
2021年02月23日
年に何度か「鮭ブーム」が訪れます。買い込んで冷凍して、数日間「ひとり鮭パーティ」を繰り広げるのです。塩焼きにしたり、炊き込みご飯にしたり、キノコと一緒にホイル焼きにしたり。世の中には美味しい鮭レシピが溢れているので、飽きることはありません。鮭は自炊の強い味方です。
鮭料理にはたいてい日本酒を合わせます。人気テレビドラマ「ワカコ酒」シーズン1の第1話で鮭の塩焼きが登場した際、主人公の酒好き女子ワカコが「鮭にはお酒(日本酒)でしょ!」と強く主張していました。その意見には大賛成! 鮭と日本酒の組み合わせは絶対に裏切りません。
しかし先日、日本酒に負けず劣らず鮭との相性が抜群のワインに出会ってしまいました。なんと南米ブラジル生まれの白ワインです。Winomyのコラムでは何度か「 “意外” なワイン生産国」を取り上げてきましたが、ブラジルもまた多くの日本人にとって “意外” な国のひとつなのではないでしょうか。ブラジルワイン……気になりますよね。ね!?
今回はブラジルワインの基本をまとめつつ、おすすめ銘柄とおすすめ鮭ペアリングをご紹介します。
赤道直下の国ブラジルには「南国」「アマゾン(ジャングル)」「サンバ」「カーニバル」など、暑くて陽気でにぎやかなキーワードを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。ワイン造りが盛んといわれてもピンと来ないかもしれません。でも実際、ブラジルのワイン生産量は世界18位で、日本(世界25位)よりも上位にランクインしています。南半球に絞るとアルゼンチン、オーストラリア、チリ、南アフリカ、ニュージーランドといった世界有数のワイン生産国に次いで第6位です。
※OIV(国際ぶどう・ぶどう酒機構)2019年調査より
ブラジルのワイン造りには、約500年の歴史があるといわれます。大航海時代まっただなかの16世紀にポルトガル人がブドウの木を持ち込み、17世紀にスペイン系修道会がワイン用ブドウの品質向上に注力し、19世紀にイタリア移民たちが本格的にワイン造りをスタートさせました。つまり、ブドウ栽培やワイン造りの知見を持っていたヨーロッパ人たちがブラジルのワイン造りの礎を築いたのです。そのためカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、ピノ・ノワール、シャルドネ、リースリングなど、いわゆる国際品種と呼ばれる品種がよく栽培されています。
特にワイン造りが盛んに行われているのは、最南に位置するリオ・グランデ・ド・スル州です。ブラジルの国土は日本の約22倍。南北に長く、南極に近づくほど気温が下がります。北半球とは逆です。ポルトガル人たちが最初にブドウの木を植えたのはブラジル中南部のサンパウロ州のあたりですが、その後の歴史の中で徐々に南下。行き着いた先のリオ・グランデ・ド・スル州はアルゼンチンやウルグアイと国境を接し、ワイン造りに適した条件がそろっている比較的冷涼なエリアなのだとか。現在ブラジル産ワインの9割が、リオグランデ・ド・スル州で生産されています。
以前ウルグアイのワインについてレポートを書きましたが、この辺りで造られるワインは個性豊かで、色々と楽しみ方を工夫できる面白い銘柄がそろっています。
ちなみにリオ・グランデ・ド・スル州の緯度は南緯32°。九州の緯度は北緯32°。赤道を起点に考えると、だいたい九州と同じくらい離れている……ということになりますね。
ブラジルワインについて基本をおさえたところで、鮭に合うおすすめブラジルワインのご紹介です。
生みの親であるサルトン社は100年以上前に創業した、ブラジルの老舗ワイナリー。世界的なワインコンテストのタイトルも取っている実力派です。日本でも日本経済新聞社の「なんでもランキング」でサルトン社のワインが上位にランクイン。ブラジルでは来賓のおもてなしにも度々採用されているそうです。
今回ピックアップしたのは「フラワーズ」という名前の白ワイン。使われているブドウはモスカート種とマルヴァジア種です。モスカート種は「マスカット」の別名で、ワイン用としてはイタリア産が有名です。「ムスク」の香り(麝香鹿(ジャコウジカ)を連想させる、石鹸のような甘くパウダリーな香り)が特徴といわれます。マルヴァジア種はギリシャ原産の品種で、ふくよかで円みのある肉厚な味わいが特徴といわれます。この二つの品種がブレンドされているので、甘く豊かな香りと飲みごたえのある濃厚な味わいの力強いワインに仕上がっています。
パインやバナナのような、南国っぽいトロピカルな香りと蜂蜜のようなスイートな香りが混じり合い、食欲をそそります。ラベルに「demi-sec」(ドゥミ・セック)とありますが、これはシャンパーニュの甘辛度を表す用語です。意味は「半辛口」。甘味がやや強めなタイプであることがわかります。確かに一般的な辛口の白ワインに比べると少し強めですが、同じくらい酸味やミネラル感も強く感じ、全体的に濃い目にバランスが整っている印象です。どことなくスイス産の「シャスラ種」に似た味わいでした。よく冷やして飲むのに最適です。
お値段はプチプラの1,800円台!
「フラワーズ」に合う鮭の食べ方を二つご紹介します。
なんといっても王道の焼き鮭! 特に皮と身の境目の、脂が乗った部分がワインによく合うのです。ふくよかな味わいのワインなので、鮭の脂肪分とおだやかに調和し、口の中でクリーミーなハーモニーを奏でてくれます。塩味は濃いめにつけましょう。甘味の強いワインなので、合わせることで味醂干しにも似た風味を感じます。
大事なことなのでもう一回いいますが、「皮と身の境目の脂が乗った部分」がポイントです。皮目をパリッと焼いてワインに合わせたら、必ずや至福のマリアージュを体感できるはず。お試しあれ!
簡単だけれど革命的にワインに合う “鮭おつまみ” といえばこれ! 餃子の皮にチーズと鮭フレーク、ブラックペッパーをふってオーブントースターで焼いたおつまみピザです。ご紹介したブラジルワイン「フラワーズ」に劇的にマッチするので、試していただきたい……! 鮭フレークの甘味、チーズの塩味とまろやかさ、餃子の皮の香ばしさ、ブラックペッパーのスパイシーな香り、どれをとってもワインと合う要素しか見つからない、天才おつまみなのです。一度試したらきっとあなたもはまるはず。
ご紹介したワイン「フラワーズ」はこれからの季節、冷蔵庫でよく冷やして鮭とともに晩酌するのに最適です。
スクリューキャップなので手軽に開栓できます。開けたばかりはかすかに還元的な匂い(硫黄のような匂い)を感じましたが、開栓翌日には落ち着き、ワイン本来の味わいを楽しむことができました。気になる方は開けてから1〜2日ほどおいてみてくださいね。
吉田すだち ワインを愛するイラストレーター
都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定
ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
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