2022年06月01日

韓国料理に合うフランスワイン2選

日が長くなり少しずつ気温が上がってきました。季節は初夏。お散歩が気持ちいい季節です。昨年、一昨年の引きこもり期間を取り戻すように、暇を見つけてはてくてく街中散策をしています。

都内を歩いていてふと気づくのは、韓国料理店の多さ! コロナ禍前よりだいぶ増えました。東京だけの話ではなく、大阪の梅田でも韓国料理店が激増していると聞きます。韓国料理の素直な味付けは幅広い層に受け入れられやすいし、使う食材の原価も割安でお店側にとっても嬉しい形態です。それに加えて最近は、若年層を中心に韓国料理ブームがわきおこっているのだとか。ステイホーム期間中に韓流ドラマを観たりハイクオリティなK-POPに触れたりすることで、食を含む韓国文化全般への関心がひときわ高まっているのだそうです。

今回は、そんな韓流 “食” ブームにのっかって「韓国料理に合うワイン」をご紹介します。ただ、韓国料理といっても様々な種類があって、単純に「韓国料理にはこのワイン」と決め打ちするのは難しいのが正直なところ……。そこで、韓国料理をざっくり、本当に超ざっくり2種類に分けてそれぞれに合うおすすめワインを1本ずつ厳選してみました。その一「辛い韓国料理」、その二「辛くない韓国料理」です。

その一:辛い韓国料理 × アルザスの白ワイン

辛い韓国料理の筆頭といえば「キムチ」! ですが、今回とりあげたいのは「トッポギ」です。

うー! 見るからに辛そうですね! これで辛くなかったら驚きます。誰が見ても辛いビジュアルのトッポギは、長い円筒状の餅を甘辛く煮込んだ韓国料理です。餅(=トク)を炒める(=ポギ)から「トッポギ」というのだそう。コチュジャン、醤油、砂糖、ニンニクなどを使って味付けします。コチュジャンが味の決め手、コチュジャンを味わうための料理。そういっても過言ではないくらい、コチュジャンが重要な役割を担っています。ちなみにコチュジャンとは、米やもち米を麹で糖化させ、唐辛子を加えて熟成させた発酵調味料です。つまりトッポギは「お米と唐辛子を味わう甘辛料理」といえますね。

お店によって味付けに多少の違いはありますが、トッポギはとっても辛い! 辛いもの好きな人にとってはたまらない食べ物です。辛いものとワインのペアリングは難しいといわれます。繊細なワインの味わいが力強い辛味に打ち消されてしまうからです。辛いものにも負けない力強い骨格とワインならではの詩的な複雑さを兼ね備えた “文武両道ワイン” が理想なのですが、そんなワインが……あります。

キュヴェ・エピス(2019年)

「テール・デトワール」というワイナリーが手がける「キュヴェ・エピス」。フランス、アルザス地方の白ワインです。こちらのワイナリーは日本人の女性とフランス人の男性のご夫婦で営まれています。「アジア・エスニック料理に合うアルザスワイン」を追究した結果、「キュヴェ・エピス」に辿り着いたのだとか。

ゲヴュルツトラミネール種のブドウを主体に、ピノ・グリとピノ・ブランがブレンドされています。以前こちらの記事でご紹介したように、ライチや花、スパイスなどの芳しい香りが特徴のゲヴュルツトラミネールはエキゾチックなアジア料理にとてもよく合います。同居するピノ・グリはワインに厚みと骨格をあたえ、ピノ・ブランはフルーティな爽やかさとコクをプラスします。3種のブドウが一体となり、複雑で華やか、それでいてしっかりしたボディを併せ持つ “文武両道ワイン” を形作っているわけです。お見事!

「エピス(épicé)」はフランス語で「辛い」という意味。その名の通り、アジア料理で使われる香辛料にマッチする味わいです。ラベルの「香味」の文字にも、そんなワインの “パーソナリティ” が表れているようですね。

その他のおすすめ料理
唐辛子を感じる辛い料理にピッタリです。韓国料理の「ユッケジャン」(牛肉と野菜をコチュジャンを使ってピリ辛に煮たスープ)にベストマッチ! また、チーズをかけたトッポギや、甘辛味のチーズタッカルビに合わせるのもおすすめ。ワインの骨格がしっかりしているので、濃厚なチーズの風味にもよく合います。

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辛くない韓国料理 × ロワールのスパークリング・ロゼワイン

定番の「ナムル」、韓国風海苔巻き「キンパ」、優しい味わいの「参鶏湯」……。韓国には辛くない料理もたくさんあります。ここでとりあげたいのは「チャプチェ」です。

チャプチェもまた、伝統的な韓国料理のひとつ。韓国春雨に牛肉、キノコ、にんじんなどの彩豊かな野菜をまぜて、甘辛く味付けした炒め物です。漢字で書くと「雑菜」。おかず(=菜(チェ))を混ぜ合わせる(=雑(チャプ))という意味です。チャプチェの醍醐味はなんといっても、お肉やキノコ、野菜の旨味がじゅわ〜と溶け出たスープをたっぷり吸った春雨! 辛味の代わりに素材の旨味を引き立てるのはごま油とニンニクの芳しい香り……。ああ、おなかすいた。

チャプチェには “韓国風すき焼き” のような印象があります。味付けもすき焼きっぽくないですか。こちらの記事でもご紹介したように、すき焼き風の甘い味付けには甘味のあるワインを合わせるのがおすすめです。それに加えてごま油とニンニクの風味に負けない要素が必要です。

Ze Bulle(ザ・ビュル)

ベレ・エ・コンパニ」というワイナリーが造る「ザ・ビュル」。フランスのロワール地方の、微発泡ロゼワインです。まるでグレナデンシロップのようなとっても綺麗なピンク色をした、キュートでポップな1本。ラベルに描かれたシャボン玉のイラストがまた、ワインのイメージに合っていてお洒落です。

スパークリングワインには様々な製法がありますが、ここで取り上げたワイン「ザ・ビュル」は「炭酸ガス注入方式」で造られています。発酵が終わった非発泡ワインに炭酸ガスを注入してスパークリングワインに仕立て上げる製法です。ローコストなため、カジュアルな大量消費用のワインに用いられます。それだけを聞くとありふれたワインに感じてしまいますが……調べるとなんとも独特な造り方をしているようなのです。なんでも、「発酵時に発生するガスとアロマを抽出し、瓶詰め時にワインに合有させ発泡」させているのだとか。糖分や酵母の添加もなく、泡も香りも味わいもすべてブドウ由来の天然づくり。こんな造り方、初めて耳にしました。いい意味で炭酸ガス注入方式のメリットを全然生かしていない……(笑)。いやはや、面白いワインです。

ベリー系の香りとフローラルな香りがふわっと漂い、口に含むと優しいしゅわしゅわが弾けます。そして広がる、ツツジの花の蜜のような、フローラルな甘さ……この “花の蜜のような甘さ” が甘辛味のチャプチェとよく合うんです。カベルネ・フラン種由来の “ピーマン” のような香気成分とグロロー種由来の柔らかいタンニンが牛肉やきのこ、パプリカ、ごま油、ニンニクなどの風味にピタっと寄り添います。箸が止まりません。

その他のおすすめ料理
甘辛いたれに漬けて下味を付けた牛肉を焼いて調理する韓国料理プルコギ」もおすすめ! 「ザ・ビュル」に合わせるなら辛すぎないピリ辛くらいの味加減がちょうどいいと思います。韓国料理からは離れてしまいますが、キノコや牛肉、野菜の風味によく合うワインなので、「チンジャオロースー」にもぜひ

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吉田すだち ワインを愛するイラストレーター

都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
【HP】https://yoshidasudachi.com/
【instagram】https://www.instagram.com/yoshidasudachi

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