2022年05月04日

ワインを使って前代未聞の「ワイン糠漬け」に挑戦

皆様、こんにちは。インポーターの大野みさきです。

今日のコラムでは、ワイン愛が招いた奇想天外チャレンジ、 『ワイン糠漬け』 に挑みます。隠し味として大さじ1杯のビールを、糠床に入れる話はよく聞きます。赤ワイン200mlを惜しげもなく床に投入したのですから、糠床メーカーも、「その発想はなかったです。試したこともありません」と。前代未見聞の挑戦!失敗か、成功か、ワイン糠漬けのお味はいかに?物好きの方は、どうぞ最後までお付き合い下さいませ。

発酵食品

そもそも、何故、ワイン糠漬けをやってみたのか。元々、私は発酵食品を、作るのも食べるのも好きで、ザウワークラウト、ヨーグルト、お酢、パン酵母、しまいには納豆菌を増やすことに夢中になっていました。そうして、繁殖させた微生物を、生きたまま摂取(踊り食い?)と、表現が残酷ですが、その有難~い菌類の恩恵を受けてきました。

糠床にいるのは、ヨーグルトなどの動物性の乳酸菌ではなく、植物性の乳酸菌です。ワインに含まれる乳酸菌も植物性なので、きっと相性も良いのではないかと目論みます。そして、その糠床の乳酸菌とワインの菌類が、バトルになるのか、和平に持ち込むのかはわかりませんが、影響し合って何らかの良い影響が起こるに違いない!と鼻息を粗くさせました。それでは、行ってみましょう~!

ワイン糠漬け作り

いつもの作り方だと、糠と同量の水に塩を入れます。これをベースに昆布、鰹節、干し椎茸、煮干しなどの旨味の素材、それから殺菌効果のある唐辛子、実山椒などを混ぜ込んでいきます。更に捨て漬け野菜として、皮、芯、ヘタなどの野菜くずを加えて、2週間ほど時間をかけて乳酸菌を増やします。

 

今回は時短ということで、忙しい現代人には嬉しい、捨て漬け不要の糠床キット、NUKADOKO LIFEを活用しました。通常は750gの糠床の素に、付属の天然水500mlを入れてかき混ぜるところ、赤ワイン200ml+天然水300mlで試みます。飲み残したワインや、ずいぶん時間が経って味が落ちたワインを使うのが、無駄にならないのでGOODでしょう。混ぜるだけの手軽さ、簡単さが魅力です。

風味付けが目的ならワインは何でも良いのですが、菌の相乗効果を狙うなら、微生物が生きているワインがおすすめです。亜硫酸無添加ワイン、又はごく少量添加のワインとなるのですが、ここで紛らわしいのが、亜硫酸無添加と記載があっても、微生物が生きているとは限らないことです。というのも、酵母などの全ての菌を加熱処理し、殺菌したワインもあるからです。

ワインは生き物で、ボトル内でも緩やかに変化します。酵母は人間の目には見えませんが、15℃前後の温度ではひっそり潜んでいます。スタンバイ状態です。いざ発酵の環境が整えば、いつでも活動を開始します。

最も活発になるのが2530℃で、それ以上になると死滅します。適温でエサとなる残糖があれば、瓶内二次発酵を引き起こしてしまうのです。そんなワインが常温の棚に並ぶのは非常にリスクが高く、それを可能にしたのが加熱処理です。瓶詰前に6070℃の熱で菌を死滅させているので、それ以降は、熟成や菌の効果は見込めません。なので、生きたワインを使う方が、ワイン糠床には良いでしょう。

ワイン糠漬け完成

今回はニンジン、カブ、キュウリ、チーズを漬け込みました。チーズはスイスのグリエールチーズを使用。ナチュラルチーズなので、こちらも生きています。ワイン糠床にチーズを漬けるとは、我ながらナイスアイデアです!出来上がった糠漬けは、もちろんワインと頂きます。

さあ、頂きましょう。「えっ、格段に美味しいじゃん!」いつもの糠漬けより、旨味が増し、それから野菜の味も濃いと印象を受けます。コクがあって、キレイな酸味もあります。増し増し増しで、旨い!!頂いたワインは、糠床にINした飲み残しの赤ワインですが、糠漬けの塩味と旨味が後に引くので、その後のワインとも良い塩梅でした。

ニンジンはオーガニックなので、余すところなく皮ごと漬けました。野菜の甘味がワインの旨味を引き立てます。キュウリはアフターに糠の風味がはっきり表れて、その素朴な優しさがワインともよく合う。気になるのはチーズです。チーズはそれ自体に個性があるので、糠はそんなに主張がなく、むしろチーズの風味が鮮烈で、そんなフレーバーとコクが、ワインともバランスよく寄り添っていました。

糠漬けに合うのは・・・

他にワインを合わせるなら、ほんのり残糖のある赤・白・ロゼワインが、野菜の甘味とマッチングすることでしょう。浸透圧により水分が抜け、程よく凝縮感があるので、同じくジャミーで果実味が感じられるワインも◎。逆に極ドライなタイプは、ワインが置いていけぼりとなり、盛り上がりに欠けそうです。

糠床には残糖のある赤ワインを使いましたが、酵母感のあるスパークリングワインでもOK!また、漬ける食材は、新鮮な野菜なら何でも構わないのですが、糠漬けは素材の良さが顕著に表れるので、できればオーガニックで質の良いものをおすすめします。

変わりダネとしては、生カリフラワー、オクラ、芽キャベツ、アボカド、洋なし、りんご、魚の切り身、ゆで卵、ナッツ、チョコレート・・・・など。

今度、トライしてみようと思います。ふんわりワイン香る床、かき混ぜる日課、育てる楽しみも日々の生活を豊かにしてくれます。それでは皆様、ごきげんよう!


365wine 大野みさき

スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。

【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/

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