2022年03月02日

地球温暖化によるカビ病害。カビ耐性を持つPIWI品種の活躍に期待大

皆様こんにちは、インポーターの大野みさきです。

20世紀の100年間で、地球の平均気温が約0.6℃上昇しました。こうした気候条件の変化によって、異常気象による自然災害からの社会への深刻な問題など、様々な分野に影響を及ぼしています。『このままでは地球の未来があぶない!』と、この現状を打開すべく、各国がCO2排出削減に向けて積極的に取り組んでいます。

ワイン業界でも、気候に適した品種の開発や植え替え、ワイン法の整備、ボトルの軽量化などが、急ピッチで進められる中、今日は温暖化への対処策のひとつである、PIWI品種についてご紹介しましょう。

PIWI(ピーヴィー)品種とは

Pilzwiderstandsfähigen Rebsorten(ピルツヴィダーシュタンツフェーイゲン レープゾルテン)

PI=Pilz/ピルツ=カビ 
WI=Widerstandsfähig/ヴィダーシュタンツフェーグ=耐性
Rebsorten=ぶどう品種

PIWIとはドイツ語で、【カビ】【耐性】の略語です。昨今は温暖化による気候変動から、ドイツやオーストリアなどの冷涼な産地でさえも、カビの被害が頻繁に報告されるようになりました。

気温が高くなると、微生物にとって活動しやすい環境が整います。ぶどう栽培で悪影響を及ぼすカビには、ウドンコ病、ベト病、灰色カビ病などがあります。

カビの病害

ウドンコ病/オイディウム

1850年頃に北アメリカから輸入した苗木を介して伝来したカビ。繁殖すると若枝や果粒が白色の粉で覆われ、生育障害を引き起こす。

対処策:硫黄含有の農薬の散布、ベンレート(ベノミル)剤の散布

ベト病/ミルデュ

19世紀後半、こちらもアメリカから伝播。最初に発見されたのは1878年。白カビによって落葉、落花、落果と、ことごとく落ちる病気。

対処策:ボルドー液(硫酸銅+生石灰+水)の散布

灰色カビ病/プリチュール・グリーズ

貴腐菌(=ボトリティスシネレア菌)の名でも有名。乾燥した環境下で白ぶどうの完熟果実に付着すると、貴腐ぶどうになり貴腐ワインができる。しかし、黒ぶどうに付くと、灰色カビ病を生じ枯死に至る。

対処策:イプロジオン水和剤の散布


灰色カビ病のぶどう

PIWI品種はなんと100種以上!

今後、更なる気温の上昇と共に、ぶどう畑はカビの被害に見舞われることが予想されます。そんな病害を見越したEUでは、1980年代から耐カビ性、および耐寒性のあるぶどう品種の研究と開発を行ってきました。そうして誕生したのが耐カビ性品種で、 今やPIWI品種はなんと100種以上も存在します。

下記に挙げたのは、その代表的な品種です。

 白ぶどう

Cabernet blancSolarisMuscarisHeliosLillaFannyJohanniter BronnerAngéla–AronSouvignier risBirstaler MuskatAromera SoliraSauvignacFeliciaVillarisFrumosa AlbaPölöskei Muskotály PalatinaHibernalBiancaBronner

黒ぶどう

Regent、Cabernet uraCabernet CortisCabernet CantorCabernet CarbonMonarchBaronRebergerChambourcinMuscat BleuLidi NéróKönigliche EstherKatharinaGalanthRegentGeorgKodrianka VineraPriorDivicoVinorè

私たちには聞き慣れない品種ですが、近年はヨーロッパ各地で盛んに採用されています。元々、カビに耐性がある品種ですから、最大で農薬が80%も削減できるという優れた点からも、最近は拍車をかけて注目されています。

導入を積極的に行っているオーストリアでは、地理的表示なしのテーブルワインのカテゴリーで、7品種Muscaris、JohanniterSouvignier grisCabernet blancBronnerRegentCabernet jura)が許可されています。

また、2000年からは格付けトップのクヴァリテーツヴァイン(プレディカーツヴァイン)の品種として、黒ぶどうのRathayとRoeslerが新たに仲間入りしました。将来的には実用化されるPIWI品種の種類や生育地も増え、法的に許可される品種、格付けやGIも広がりを見せそうな予感です。

 最後に

気候変動がもたらす病害への対策だけでなく、PIWI品種には、自然農法への貢献、労働環境の改善などの良い側面もあります。実際にポーランドやデンマークなどでは、生産量、売上高のいずれを取っても、ぶっちぎりの右肩上がりなのだとか。

革新的PIWIワインが日本の食卓に並ぶ日も そう遠くはないのではないでしょうか。

それでは皆様、ごきげんよう。

 


365wine 大野みさき

スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。

【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/

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