
2020年07月08日
皆様こんにちは、インポーターの大野みさきです。世界中の誰もが知っている、最も有名で高価なワイン “ロマネ・コンティ”皆が一目を置くワインです。DRCの故郷はヴォ―ヌ・ロマネ村。同村の“ドメーヌ・デュ・コント・リジェ・ベレール”も、ロマネ・コンティとその偉大さでは肩を並べます。
その昔、パリでリジェ・ベレールの試飲会に参加したことがあります。掘っ立て小屋のようなスモールスペースに、4生産者がぎゅうぎゅうに押し込まれていて、その一つが、リジェ・ベレールでした。赤ワイン2種類を試飲させて頂き(もちろんお代わりしました!) その桁外れのクオリティに言葉を失い、ただひたすらに頷いていた記憶です。リジェ・ベレールのワインは、安くても3~4万円から。それこそ、ラ・ロマネなどの畑名やヴィンテージによっては、100万円以上もする高価なワインです。
そんな高級ワインは国境を越えて取引されます。投資の対象にもなっており、偽物もたくさん出回っています。真偽はワインの専門性を有する鑑定の仕事になりますが、その人数は少なく、日々、巧妙化する偽造の手口。欧州委員会の発表では、近年ヨーロッパとモルドバで421,000本の偽造ワインが押収されたと報告が上がっています。ワインの偽造では、国際的なワイン取引の20%が影響を受けているとも言われます。偽造が厄介だと言われるのは、事件として表面化するのは氷山の一角と言われているからです。インドネシアの詐欺師Rudyが引き起こした偽造事件では、未だに“Rudy wine”と呼ばれる、本物か偽物かわからないワインが市場に流通しています。貴方が手にしているワインは本物ですか?本物と断言できる根拠はありますか?
偽造されないようにドメーヌ・ルフレーヴなどの高級ワイン生産者は、取引履歴が追跡できるICチップの活用、または真正性を保証するプルーフタグを貼って対策を取ってきましが、それも限界があります。今日はNFTを使った最新のデジタル技術が、偽造ワインにメスを入れるというお話です。前述のリジェ・ベレールは、偽造に悩まされるワイナリーで、いち早くNFTを取り入れました。
横文字が多くて頭の中がハテナ?の方もいらっしゃるかもしれないので、先ずはNFTからご説明しましょう。今までのデジタルデータはコピーして量産できるため、希少価値が有りませんでした。そこに価値を持たせたのが‟NFT”です。NFTとは「Non-Fungible Tokenの略で(fungibleは代替可能の意味)、直訳すると代替不可能なトークンのこと」です。複製不可能なデジタル作品は、デジタル資産としてその価値が証明されます。NFTとブロックチェーンはデジタル上の無形の価値を証明する仕組みです。
実際に、レディ・ガガのデザインしたドンペリボトルが、昨年10月に仮想空間で販売されたり、何の変哲もない15ユーロのシャンパーニュが、猿やコウモリのデジタルトークン付きで3億4,400万円の過去最高額で落札されたりしています。
NFTはゲームやアートだけでなく、今や著作権、不動産の所有権証明の分野でも、実用化が急ピッチで進んでいます。それはワイン業界の流通システムにも広がりを見せています。NFTを利用してワインの取引が成立する新しいプラットフォーム、Wokenwine(ウォーケンワイン)が誕生しました。同社は2020ヴィンテージのワインをWokenwineで販売すると公表しています。
この新プラットフォームでは、生産者→仲介業者→消費者と、1本のワインがエンドユーザーに届くまでの履歴がブロックチェーン上に記録されます。ブロックチェーンとは取引データを複数のコンピューターの暗号技術を組み合わせて鎖のように繋ぐ仕組みです。暗号資産を使った売買で、その取引の記録が全て残ります。つまり、偽装や改ざん不可能な証明書として機能します。たとえ正規輸入元ではない怪しげな海外ブローカーを経由しても、ワインの動きが追跡できるので、真偽を見破れるということです。
▶ブルゴーニュ
ドメーヌ・デュ・コント・リジェ・ベレール
ルイ・ミシェル・リジェ・ベレール
シャトー・ドゥ・ラ・トゥール
ドメーヌ・イヴォン・クレルジェ
ジェノ・ブーランジェール
▶シャンパーニュ
ジャック・セロス
ギョーム・セロス
ベレッシュ・エ・フィス
ピエール・ペテルス
ラ・ロジェリー
▶ローヌ
ステファン・オジェ
リジェ・ベレールがWokenwineの導入を決めたのは、オークション会社のワインの鑑定をしておきながら、ボトル番号や販売者が匿名なのは納得がいかないとその不透明性を揶揄し、ワインの流通経路や正真性を保証したいという姿勢からです。また、WokenwineのCEOがワイン愛好家であること、25年以上の販売実績があること、そしてベンチャービジネスではなく、「ワイナリーが力を取り戻すこと」を目的としている点も、提携に至ったポイントだといいます。
その他、ペンフォールズやロバート・モンダヴィもNFTで売り出しています。一方で、デジタル販売に消極的なDRCやルロワの動向も注目されています。
今日はデジタル資産を守るNFT、ワインの偽造対策のNFT、ブロックチェーンの波がワイン産業にも押し寄せ、ワイン販売のデジタル化が進んでいるという内容でした。いかがでしたでしょうか。消費者に安全・安心を提供できるのか?偽物ワイン横行に打ち勝つことができるのか?今後に期待したいところです。
それでは皆様、ごきげんよう!
【Wokenwine】
https://www.wokenwine.com/
365wine 大野みさき
元ANA国際線CA。7年の在職中にワインに魅せられ、その後は渡仏しワインの勉強をする。2014年に帰国し、翌月にワイン輸入会社365wine株式会社を設立。365日(毎日)ワインを楽しんでもらいたいという想いからの社名。スロヴェニアワイン専門のインポーター。現在はママさんスタッフを含め3名で、買い付けから輸入販売、全国の業務店営業やイベントで、スロヴェニアの魅力を各地に広める活動をする。「貴方と大切な方の毎日を笑顔にします!」をモットーに、一緒に働いてくれる仲間を募集中!
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