2022年06月22日

【造り手インタビュー】梅雨と向き合うワイナリー「木谷ワイン」 

皆様こんにちは、インポーターの大野みさきです。66日に関東甲信地方の梅雨入りが発表されました。アウトドアの予定が立てられなかったり、湿気でヘアセットが上手くいかなかったり、カビが生えやすくなったりと、我々を悩ませるレイニーシーズンの到来です。

ワイン造りにおいてのスポットライトは、収穫→仕込みの期に当たることが多いのですが、この6月の時期も、新梢の誘引、傘掛け、花カスの除去、摘芯の作業で大忙しなのだとか。今回はワイナリーに梅雨との向き合い方を聞いてみました。「仕方がないです」と語るのは、KITANI WINEの木谷一登さん。奈良で初のワイナリーを始め、現在、醸造施設の建設工事も順調に進み、6月末には完成予定です。

前回の関連の記事はこちらからどうぞ。

【造り手インタビュー】奈良の新生ワイナリー「木谷ワイン」https://www.winomy.jp/blog/column/30706/

梅雨との向き合い方

ズバリ、「神頼み」だそうです。それもそのはず、天候は人間がコントロールできません。梅雨は不可抗力、ジタバタ騒いでも仕方がないのです。畑仕事をする上で、梅雨だと何が大変なのか聞いてみました。「ベト病などの病気。その対処としてボルドー液(銅剤)を使っています。化学農薬のように浸透移行性(葉に染み込んで全体に効く)がなく、散布した箇所にしか効果がないです。ぶどうの成長と共に効果も薄れていくので、散布のタイミングが難しいです。雨の直前に的確に打つ(=撒く)、あるいは前回の散布からの経過時間などで、散布のタイミングを図っています」と木谷さん。ボルドー液を撒くだけでなく、散布までに誘引や草刈りも、終わらせておく必要があると仰っていました。畑仕事の“厳しさ”、そして“一連の繋がり”が垣間見られました。

毎日、Yahoo天気予報と睨めっこして作業の予定を立ているそう。「天気も変わりやすいので、1週間先の予定も立てられないです。週内の予定をその都度立てるイメージです」天気、天候に左右されるのがぶどう栽培です。特に6月は畑に専念し、ベト病に感染した部分を取り除いたり、他に広がらないよう手を打ったり、できることを着実にこなします。

「西日本の大きなワイナリーはしているであろう、ビニール被覆による雨よけもしません。雨や風の刺激が葉に伝わり、より果実に栄養が送られるホルモン状態になるのではないかと考えるからです。僕は梅雨でも安定よりリスクを取ります」と語ります。

毎年80点じゃなくて、10年に1度でもいいから100点を取りたいです。ワインをアートや自己表現としているので、80点で喜ばれるより、不確定要素を逆に楽しみとして満点を目指します」 “雨よけ”ひとつとっても、彼のブレない一貫した信念が感じられました。

日本特有の雨季は、ぶどうが地中から水分をたっぷりと吸い上げます。水は果実を肥大させます。そのため果粒が大きく、ジューシーでワイン造りには向かないぶどうが出来上がります。そんなハンデを背負いながらも、海外と比べて雨の多い日本は多様な菌が多く畑に生息していて、それらがワインに影響を及ぼしていると言うのです。「畑によって菌の種類が異なり、僕の畑ではビニールを張っている畑の菌は強く、雨ざらしの畑の菌は優しく発酵します。雨で流されるのか菌同士が拮抗(きっこう)しているのかわからないですが、発酵の仕方にもその時期の雨が関係しているのではないかな?と体感しています」と仰っていました。

また、「今年の醸造から温度管理が徹底でき、衛生管理もできる醸造所になり、今まで試験的だった酸化のニュアンスがあるワインにも、本格的に取り組めます。醸造温度を低くキープし、アロマティックな白ワインも造ろうと思います」と新ワイナリーの抱負も話して下さいました。

最後に

2ヶ月先は、青デラ(早摘みのデラウエア)の収穫がはじまります。2022年のワイン造りも、もうそこです。収穫期の次に多忙な時に、二つ返事で取材を受けて下さった木谷さん。あまり梅雨のワイナリーがフォーカスされることはありませんが、来たる実りの前に、丹精込めてその準備に勤しんでいるような印象を受けました。ワイナリーのバックヤードは、普段は消費者が目にすることのない部分です。しかし、それを知ることにより、造り手への尊敬と感謝、またワインの愛おしさ増大に繋がればと思います。それでは皆様、ごきげんよう!

「木谷ワイン」https://narawine.com/


365wine 大野みさき

ANA国際線CA7年の在職中にワインに魅せられ、その後は渡仏しワインの勉強をする。2014年に帰国し、翌月にワイン輸入会社365wine株式会社を設立。365(毎日)ワインを楽しんでもらいたいという想いからの社名。スロヴェニアワイン専門のインポーター。現在はママさんスタッフを含め3名で、買い付けから輸入販売、全国の業務店営業やイベントで、スロヴェニアの魅力を各地に広める活動をする。「貴方と大切な方の毎日を笑顔にします!」をモットーに、一緒に働いてくれる仲間を募集中!
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/

この記事をSNSでシェアする