
2022年10月01日
皆様こんにちは、インポーターの大野みさきです。
今日のテーマは、『メキシコワイン』 。
砂漠、サボテン、テキーラ、タコス。ハットを被った髭のおじさんが、ギターを弾いているシーンが浮かびます。
メキシコ×ワイン、全く想像できないのですが、そんな一般的なイメージとは裏腹に、カルフォルニア南部の細長い半島には、ワイン街道とやらが存在し、100のワイナリーが軒を連ねている・・・・と聞くから驚きを隠せません。それでは、知られざるメキシコワインを紐解いていきましょう。
今回お話を伺ったのは、リードオフジャパン株式会社のメキシコワイン「ラセット」ブランドマネージャーの木村さんと広報担当の勝(すぐれ)さんです。
創業1985年の同社は、中米や南米のお酒の輸入からスタートし、今や商社、レストラン事業、商品開発に至るまでを手掛けています。皆様に馴染みのある、ハーシーやアップルタイザーの輸入会社と言えば、わかりやすいかもしれませんね。
社長の渡邊弘之さんが学生だった頃、メキシコに移住してビジネスで成功を収めている叔父を訪ねました。その時に食文化や人に感銘を受けたのがきっかけで、ビールやテキーラを輸入したのがはじまりだったのだとか。メキシコワイン輸入で30年になりますが、他社を含めて日本のインポーターは現在4社ぐらい。まだまだ知られていない稀有な産地です。
同国のワイン情報も少ない中、色々と教えて頂きました!
先ずは国の概要から押さえておきましょう。
北アメリカに位置するメキシコは、アメリカのカルフォルニアから地続きの、暖かい気候です。とは言っても四季もあり冬には雪も降るのだとか。
南北に伸びる国土は、日本の大手自動車メーカーの工場なども擁する工業国であり、また昨今は投資先としても有望な国のひとつ。メキシコの通信王が、世界長者番付に名を連ねていることでも知られています。
公用語はスペイン語。「アステカ文明、マヤ文明発祥の地でもあり、多様な民族で構成され、陽気で朗らかなラテン気質かと思えば、大航海時代に植民地として征服された歴史もあり、絵画などのアートの分野では、暗く影のある側面が描かれることもあります。意外にも内向的な性格の方も少なくないです」 と木村さんは語ります。
O.I.V.による2019年のデータでは、メキシコのワイン生産量は世界37位(日本25位)、輸入量28位(日本に比べて半分程度)。 その上、国内消費に関しては94位です。国民ひとり当たり、1.2L/年しかワインを飲まないとの報告も上がっています。では、メキシコでは何が飲まれているでしょうか。
「弊社が輸入を手掛ける 『ラセット』 のワインは、一般のメキシコの方々にとって、価格が少し高いと現地の方が話すのを聞いたことがあります。メキシコではワインよりもビールや土着のどぶろくのようなお酒などが、日常で飲まれているようです。また、南北に長い国土の中央部に位置する首都メキシコシティより南側は、熱帯気候が広がり、カリブ文化圏に続きます。ライフスタイルも異なるので、ヨーロッパのように毎日ワインを飲むような習慣はないのかもしれません。
一方で、メキシコのお酒といえば、テキーラのイメージがあるかもしれませんが、現地の方々が皆テキーラを日常的に飲んでいるというわけでもないようです」
メキシコ国内では、気候、文化、民族、生活水準によっても、常飲品が異なると言うことですね。
メキシコの国土は日本の約5倍。北部と南部では文化の違いもあり、その土地ごとにローカルフードが存在します。主食はトウモロコシで、今や各国で食べられているトマト、ジャガイモは、ヨーロッパを介して世界中に定着したと言われています。
勝さん「2010年には、フランス料理と同時にメキシコの食文化もユネスコ世界無形文化遺産に登録されました。スペイン人が入る前は、お肉もほとんど食べられていなくて、トウモロコシ、豆、様々なチレ(唐辛子)を多様に組み合わせた豊かな食生活でした(今は欧米の影響を受けて肥満率がUP)。」
木村さん「家庭料理や手作りのものを大切にする、長い歴史の中で深い食文化が育まれてきました。実はカカオの原産地もメキシコで、地方ごとにカカオを使った「モレ」と呼ばれる甘くない料理があります。
メキシコ料理といえば日本ではタコスやラップサンド、また辛い料理というイメージがあると思いますが、実際に辛いもの好きの人も多く、パイナップルやスイカなどの果物にもチリペッパーをかけるなど、日本とは違う食べ方をすることもあります。食文化は本当に面白いですよ!」
メキシコワインは14州で造られており、産地は北部に集中しています。バハカリフォルニア州が最大の産地で、地理的にも気候や土壌は、カルフォルニアに近い地中海性気候に属します。
品種はヨーロッパからもたらされた国際品種。
黒ぶどうなら、カベルネソーヴィニョン、メルロー、シラー、ネッビオーロ、テンプラニーリョ、ジンファンデルなど。白ぶどうなら、シャルドネ、シュナンブラン、ソーヴィニヨンブランなどが育てられています。
コロンブスによるアメリカ大陸到達の後、キリスト教の布教活動と共に、ワイン造りもヨーロッパから伝承されました。ワイン造りにおいて、メキシコはアメリカ大陸で最古の400年の歴史を誇ります。そこから中米を経て、カルフォルニアや南米に伝わったと言われています。
様々な国からの移民も多いため、例えばサンジョベーゼとテンプラニーリョをブレンドするなど、伝統国ではあまり見られない自由なスタイルのワインが生まれたりするのも特徴です。全体の傾向としては、果実味豊かなタイプのワインが多く、また手頃な価格であるのも魅力。タコスやスパイシーなメキシコ料理はもちろん、サラダ、スープ、パスタなどの料理とも、合わせやすいワインが造られています。
早速、メキシコ最大のワイナリー 『ラセット』 の赤ワイン2種を試してみました。
ラセットはイタリア北部トレントからの移民で4代目。国際コンクールの受賞歴は600回を超え、品質も高く評価されています。メキシコ国内でも流通していますが、世界市場に重点を置いているグローバルなワイナリーです。
アメリカの西海岸サンディエゴから車で2時間、アメリカとの国境近くの、グアダルーペヴァレーに広大なワイナリーを所有しています。ラセットはオーガニック栽培の認証こそ取ってはいませんが、自然なワイン造りにこだわっています。
先ずは、ジンファンデルです。
L.A. CETTO(ラセット) ジンファンデル 2016 参考小売価格1,397円(税込)
現地の表現ではハイビスカス。プラムや梅のようなニュアンスがあり、木村さんによれば、カルフォルニアよりも、どちらかと言うと、イタリアのプリミティーボのスタイルに近いかも?とのこと。
ジンファンデル特有の甘ったるい香りはどこへ行ったのか、爆発的に広がる黒系フルーツ香、ブルーベリージャム、インクやヨード香を感じます。
味わいはスパイシーで、酸もタンニンも中程度のふくよかな印象です。アルコールは程よいボリュームで、アフターにかけて、ダークチョコレートの風味。「まったり&まろやか」という言葉がぴったり!千円台と高コスパです。
木村さん「このワインは果実味が前面に出ていて、ローストポークに合わせても良いです。ワイナリーはトマトソースとのマリアージュもおすすめしていますよ」
続いては、ラセットのフラッグシップである、ネッビオーロ。
L.A. CETTO(ラセット) ネッビオーロ 2015 参考小売価格2,739円(税込)
ピエモンテ以外ではあまり造られることのない高貴品種の登場です。大振りのグラスで、高めの温度(16~18℃)で頂きます。
標高340~350m、昼夜の寒暖差がある畑でぶどうは育ちます。ワインにも美しい酸が感じられました。タンニンは滑らかでシルクのような舌触り。果実味のさり気ない主張。すーっと身体に下がっていくかのような、深味と落ち着きがあり、こちらもココアのような心地よいビター感で締め括られます。
合わせるお料理は、鴨、鹿などの赤身で、がっしりした味わいのお肉がおすすめだそう。ヴィンテージは2015年なので、今飲んでも、もう数年寝かせてもOKです。
メキシコを代表するワイナリーが手掛ける赤ワイン。この品質で、3,000円でお釣りがくるのですから買いです!味わい、価格どちらを取っても、超人気であることに納得です。
毎年の収穫祭では、ワイナリー内にある闘牛場でコンサートを開催するなど、大規模に行われますが、コロナ禍では世界中でメキシコワインが楽しまれている様子が動画で発信されました。
今後はメキシコ大使館の協力の下、日本でも試飲会やイベントを検討中です。また、「ワインを飲んでメキシコのブランド牛が当たる!」キャンペーンも5月末まで実施しています。
メキシコワインも今年はHOTに盛り上がりを見せそうな予感がします。大野はこの記事を書きながら、無性に辛いものが食べたくなったので、週末はタコスとメキシコワインで乾杯です!
それでは皆様、ごきげんよう!
365wine 大野みさき
スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
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