
2022年10月01日
ワインの瓶は、色や形などさまざまな個性があります。とくにワインボトルの形には、それぞれ役割や理由があるものもあるのです。この記事では、ワインの瓶について知ってると驚かれる、そんな秘密をソムリエがご紹介していきます。ワインの中身だけでなく色や瓶の形にも注目してみてくださいね。
酒屋さんやワイン専門店で、ワインの瓶を眺めていると、さまざまな形や色合いのものがあると感じると思います。ワインボトルの形状や色合いで、なんとなくキレイだからかっこいいからと購入したことある方もいるのではないでしょうか。最近では、魚の形や猫の形のかわいらしい瓶まで登場しているんですよ。
このようにさまざまなデザインが存在している、ワインの瓶。形がいろいろある原因は、見た目がうつくしくなるようにだけではないんですよ。以下では、詳しくご紹介していますので学んでみましょう。
もともとワインボトルの役割は、「安全に保存するため」や「瓶内でよりよく熟成をさせるため」などの役割があります。ワインは醸造過程で、ステンレスタンクや木樽などに入れられて一定期間熟成させる場合がありますね。木樽に長時間入れておくと、木樽の風味が付きすぎてしまいブドウ本来の味わいが弱くなってしまったり、ステンレスタンクに長時間入れておくと、酸化スピートが早まってしまったりなど、造り手の求める味わいから離れてしまう場合があります。
ワインボトルに入れることで、コルクから入っている酸素によりよい熟成ができたり、デイリーワインは飲み頃のものを販売できたり。ワインボトルは、安全に品質を維持しながらお客様のもとに届けられるという素晴らしい瓶ということになるのです。入れ物はなんでもよく、ただワインボトルに入れて販売しているわけではなく、上記のように、考えられてワインが瓶にボトリングされているんですよ。
ワインボトルには、ほとんど底に窪みがあると思います。これにも理由があるんです。赤ワインは、熟成が進むとポリフェノールや色素などでできる塊「澱」というものが発生する場合があります。ワインボトルが窪んでいることで、ワインを注ぐときに澱がワイン全体に舞い上がりにくくなるのです。また、白ワインやロゼワイン、スパークリングワインでもキラキラした酒石酸の塊や茶色の澱などが沈殿する場合があり、ワインボトルが窪んでいることで浮遊しにくくなるようですよ。
一般的なワインボトルの容量は、750mlです。しかし、なぜこの量なのか知らない方も多いと思います。実は、イギリスとの輸入関係に理由があるそうです。イギリスは、ワインの消費量が多く、世界各国のワインが輸入されています。その中でも、フランス・ボルドーワインは歴史的にもイギリスとの関係がワイン産業への大きな発展へと繋がっているのです。
そのイギリスでは、ガロンという単位が使われていました。1ガロンは、4.5l(4,500ml)なので、一本辺り750mlの内容量になると半ダース(6本)、2ガロンで1ダース(12本)で輸出できるというわけです。750mlという量が、きりが良かったということですね。また日本では、720mlのボトルが造られていることがあります。750mlではなく、720mlが生産された原因は、酒瓶の4合のボトルが流通していた影響が大きく残っています。日本では、ワインより先に720ml用の酒瓶が多く出回っていたので、その瓶を使用してワインをボトリングしていたんですね。どちらも、利便性を考えての容量だったというわけです。
世界各国、さまざまな産地で使われるボルドー形。肩が張った、いかり肩のデザインが特徴的です。フランス・ボルドー地方で使われていることから、ボルドー型と言われているんですよ。またフランス・ボルドー地方では、赤ワイン用のブドウ品種として主にカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ、マルベックなどの重厚でタンニンがしっかり感じられるものを使用しています。タンニンが多いということは、熟成したワインには澱が発生する場合があるのです。澱は、体に入れて悪いものではありませんが、ザラザラとした口当たりがワインのおいしさを半減させてしまうため、あまり飲みたくないもの。ボルドー型は、肩の窪みの部分に澱をためることができるため、グラスに澱が入るのを防ぐ役目もありますよ。
なで肩でスッーっとエレガントなボトルが、ブルゴーニュ形です。フランス・ブルゴーニュ地方で使用されているので、ブルゴーニュ型と呼ばれています。フランス・ブルゴーニュ地方で使用しているブドウ品種は、赤ワインはピノ・ノワールやガメイ、白ワインはシャルドネとタンニンはやさしく、繊細なワインが多い印象です。ほかの産地でも、同じようなブドウ品種の場合は、ブルゴーニュ型を使用していることもありますよ。
シャンパーニュやその他スパークリングワインのボトルである、シャンパーニュ形。シャンパーニュ地方で造られるシャンパーニュが由来となっています。シャンパーニュやその他スパークリングワインである発泡性ワインは、開栓すると広がる大きめのコルクと、ミュズレといった王冠の付いた針金が頭部に付いているのが特徴的です。発泡性のワインの場合は泡を閉じ込めるために、ボトル全体は分厚く重くできていることが、ほかのワインと大きく違います。また、ボトルネックがすぼまったタイプや、なだらかなタイプと種類もいろいろありますよ。
アルザス地方で使われている、シュッとでスリムで縦に長いアルザス型。一般的な容量は750mlですが、ほかのボトルよりも背が高いものあり、直径や高さのサイズはさまざまです。色合いは、濃いめの緑や茶色が多く使われていますよ。
フランス・プロヴァンス地方で使われている、プロヴァンス形。とくにプロヴァンス・ロゼ(ロゼワイン)は世界中で愛され、おいしいものがたくさんあります。ボトルのデザインは、上記の商品ロムラードが手がける「キュヴェ・マリー・クリスティーヌ プロヴァンス ロゼ」のように、下の部分がくびれたボトルや、ボトルネックが長く横にぷっくりと広がったボトルなど、特徴的なのも多いのも特徴的ですよ。
ドイツのライン地方やモーゼル地方で使われている、ライン形/モーゼル形。フランス・アルザス地方のボトルと同じく、シュッと縦に長くスリムで背の高いボトルが特徴的です。ボトルの色合いは、濃いめの緑が茶色、青色などが多く使われています。
ボックスボイテルとは、上記の商品ゾンメラッハが手がける「ゾンメラッヒャー・ジルヴァーナ Q.b.A. トロッケン」のように、中央が膨らんだ栗のような形で、平べったいボトルのことを指します。ボックスボイテルは、1989年にEUで商標登録が認められているため、ドイツではフランケンとバーデンのベライヒ・タウバー、バーデン=バーデン周辺、ポルトガルの一部ワイン生産地のみで使用が許可されていますよ。ボックスボイテルは、ドイツの伝統的なボトルとしても有名なので、観光で訪れたときはお土産にもおすすめです。
iStock.com/monticelllo
ワインには、さまざまな色合いのボトルが存在しています。とくに多い色合いは、黒や茶色、緑、青などの暗い色合いのボトルが多いですよね。ワインは、日光や光に弱いお酒です。光が入るとワインは劣化し、香りや味わいが本来のものと違うものになってしまいます。そのため、なるべく光を遮断できるように、黒や茶色、緑、青などの暗い色合いのボトルにしている場合が多いです。
しかし、白ワインやロゼワイン、スパークリングワインは、透明のボトルもあると思います。日の光に当てないのはもちろんなのですが、見た目のうつくしさを表現する意味合いや、熟成しなくてもおいしく飲めますよという意味合いから透明のボトルにボトリングされていることがあるようです。熟成させたいと考えていつワインを購入するときは、暗めの色合いのボトルを選ぶと安心かもしれませんね。
ワインボトルは、色や形が生産地によって大きく変わります。澱をなるべくグラスに入れないようにするためのボトルの形や、日の光を遮るために暗い色合いのボトルなど、どんな容器でもいいわけではなく、ワイン自体の品質を保つためや、飲むときのためのことまで考えて造られているのです。また、ワインはボトルのデザインや見た目も重視されるため、プロヴァンス型のような素敵な形も存在します。ワインボトルひとつでも、生産者の想いや愛が伝わってきますよね。これからは、ワインを購入するときにワインの瓶にもぜひ注目してみてください。
ソムリエ・チーズプロフェッショナル /
YURI
資格:J.S.A.ソムリエ、C.P.A.認定チーズプロフェッショナル、食生活アドバイザー3級。『もっと楽しく、もっと気軽に、もっとおいしく!』をモットーに誰でもワインとチーズを気軽に楽しめるようアドバイスを発信中!ワインの輸入会社、レストラン、料理教室運営などを経験したのち、現在はフリーランスのソムリエ・チーズプロフェッショナルとして活動中。主にワイン・チーズ教室やブログ、ライターにてワインやチーズ・マリアージュなどの楽しみ方を伝えています。
【ブログ】ソムリエールYURIのちょこっとMEMO
【twitter】https://twitter.com/YURI06927640
【instagram】https://www.instagram.com/yuri.winetocheese