2022年07月03日

ワインの澱(おり)とは?おいしく飲める方法をソムリエが伝授

ワインを飲んでいるときに、ザラッとしたものや黒い塊が入っていた。そんな事ありませんか?それは、ワイン特有の「澱」というものなんです。この記事では、澱について体に害はないのか、澱が多いワイン、おいしく飲む方法などを、ソムリエが伝授していきます。澱があると飲みたくなくなる方もいると思いますが、上手に向き合えばおいしくワインを飲むことができるんですよ。ぜひ、試してみてくださいね。

ワインの澱(おり)とは?

赤白ロゼワインが並ぶ
iStock.com/5PH

ワインの澱とは、渋味成分であるタンニンと、色素成分であるポリフェノールやタンパク質などが結合してできた塊。ワインは、熟成を経て変化していくお酒です。ボトリングされて、すぐのワインは、渋味成分と色素成分は結合せずワインの中に溶け込んでいます。しかし、時が経つごとに、成分同士が結合して黒いザラッとした塊になるのです。

また、熟成をしていないワインでも澱があるものもあります。これは、ワインの醸造工程でおこなわれる「濾過・清澄」をせず、自然なワインを造っている場合です。自然派ワインの造り手は、「濾過・清澄」の工程をせずに、ブドウそのもの風味を大切にして造り手も多くいるのですよ。したがって、澱は熟成をしたワインや醸造工程で濾過や清澄をしていないワインにできることがあります。

澱を飲んでも大丈夫?

澱は、ワインの成分が結合しただけなので、飲んでしまっても体に害はありません。しかし、舌触りが悪くなるため、好んで飲むことはなしでしょう。また、熟成によってできた澱ではなく、自然派ワインの澱は、あえてワインと一緒に飲むこともあります。そうすると、風味が変わっておいしく飲めることもあるんですよ。

白ワインに澱はあるの?

澱は、赤ワインやロゼワインが造られる黒ブドウの成分によって黒い塊ができます。したがって、白ワインには、澱は存在しません(赤ワイン用のブドウをブレンドしている場合は、澱が出る可能性はあります)。

しかし、白ワインにも白い結晶のようなものが、瓶底に溜まっていることがあります。これは、「酒石」といって酒石酸と、ミネラル分であるカリウムが結合した結晶。キラキラしており、ワインラバーの中は、旨味の塊とも呼ばれ入っていると喜ばれることもありますよ。

澱が多いワインとは

古いワインがセラーに眠る
iStock.com/porpeller

熟成によって澱が生まれやすいワインは、渋味成分であるタンニンや色素成分であるポリフェノールなどが多く入っているものです。たとえば、タンニンの多いカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどのブレンド比率が多いほうが、熟成によって澱ができやすくなります。

また、同じブドウ品種でも産地によってブドウの味わいは変わってくるんです。フランス・ボルドー地方のカベルネ・ソーヴィニヨンと、チリもカベルネ・ソーヴィニヨンでは、ボルドー地方のカベルネ・ソーヴィニヨンの方が渋味をより強く感じます。したがって、どちらも澱はでますが、フランス・ボルドー地方産のものの方が多く出る傾向にありますよ。

ワインを長期熟成することで、どのブドウ品種も多少の澱は出てきます。しかし、澱が多くでてこないワインを熟成したい場合には、タンニンがマイルドなワインを選ぶといいですよ。

おいしく飲む方法

1 .飲む前に澱を下げておく

澱は、ワインの中で浮遊しています。ワインをおいしく飲むには、なるべく澱とワインを混ぜないことが重要です。澱を沈殿させておくために、飲む予定の1週間前頃にはボトルを立てて保管しましょう。保管する際は、ワインセラー内で立たせておくことができれば一番。むずかしい場合は、日が差さない場所で、涼しく、湿度が高すぎず低すぎないところを探してみてください。もし、レストランで飲む場合は、事前にお店に預けておくのがおすすめですよ。

2 .パニエを使う

パニエとは、ワインを注ぐために使う道具。澱があるワインを注ぐときは、ワインと澱が混ざらないように、ワインボトルを動かしたくないです。そこで、パニエというボトルを寝かせておけるかごのような道具を使ってみましょう。パニエを使用することで、ワインボトル大きく動かさずに、あまり澱が舞うことなく注げ飲むことができます。使用していないときも、インテリアとして、空のワインボトルを入れて飾っても可愛いので、おすすめの道具です。

3 .ゆっくり注ぐ

上記でもご紹介してきましたが、おいしくワインを飲むためにはワインと澱を混ぜないことが大切です。ワインを注ぐ動作を小さく、そしてゆっくりしてあげましょう。そうすることで、少しでも澱がワイン中に舞うことを防ぎます。パニエやデキャンタなどの道具がない場合は、とにかくゆっくり丁寧に注ぎましょう。また、注ぎ終わった後に、勢いよくボトルを立てに戻すのもNGです。すべての動作を、ゆっくり丁寧にしてあげましょう。

澱を除去するには?

ソムリエがオリを取り除いている
iStock.com/photographer

澱は、デキャンタを使用することで取り除けますよ。しかし、注意点が2つあります。1つ目は、ワインボトルを、1週間ほど立てて保管し澱を沈殿させておくこと。2つ目は、デキャンタージュをすることで、酸化のスピードも早くなります。大人数で飲むときや、すぐ飲み切れる状況のときのみ使用することにしましょう。

デキャンタージュするときには、デキャンタ以外にボトルを照らすライトを用意しておくと便利ですよ。ワインをこぼしてしまう不安のある方は、シンクやキッチンでおこないましょう。まず、デキャンタを左手に持ち、ワインボトルをゆっくり右手に持ちます。デキャンタの注ぎ口とワインボトルの注ぎ口を合わせ少しずつ注いでいきますよ。そのときに、ワインボトルの首辺りを、下からライトで照らすと澱がよく見ます。澱が見えてきたら、デキャンタに入らないようにして、デキャンタージュ終了です。

ポイントは、一気にデキャンタージュすること。一度注ぎ始めたら、止めずに最後までやりきりましょう。せっかく澱を沈殿させていたのに、何度もボトルを動かくすことで、澱がワイン中に舞ってしまうからです。ちなみに、何日かに分けて飲まれる方は、今日飲む分だけデキャンタージュするのもいいですよ。

ワインの澱を、上手に取り除いて飲んでみましょう!

澱は、体に害はありません。しかし、飲み心地や口当たりは、ザラッとしていてあまりいいものではありません。できることなら、上記でご紹介した「おいしく飲む方法」を実践してみてください。ボトルを立てておくだけで、澱を格段に感じにくくなりますよ。長期熟成することでできる、ワイン特有の澱という塊。熟成したからこそ、楽しめるものでもあります。澱があるから飲むのが億劫と思わず、歴史を感じる澱を楽しんで熟成ワインを飲んでみてくださいね。

私が執筆しました!

YURI
ソムリエ・チーズプロフェッショナル / YURI
資格:J.S.A.ソムリエ、C.P.A.認定チーズプロフェッショナル、食生活アドバイザー3級。『もっと楽しく、もっと気軽に、もっとおいしく!』をモットーに誰でもワインとチーズを気軽に楽しめるようアドバイスを発信中!ワインの輸入会社、レストラン、料理教室運営などを経験したのち、現在はフリーランスのソムリエ・チーズプロフェッショナルとして活動中。主にワイン・チーズ教室やブログ、ライターにてワインやチーズ・マリアージュなどの楽しみ方を伝えています。
【ブログ】ソムリエールYURIのちょこっとMEMO
【twitter】https://twitter.com/YURI06927640
【instagram】https://www.instagram.com/yuri.winetocheese

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