
2021年02月07日
世界屈指のワイン大国、イタリア。南北に細長い国土は20の州に分かれており、その全てでワインが造られています。「イタリアワインといえばキャンティ」といわれていた時代もあったようですが、最近では実にバラエティ豊かな銘柄が世界中で親しまれています。最近のトレンドとして注目されているのが、 “赤いスパークリングワイン” 。身近なところでは、イタリアワイン&カフェレストラン「サイゼリア」のメニューに「ランブルスコ」が載っていますよね。カジュアルなイタリアン・ランチやディナーのお供にオーダーしたことのある方も多いのではないでしょうか。
ランブルスコとともに、赤いスパークリングワインの二代巨頭といわれているのが「ブラケット・ダックイ(Brachetto d’Acqui)」です。「Brachetto(ブラケット)」はブドウの種類で、「Acqui(アックイ)」は産地の名前。聞き馴染みのない方も多いかもしれません。それもそのはず、ブラケット種のブドウは他の品種に比べて栽培面積がせまく、多くがイタリア国内消費用にまわされていたのです。近ごろは日本でもキャンティ以外のイタリアワインが幅広く飲まれるようになり、それにともなって私たちもブラケット・ダックイを入手しやすくなりました。
最大の特徴はとろけるような甘さ……! ランブルスコにも甘い「ドルチェタイプ」がありますが、ブラケット・ダックイの甘さは一味違います。今回はそんな「ブラケット・ダックイ」にフォーカスして、その正体を紐解きつつおすすめ銘柄やおすすめの飲み方をご紹介します。
まずはブラケット・ダックイの生まれ故郷、アックイについて。ワイン銘醸地アックイはイタリア北西部のピエモンテ州にあります。イタリア語では「Acqui Terme(アックイ・テルメ)」と呼ばれています。この名前から、何かを連想しませんか? ……そう、「温泉」です! 古代ローマの温泉・入浴文化を軸に物語が展開する映画「テルマエ・ロマエ」のタイトルにも「テルマエ(テルメ)」が入っていますよね。アックイは「水」という意味で、テルメは「温泉」のこと……つまり、アックイ・テルメは「水と温泉の街」という意味なのです。街の広場には温泉の噴水があり、お湯に触れることもできるのだとか。ただしお湯の温度は75度もあるらしいので、火傷注意。
大きな山脈に囲まれた地形は寒暖差がはげしく、日照も良好。水捌けのいい土壌も用意されていて、ブドウ栽培にとても適した場所なのだそうです。温泉の街ということは、地熱もいい影響を及ぼしているのかもしれませんね。
アックイが誇る赤いスパークリングデザートワイン「ブラケット・ダックイ」は、イタリア旧ワイン法の格付けで、最高ランクの「D.O.C.Gに格付けされている歴史あるワインです。赤のスパークリングワインで「D.O.C.G」に登録されているのはブラケット・ダックイだけ。冒頭で触れたランブルスコ種のワインは旧ワイン法の上から2番目のランク「D.O.C.」に格付けされているので、格付け的にはブラケット・ダックイの方がワンランク上ということになります。
ブラケット・ダックイに使われるブドウの品種は、その名の通りブラケット。ブラケット種はイチゴやラズベリーなどの甘酸っぱい風味、花のような華やかな香りが特徴で、風味豊かな甘口ワインを造るのに最適な品種です。甘さを引き立てるフルーティな要素やフローラルな要素、赤ワインならではの複雑な要素……さまざまな要素が絡み合って完成度の高い魅惑のデザートワインが生み出されます。
アルコール度数は5.5度〜7度と決められており、強いお酒が苦手な方でも親しみやすいワインです。気分が華やぐ綺麗な濃いピンク色は、本場イタリアのパーティシーンでも重宝されているようです。
Braida(ブライダ)が造るブラケット・ダックイはとてもアロマティック! グラスに注ぐとシュワシュワした炭酸とともに、甘いキャンディの香りと赤ワインらしい複雑な香りが立ち上ります。ソムリエの堪能評価によると、スミレの花の香りも感じられるのだとか。ラベルにあしらわれたロゴのネオンカラーとワインの液色がリンクして、何ともお洒落ではないですか!
口に含むとイチゴのようなラズベリーのような、フルーティな香りとともにとろける甘さが広がります。味わいの印象はまるでグレナデンシロップ! グレナデンシロップはノンアルコールカクテル「シャーリー・テンプル」にも使われるザクロのシロップです。甘味のあるフルーティなカクテルがお好きな方ならきっと気に入るはず。ザクロのようなキュンと心弾む甘酸っぱさに魅了されること間違いなしです。
ブラケット・ダックイに合わせて欲しいおすすめ “おつまみ” は、イチゴのショートケーキ! イチゴの酸味、生クリームの優しい甘味、スポンジ部分の卵の風味……すべてがワインの味わいにリンクして相性ばっちり。甘いワインに甘い食べ物を合わせたらくどいんじゃないかと思いきや、お互いがお互いを引き立てあって美味しさが倍になります。甘党の方には絶対おすすめの組み合わせです。
お誕生日祝いの席でシャンパンの代わりにブラケット・ダックイで乾杯しつつ、美味しいイチゴのショートケーキをほうばる……なんていかがでしょうか。
「甘いものがあまり得意ではないので、甘いワイン × スイーツの組み合わせはちょっと……」と心配な方のために、しょっぱい系のおすすめ “おつまみ” もご紹介します。
ピザ生地に青のりなどの海藻を練り込み、シンプルに塩味を付けて油であげた「ゼッポリーネ」。イタリア・ナポリの郷土料理です。外はサクサク、中はもちもち、スナック感覚で食べられる人気のおつまみ。これがブラケット・ダックイと合うんです。青のりが醸し出す磯の香りとブラケット・ダックイの甘酸っぱい風味が想像以上に相性抜群! ぜひ試して欲しい組み合わせです。
ゴルゴンゾーラ、モッツァレラ、パルミジャーノ・レジャーノ、タレッジョなど、4種類のチーズをふんだんに使ったピザ「クワトロ・フォルマッジ」。蜂蜜をかけていただくのが定番です。チーズのしょっぱさに甘い蜂蜜が加わると、甘じょっぱループにはまって食べる手が止まりません。この甘じょっぱループを作り出すため、蜂蜜の代わりにブラケット・ダックイを合わせてみてはいかがでしょうか。ブラケット・ダックイならただ甘いだけではなく、赤ワインの風味も感じられるので、チーズの美味しさがより引き立ちますよ。
甘口ワインはワイン初心者の方にもおすすめです。いつもオーダーする甘味の強いカクテルの代わりに甘口ワインにトライしてみてはいかがでしょうか。とろける甘さを堪能しつつワインならでは複雑みを味わってみてください。ブラケット・ダックイならアルコール度数も低めなので、チャレンジしやすいですよ。
吉田すだち ワインを愛するイラストレーター
都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定
ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
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