2022年08月17日

IGPペイ・ドックのロゼワインで “品種ブレンドの妙” を味わう

ワインには国や地域によって「格付け」があります。格付けとはつまり「ワインの品質分類」のこと。「このワインはこういう基準にのっとって造られていますよ」という証の付与です。格付けによってワインの品質が保証され、わたしたち消費者は安心してワインを手にすることができます。

今回は数ある格付けワインの中から、フランスの「IGPペイ・ドック(Pays d’Oc)」のワインに注目したいと思います。IGPペイ・ドックはフランス・ワイン法の格付けの中でいうと、決して高級なラインではありません。しかし生産者のこだわりやブドウ品種の個性を味わうにはぴったりなのです。

IGPペイ・ドックの特徴をまとめつつ、おすすめワインと味わい方、料理とのおすすめペアリングを紹介します。

フランス “新ワイン法”の格付けクラス「IGP」とは

フランスワインの格付けといえば、ボルドーやブルゴーニュが有名です。これらのエリアの格付けは歴史あるワイナリーのブランド化にも寄与しており、ワイン愛好家たちの垂涎の的となっています。しかし現在、格付けに関係しているのは有名ワイナリーや優良畑だけではありません。フランスでは2009年に「AOP法」と呼ばれるワインに関する新しい法律が施行され、ワインを3階級に分けて品質分類するようになりました(※2008年以前の旧ワイン法は「AOC法」)。

新しいAOP法には「ヴァン・ド・フランス(地理的表示なしワイン)」、「IGP(地理的表示保護ワイン)」、「AOP(原産地呼称保護ワイン)」という3つの階級があります。それぞれ生産地域やブドウ品種、醸造方法などの規定を設けており、基準を満たすワインだけが各階級の認定を受けることができます。規定はヴァン・ド・フランスが最もゆるく(生産地の縛りなし)、ついでIGP、AOPと厳しくなっていきます。一般的に最上級のAOP認定を受けているワインほど厳しい審査をクリアした上級ワインとして質がいいといわれます。

だからといってIGPのワインがAOPのワインよりも低品質なのかというと、一概にそうとはいいきれません。AOP認定のワインは原料ブドウが育つ畑まで細分化して細かくチェックされるため、必然的に一定以上のクオリティに仕上がるわけですが、言い換えると自由度が低いということでもあります。反対にIGP以下のワインは規定がゆるい分自由度が高く、造り手の創造性が発揮されワインの個性を楽しむことができるわけです。

そして、その傾向が特に強いのが、IGPペイ・ドックです。

「IGPペイ・ドック」の魅力

IGPペイ・ドックはフランス、ラングドック・ルシヨン地方全域で造られるIGPクラスのワインの格付けです。格付け的にはAOPより下のクラスですが、仕様書(カイエ・デ・シャルジュ)によって産地、ブドウ品種、収穫量、醸造方法などが細かく規定されています。「それならAOPと変わらないじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、注目すべきは使用できるブドウ品種の多さです。なんと58種類もの品種を使用することができ、ブレンドの自由度も非常に高いのです。

単一品種で品種の味をストレートに表現することも、複数品種をブレンドして独自の味わいを生み出すこともできます。前者の場合はラングドック・ルシヨン地方のテロワールや品種の個性を味わうことができるし、後者の場合は造り手が探求した「うちのシャトーの味」を味わうことができるわけです。

細かい規定でクオリティを保ちながらも自由度が高く、造り手の個性やオリジナリティを楽しむことができるワイン、それがIGPペイ・ドックなのです。

3品種をブレンドしたIGPペイ・ドックのロゼワイン

今回は後者の「複数品種をブレンドして独自の味わいを生み出しているタイプ」のIGPペイ・ドックの中から、夏におすすめの辛口ロゼワインをピックアップしました。それぞれの品種の特徴をおさえたうえで、ブレンド比率からワインの “性格” を想像してみましょう。

ル・ロゼ 2021(ドメーヌ・ポール・マス)

透明感のある華やかなボトルに少しオレンジがかったサーモンピンクの液色が非常に映えるこちらのロゼワインは、日本のワインコンペティション、サクラ・アワード2021にて金賞を受賞した1本。気分が高まる花柄はビニールのラベルではなく、ボトルに直接プリントされています。お値段は2,000円以下のプチプラ。気軽に空けられるデイリーユースのワインです。

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「ル・ロゼ」にブレンドされているブドウは3品種。それぞれの品種の特徴を簡単に整理すると……

ワインに「優しさ」をプラスする、グルナッシュ
スペイン原産の赤ワイン用ブドウ品種「グルナッシュ」は、ベリー系の甘い香りが特徴的。ラングドック・ルシヨン地方でも盛んに栽培されており、南仏の地中海沿岸で育つハーブ(ローズマリーやセージなど)の香りも感じられる。味わいにはフランスの硬水のミネラルウォーターのようなミネラル感があるといわれる。最大の特徴はとてもソフトな口当たり! 渋みは少なめで酸味も強すぎず、フルボディの赤ワインが苦手な人やワイン初心者にもぴったりな品種。ブレンドによりワインに親しみやすさや優しさを与える。

ワインに「芯の強さ」をプラスする、シラー
シラーはまるでカメレオンのように、環境によって全く違う表情を見せる赤ワイン用ブドウ品種。冷涼エリアではピノ・ノワールのように可憐な味わいになり、温暖エリアでは濃厚でたっぷりとしたボリュームの芯のしっかりした味わいになる。IGPペイ・ドックのエリアは温暖な地中海性気候なので、後者の表情に。スパイシーなコショウの香りも特徴的。グルナッシュとブレンドされることが多く、ワインに骨格と厚みを与える。

ワインに「シャープな表情」をプラスする、サンソー
ラングドック・ルシヨン原産といわれる赤ワイン用ブドウ品種「サンソー」は、ブレンドによりワインに複雑みをプラスする名バイプレイヤー。ラズベリーやザクロなどの心地よい果実の香りとシャープな酸味が特徴的。サンソーをブレンドすることで、ワインに凛としたシャープな表情が追加される。

それぞれのブレンド比率を見ると、「グルナッシュ」が55%、「シラー」が30%、「サンソー」が15%使われています。言い換えると、「優しさ」55%、「芯の強さ」30%、「シャープな表情」15%という割合です。香りの主体はベリー系のキュートな果実香、そこに地中海を思わせるハーブの香りや、ピリッとスパイシーな香りが同居する……。ここからル・ロゼの人柄ならぬ “ワイン柄” が見えてこないでしょうか。

わたしが考えるル・ロゼの “ワイン柄” はこんな感じ。

うららかな南仏出身の、心の広い優しいワイン。でも優しいだけではない。芯が強くて、ピリッとスパイシーな一面やクールな一面も併せ持つ。複雑だけど軽やかで、陽気だけどクール。人間味溢れる、夏のロゼ。

こんなふうに、ブレンドされている品種やブレンド比率からワインの性格を想像しながら飲む……それが、IGPペイ・ドックのブレンドワインの楽しみ方のひとつです。ブレンドする品種の選び方も比率も、造り手次第、組み合わせは多岐にわたります。IGPペイ・ドックのワインを手に取る機会があったら、ぜひ品種とブレンド比率に着目し、 “ワイン柄” を想像して楽しんでみてください!

おすすめペアリング

今回ピックアップしたワイン「ル・ロゼ」に合うおすすめおつまみをあげるなら、次の二つ!

白身魚のポワレ

ポワレとは、フライパンで魚をカリッと香ばしく焼き上げる調理法のこと。ミネラル感を感じるワインなので、魚との相性が抜群!おすすめは皮目をパリッと焼き上げたふっくらジューシーな白身魚に、レモンをきかせたバター風味のソースをかけるレシピ。ワインの甘酸っぱい風味とほどよくマッチします。

海老せん

よりカジュアルに楽しむ派の人は海老せんとのマリアージュをご堪能あれ! おすすめは名古屋名物「坂角のゆかり」。海老の香ばしさとほんのり感じる甘味がワインとぴったり共鳴して、とても美味しいですよ。バリバリ、ゴクゴク、カジュアルな晩酌にぴったりな組み合わせです。


吉田すだち ワインを愛するイラストレーター

都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
【HP】https://yoshidasudachi.com/
【instagram】https://www.instagram.com/yoshidasudachi

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