
2022年10月01日
解禁日が近づくと毎年話題になるのが、その年のボジョレーヌーヴォーに付けられるキャッチコピー。誰が考案しているのか、気になったことはありませんか?この記事ではボジョレーヌーヴォーのキャッチコピーの作成者や、過去に付けられたキャッチコピーなどについて解説します。
毎年11月の第3木曜日は、ボジョレーヌーヴォーの解禁日です。ボジョレーヌーヴォーを味わうことが楽しみなのはもちろんですが、その年のボジョレーヌーヴォーに付けられるキャッチコピーに注目している人も少なくないでしょう。本当に?と疑いたくなるような少しオーバーな表現が話題となる、ボジョレーヌーヴォーのキャッチコピー。実は毎年、2種類発表されています。
ひとつは、フランスのボジョレーワイン委員会によるその年のブドウの評価を受けて、フランス食品振興会(SOPEXA)が発表する公式見解を日本語に訳したものです。そしてフランスの公式見解を、日本の販売業者が目を引く言葉にアレンジしたものが、もうひとつのキャッチコピーとして周知されています。
現地の公式見解は「エレガントで魅力的なワイン(2016年)」や「とてもうまくいった年(2006年)」など、当たり障りのない言葉が見受けられます。この言葉だけで、その年のボジョレーヌーヴォーの仕上がりをほかの年と比べたり、味わいを判断したりするのはむずかしそうです。
一方、日本独自のキャッチコピーは「過去10年で最高と言われた01年を上回る出来栄えで1995年以来の出来(2002年)」「豊かな果実味とほどよい酸味が調和した味(2008年)」といったかなり具体的な表現が用いられています。「並外れて素晴らしい年(2003年)」という公式見解が、日本では「110年ぶりの当たり年」と表現されるなど、なかにはかなり大袈裟に感じられるコピーもあります。
誇張しすぎでは?と首を傾げたくなる文言もありますが、オーバー過ぎるがゆえに毎年注目を浴びているのがボジョレーヌーヴォーのキャッチコピーです。解禁日までキャッチコピーを胸にワインへの期待を募らせることも、ボジョレーヌーヴォーの楽しみ方のひとつと言えるでしょう。
ボジョレーヌーヴォーに付けられた、過去のキャッチコピーを思い返してみてください。毎年のように「当たり年」と言われている印象を抱く人は、少なくないでしょう。では実際に、過去のキャッチコピーを一覧で見てみましょう。
なお日本独自のキャッチコピーは、各業者が販促で使用する文言を決めているので、同じ年でも複数のコピーが存在します。そのためこの記事では、フランスで公式に発表されたキャッチコピーを紹介します。
2000年:出来は上々で申し分の無い仕上がり
2001年:ここ10年で最高
2002年:色付きが良く、しっかりとしたボディ
2003年:並外れて素晴らしい年
2004年:生産者の実力が表れる年
2005年:59年や64年、76年のように偉大な年の一つ
2006年:とてもうまくいった年
2007年:果実味が豊かでエレガント
2008年:フルーツ、フルーツ、フルーツ
2009年:数量は少なく、完璧な品質。桁外れに素晴らしい年
2010年:果実味豊かで、滑らかでバランスの取れた
2011年:3年連続で、偉大な品質となった
2012年:心地よく、偉大な繊細さと複雑味のある香りを持ち合わせた
2013年:繊細でしっかりとした骨格。美しく複雑なアロマ
2014年:エレガントで味わい深く、とてもバランスがよい
2015年:記憶に残る素晴らしい出来栄え
2016年:エレガントで、魅惑的なワイン
2017年:豊満で朗らか、絹のようにしなやか。しかもフレッシュで輝かしい
2018年:2017年、2015年、2009年と並び、珠玉のヴィンテージとして歴史に刻まれるでしょう
2019年:有望だが、生産者のテクニックが重要な年
2020年:非常にバランスが取れた爽やかさのある仕上がり
2021年:挑戦の末たどり着いた、納得のヌーヴォー
キャッチコピーの目的は販売促進なので、ボジョレーヌーヴォーの好ましい面にフォーカスを当て、よさが映える言葉を選んでいるようです。概要的な表現にとどまっている年も一部見られるように、毎年当たり年であるとは限らないことがわかります。
農産物でもあるワインは、自然環境や病気などの影響を受けやすく、作るには厳しい年になることもあるでしょう。そのような年は、生産者の努力を評価したキャッチコピーになっているようです。
2022年のキャッチコピーが気になるところですが、現在の時点では発表されていません。ボジョレーヌーヴォーのキャッチコピーは毎年、9月下旬から10月下旬にかけて発表されています。
参考に、2021年のキャッチコピーと実際のワインの評価を比べてみましょう。2021年のキャッチコピーは「挑戦の末たどり着いた、納得のヌーヴォー」でした。この年、フランスでは4月に霜の大きな被害に見舞われました。寒波や雨に苦しめられ、天候的に厳しい年になった2021年。しかし生産者たちは最後まで諦めず、例年に引けをとらない味わいのワインを作り出しました。
2021年は決して当たり年とは言えませんが、生産者たちの努力が感じられる素晴らしいボジョレーヌーヴォーに仕上がりました。幾多の苦難を乗り越えた生産者の1年間の奮闘が、「挑戦の末たどり着いた、納得のヌーヴォー」という言葉に集約されています。
iStock.com/Ekaterina
Fedulyeva
2022年のボジョレーヌーヴォーの解禁日が、少しずつ近づいています。解禁日というイベントを盛り上げてくれるのが、ボジョレーヌーヴォーに付けられるキャッチコピーです。どのような言葉で今年の味わいを表すのか、キャッチコピーへの期待が膨らみます。
ボジョレーヌーヴォーを飲んで、フランスの公式キャッチコピーと日本独自のキャッチコピー、どちらが味わいを的確に表しているか検証するのもおもしろいかもしれません。2022年のボジョレーヌーヴォーの解禁と、キャッチコピーの発表を楽しみに待ちましょう。