお話してきました。何も悪い影響だけではありません。北緯47度~52度、ぶどう栽培においても最北であるドイツ。この地では温暖化で過去には見られなかったことが起きています。
まずは、気候変動による、黒ぶどう&白ぶどうの栽培比率の変化をご覧下さい。
■栽培量比較 白ぶどう:黒ぶどう(ドイツ)
1970年 85:15
1980年 89:11
1990年 84:16
2000年 74:26
2005年 63:37
2018年 66:34
2019年 67:33
※引用元:ヘレンベルガーホーフ
かつては白ワイン王国で、栽培の80%以上が白ぶどうでしたが、この半世紀の間で60%台となり、最近では黒ぶどうの比率が増えています。
ワイン業界ではその名を知らぬ者がいない楠田卓也さん。審査員やワイン講師をされておられる楠田先生は、このように話されていました。「地球温暖化による弊害が南の方では強く出てきていますが、昨今のドイツについて言えば、温暖化がポジティブに働いている産地だと感じています。特に赤ワインが顕著で、白ワインについても以前より熟度が高い、風味豊かなワインが増えてきていると言う意味で、今、ドイツワインを飲まないでどうするのだ、と思っている次第です」
ドイツのワイナリー、ラッツェンベルガーのヨハンさん曰く、「今のところ私たちの北のエリア(ミッテルライン地域バッハラッハ村)では、温暖化は大きな被害となっていません。振り返ると1985年ぐらいは、今よりもぶどうの糖度が20%少なかったです。酸度は20%多かったので、現在とは全く違うスタイルのリースリングを造っていました。平均気温度も2℃上昇し、大きな問題としては、降雨量が少ないのに、たまに大雨となることもあって、気候変動が激しいです。雨が少ないと収穫量も落ちます。糖度が上がり、酸度が下がる程度なら、今ならポジティブに捉えられますが、これが進んでいくと深刻な問題に発展するでしょう」
確かに以前は、白ワインは甘口で酸が豊か、赤ワインは淡い色でライトなのが、ドイツワインの特徴でした。しかし今や、香り高く軽やかな飲み心地、酸は穏やかで繊細で上品な味わいの、一昔前とは全く逆のタイプのワインが続出しています。下手なリースリングやピノノワールが比にならない、偉大なドイツワインも排出されているので、この要因の一つに地球温暖化の影響を受けての、スタイルの変化も関係してくるとは、なんとも皮肉なことです。
年始最初のコラムでは、地球温暖化がワイン造りに与える影響についてお伝えしました。SDGsへの取り組み、STOP温暖化、いずれにしても人類にとっては大きな課題ですね。皆で一緒に考えて、取り組んでいければと思います。
2022年も良い(酔い)ワインライフをお過ごし下さいませ。それでは皆様、ごきげんよう!
365wine 大野みさき
スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
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