
2020年07月08日
皆様こんにちは、インポーターの大野みさきです。昨今、注目を集める、 『パープルワイン』 ワイングラスの薄紫がひときわ目を引く色合いで大人気なのだとか。本当にワインなの?どうやってこの色になるの?気になるお味は?今日は紫の秘密に迫ります。
お話を伺ったのは、ワイン輸入元Shizuku Japan株式会社の代表、原田康嗣さん(36)です。同社が他のインポーターと決定的に異なるのは、現地で飲食店とビール工場を経営し、またワイナリーとタッグを組み、商品開発をしているところ。同社の社長の経歴がパープルワインより面白かったので、先ずはそちらに触れたいと思います。
原田さんは大阪で修業し、和食の料理人として活躍されていました。魚屋で働いた経験もあり、鮪の解体もこなせる大の魚好きです。そんな原田さんが、オーストラリア移住を決めた時のことです。寿司を教えてくれた大将に、シーフードが盛んだからと、西海岸のパースをすすめられました。海辺の街なので、当然お刺身を期待していたのですが、現地では生魚を食べる習慣がなく、あっても冷凍で肩を落としたそうです。「でしたら自分が料理人として、刺身の魅力を伝えたい!」と決意。2015年、パースに日本料理店をオープンしました。
「その後、東海岸から空輸で魚を運んだり、地元の魚屋さんの協力を経たりして、今やパースでは美味しい刺身が、安定的に食べられるようになりました。刺身は完成したのだけれど、如何せん、日本のように和食に合うビールがないので、Shizuku Brewingというビールメーカーを立ち上げました」と原田さん。信じられますか?!異国でレストランをはじめ、それに合う飲み物を現地で開発するという斬新さ。
「和食、特に刺身に合うビールは、一言でいうと“クリスプ”です。端麗辛口でコクと旨味があり、香り豊かで後味にキレのあるビールを目指しました。キリン一番搾りの飲み口、サッポロエビスのキレ味、その両方を兼ね備えたビールができました。待望のシズクラガービールは、6月からの販売予定です」と。和食に合うビールは気になりますね!さて、お待たせしました、本題に戻りましょう。パープルワインは色も然りですが、生産者の物語にも魅せられた原田さん。ビール工場にワインを置きつつ、そこから日本への輸出も手掛けるようになりました。
西オーストラリアはワイン産地としてはマイナーで、国内ぶどう生産量は僅か2%に過ぎません。1820年の後半、イギリス移民がパースの北、スワンヴァレーでワイン造りをスタートさせたのが発端です。現在は南のマーガレットリヴァーやグレートサザンが中心となっています。比較的、高価格帯のワインが多く、そのクオリティから高い評価を得ています。
パープルワインこと 【パープル・レイン/Purple Reign】 この魅惑的なバイオレットカラーの正体はチョウマメ/蝶豆(英名: バタフライピー)、マメ科の植物です。開発者のふたり、ロスコとティムは、細胞学医療の研究をしていました。妻好みの亜硫酸を抑えたワインを造る過程で、チョウマメの色素を入れたところ、紫色になったのだとか。チョウマメを使用した目的は、アントシアニンの酸化抑制効果なので、結果的に亜硫酸の使用量も少なく済みました。加工助剤ではなく、原材料として使われているので、バックラベルにも“チョウマメ色素”と記載されています。
チョウマメの花はすみれ色で、デルフィニジン系色素の一種である、テルナチンが含まれていて、青い色素を持ちます。花茶、お菓子、タイでは布の染色にも使われる天然の色素です。チョウマメの色素が、ワインの酸で紫色になったのが、パープルワインです。試しにチョウマメ茶にレモンを絞ると、クエン酸に反応し紫に色変しました。PH値により反応が異なるため、当初はピンク(=ロゼワイン)や赤(=赤ワイン)のようになったそうです。ソーヴィニョンブラン主体で、セミヨン、シャルドネのブレンド比率を工夫するなどして、現在の絶妙なパープルカラーが生まれました。「色味の調節はしますが、年によっては若干、色合いが違うので、それを楽しむのも良いかもしれません」と原田さん。
気になるお味ですが、見た目が最大のウリなので、中身は大したことないだろうと思いきや、良い意味でその期待を裏切られました。辛口ですっきりとした飲みやすい白ワインです。通に出しても恥ずかしくないワインとして、太刀打ちできるクオリティです。品種の特徴がよく出ているので、ソーヴィニヨンブラン好きにはもってこい!ロワールやニュージーランドと比較してみるのも一興です。やや冷やし気味でスタートするのが◎、チョウマメの酸化防止の効果で、抜栓後は1週間ぐらいの日持ちも可能なのだとか。
パープルワインのスパークリングもあります。他には、赤のスパークリングワイン、あるいはジョージア産のやや甘口のブルーワインなど、カラー豊かなワインも取り扱っています。原田さんがバーテンダーでカクテルを提供していた視点から、人工物不使用で、ぶどうの皮の抽出物だけで、身体に優しいものができないかと模索。ご自身の経験を商品開発や選定に活かしています。
魚好きが高じ、お刺身を食べる文化がないところに、新しい風を吹かせました。ビールを開発して、ワイナリーと一丸となり開発やプロモーションに取り組む姿勢。まるでワイン業界の革命者、将来のスティーブ・ジョブズを彷彿とさせます。あっ、そう言えば、日本の総理大臣になりたい!と原田さんが意気込んでいました。あながち不可能ではない気がします。それでは皆様、ごきんげんよう。
■本日のワイン
MASSTENGOパープル・レイン
4,000円(4,400円)
https://shizukujapan.thebase.in/items/27037747
女神のジャッジメント。天秤でぶどうとチョウマメのバランスが取れているのを女神がチラ見。遊び心のあるエチエット。
■パースの日本食レストランの名前
D’s Authentic Japanese
365wine 大野みさき
スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/