
2022年10月01日
最近では、南アフリカのワインをスーパーやコンビニでも見かけることがあります。そして、チリやオーストラリアなどに続いて、コストパフォーマンスが高いと評価も上がっている南アフリカワイン!この記事では、南アフリカワインの特徴や歴史、主な産地、おすすめの銘柄などをソムリエがご紹介していきます。南アフリカの素晴らしさを、実感しながらワインを飲んでみてください。
南アフリカでは「南アフリカワイン協会」によって、自然環境保護とワイン産業の共栄というコンセプトを掲げており、世界でもっとも環境に配慮したワイン生産国とも呼ばれています。1998年には、減農薬や減酸化防止剤、リサイクルの徹底などが入った制定を作り、現在では95%以上がこのガイドラインにしたがってワイン造りをしていますよ。
また、最近ではよく耳にする「サスティナブルなワイン造り」を実践し、南アフリカでは世界で初めて2010年ヴィンテージからサステナビリティを保護するシールを採用しました。認証を受けるためには、たとえば「化学肥料の使用を極力控え、農場では害虫の天敵を取り入れる」「世界有数の豊かな植物区の生物多様性を保護する」「廃水を浄化する」などの項目を、3年ごとに審査を受けクリアしなくてはいけません。
ほかにも、自然環境やブドウにとってやさしい基準や項目が南アフリカにはたくさん存在します。このように、ナチュラルなワイン造りだけでなく、南アフリカ全体の自然環境にも気を配った素晴らしい生産地なのです。
南アフリカの独自のワインとして「ピノタージュ」という品種があります。ピノタージュは、赤ワイン用のブドウ品種(黒ブドウ)。フランス・ブルゴーニュ地方で生産量が多いピノ・ノワールと南仏でよく栽培されているサンソーの交配種です。ピノ・ノワールのようなエレガントさと爽やかな酸味を感じつつ、サンソーのようなフレッシュな赤い果実味も楽しめる、おいしいブドウ品種ですよ。南アフリカワインを飲むときは、まずピノタージュを探してみましょう。
2002年に、労働環境を改善する目的で「ワイン産業倫理貿易協会」が設立されました。たとえば、黒人の経済活動や雇用条件の改善などを実施しています。また、2012年には、ワイン&スピリッツ常任委員会と南アフリカワイン協会が共同で、自然環境の保護だけでなく、品質保証、労働環境整備を満たす協定を定めました。これによって、ボトルに新しい認証シールが運用され、より南アフリカワインが注目を浴びています。
また、サステナブルの一環でもあるフェアトレード(途上国の方がよりよい暮らしをできるように、正当な価格でものを売り買いすることができるようになることを目指すための活動)をワイン業界でも「フェアトレードワイン」として取り組んでます。2016年には、フェアトレードワインのうち南アフリカワインが2/3を締めていました。このように、おいしい南アフリカワインを持続的に飲むことができるように、南アフリカでは労働環境も整えているのです。
南アフリカで、ブドウの栽培を始めたのが1655年のこと。そしてワインが、初めて造られた日のは、1659年2月2日でした。ケープタウン最初の総領事であったヤン・ファン・リーベックが「ケープのブドウから最初のワインが造られた」と記録しています。
1726年には、甘口ワインの輸出がスタートし、ヨーロッパの貴族の間では「コンスタンシアワイン」と呼ばれ大人気だったんです。19世紀前半には、ケープ植民地は英国の領地となり、フランスとイギリスの戦争が始まったことをきっかけに、イギリスでは南アフリカワインの消費が増えていきました。しかし、英仏関係が修復したことや、フィロキセラの被害により、南アフリカのワイン業界は大きな打撃を受けます。
さまざまな苦悩の時代を乗り越え、1981年には、ブドウの最低価格保証や農家を守ると共に、需要整備を行なった「南アフリカワインぶどう栽培者協同組合」を発足。ケープのワイン産業が健全に発展するようことを目的に、スタートしました。
1925年には、ステレンボッシュ大学のアブラハム・ペロード博士が南アフリカの代表的なブドウ品種である「ピノタージュ」を誕生させ。1959年には、シュナン・ブランを使用したフルーティーで飲みやすいセミスイートワインが大人気に。国内消費量も増加し、国際ブドウ品種(カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネ、シラーなど)の生産も進みました。現在では、南アフリカでも小規模なワイナリーも増え、国際的な評価も高くなってきていますよ。
南アフリカの中で、ケープタウンに続いて2番目に古い街です。街の名前の由来であるオークの樹が並ぶ場所では、カフェやワインバーなどおしゃれな空間が広がっていますよ。ステレンボッシュは、ワインの醸造や栽培などを学べる大学あったりと、ワイン醸造家や研究者たちが集まるところ。1971年には、南アフリカ初のワインルートが設立され、西ケープ州最大の観光地にもなっていますよ。
土壌や気候は、ワイン栽培に適しており、南アフリカ最大のブドウ産地になっています。現在では、伝統的なワイナリーから近代的なワイナリーまでさまざまな造り手が200以上ひしめきあっているんですよ。ワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンやピノタージュなど赤ワイン用のブドウが多く栽培され、白ワインは最近ではソーヴィニヨン・ブランも造られています。
西ケープ州最大の地区。主に穀物が栽培されていた土地が多く、ベルク川の土手沿いの丘陵地にブドウ畑が広がっています。フルボディタイプの赤ワインや酒精強化ワインが有名ですが、シュナン・ブランや地中海ブレンドの赤白ワインも造られていますよ。
赤ワイン用のブドウ品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、ピノタージュなど。白ワイン用のブドウ品種は、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランなどの栽培も増えてきています。
フランシュック地区は、フランス人の移民が多く、フランスの影響が残る町並みです。フランシュック地区は、多種多様なブドウ品種が栽培されているのも特徴的。もっとも多いのは、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、セミヨンなどの国際白ブドウ品種です。赤ワイン用のブドウ品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、メルロが多いですよ。
また、瓶内二次発酵で造られるスパークリングワイン「キャップ・クラシック」の産地としても有名です。
ホエール・ウォッチングで有名な海辺の町、ハーマナスやスタンフォードの街を含む地区。冷たい海風が入ってくるところが特徴的で、冷涼な気候の産地です。ブドウ品種は、シュナン・ブラン、ピノタージュ、ローヌ品種も多く植えられています。
さらに、3つの小地区である「ヘメル・アン・アード・リッジ」「ヘメル・アン・アード・ヴァレー」「アッパーヘメル・アン・アード・ヴァレー」は、高品質なシャルドネやピノ・ノワール、ピノタージュなどを生産していますよ。
冷涼な気候が特徴的なエルギン地区。長らく果実の中でもリンゴが多く生産されていました。「アップルタイザー」の工場があることでも有名です。冷涼な気候と、昼夜の気温の温度差があるため、ブドウはゆっくり熟し、エレガントで果実味豊かなワインが造られます。とくに、シャルドネやリースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワールなどの評価が高いですよ。また、小規模なワイナリーが多いことも特徴的です。
南アフリカワインの歴史で、ヨーロッパ貴族の中で大ヒットした「コンスタンスワイン」。ヴァン・ド・コンスタンスは、ミュスカ・ド・フロンティニャンというブドウ品種をつ使用した甘口のデザートワインです。ナポレオンが愛したともいう伝説を持つ、凄いワインなんですよ。オレンジやマーマレードジャムなどの風味を持ち、バニラやドライマンゴーのような複雑さも感じ、甘味と酸味と少しの苦味をバランスよく楽しめる一本です。
またクレイン・コンスタンシアは、1685年に設立され南アフリカのワインの歴史と近いことから、南アフリカのワイン業界を支えていたことが分かります。場所は、コンスタンシアバーグの丘の上にあり、世界一うつくしいと絶賛されているワイナリーでもありますよ。
世界的にも数々の賞を受賞しているカノンコップ。その中でも、ブラック・ラベル・ピノタージュは、最高峰のピノタージュとも言われています。樹齢64年のピノタージュを100%使用し、フレンチオーク樽でじっくり熟成させて造られている一本。
ピノタージュの、繊細でエレガントな口当たりと、フルーティーで果実味豊かな味わいが、しっかり楽しめます。また、上質なピノタージュのみを使用していることで、旨味やコク、余韻もとても長く感じられますよ。熟成も期待できる、南アフリカワインおすすめの商品です。
南アフリカで一番栽培されている白ブドウ品種、シュナン・ブランを使用したおいしい一本。クライン・ザルゼ・ワインズは、ステレンボッシュの老舗ワイナリーです。ワイナリーの敷地内には、レストラン、テイスティングバー、宿泊施設などがあり、とても素敵な空間なんですよ。
ヴィンヤード・セレクションは、真ん中のランクのワイン。シュナン・ブランは、スッキリとした酸味の中に、ハチミツやフルーティーな柑橘系の果実を感じます。余韻も長く、複雑な味わいなので、爽やかな味わいですが、コクもしっかり楽しめますよ。
南アフリカワインの歴史に大きな影響を与えたワイナリーKWVが手掛ける、奥深いおいしい一本。ピノタージュを100%で造られるので、初めてピノタージュを飲む方にはぴったりです。1,000円台で買え、コストパフォーマンス抜群なところも嬉しいポイントですよ。赤い果実味が広がり、樽由来のバニラやスモーキーな風味も楽しめます。ピノタージュをじっくり味わってみたい方に、おすすめですよ。
フランシュックにワイナリーを構えるレオパーズ・リープ。力強く飲みごたえのある泡立ちがあり、柑橘系のレモンやライムのような爽やかでフルーティーな味わいを楽しめます。スッキリとした切れのある味わいですが、モモやメロン、トロピカルフルーツなどの雰囲気も感じられるので飲みやすいですよ。魚介のカルパッチョやアクアパッツァなどの、お魚料理と相性抜群です。
南アフリカのワインは安いから飲んでる、コストパフォーマンスがいいから好き、という方もいると思います。しかし、ワインや環境、造り方へのこだわりなどを、知ってから飲んでみると、またさらにおいしく感じるのではないでしょうか。またヨーロッパのワインより、価格も手頃なものが多いので、購入しやすいですよね。いつも買っているワインではなく、南アフリカのワインにも注目して、じっくり味わってみてくださいね。南アフリカの、ワイナリーの風を感じられるかもしれませんよ。
ソムリエ・チーズプロフェッショナル /
YURI
資格:J.S.A.ソムリエ、C.P.A.認定チーズプロフェッショナル、食生活アドバイザー3級。『もっと楽しく、もっと気軽に、もっとおいしく!』をモットーに誰でもワインとチーズを気軽に楽しめるようアドバイスを発信中!ワインの輸入会社、レストラン、料理教室運営などを経験したのち、現在はフリーランスのソムリエ・チーズプロフェッショナルとして活動中。主にワイン・チーズ教室やブログ、ライターにてワインやチーズ・マリアージュなどの楽しみ方を伝えています。
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