2022年09月28日

はちみつパン&エジプトワイン

皆様こんにちは、インポーター365wineの大野みさきです。
今回のテーマは、【エジプトワイン】と 【ラムセス2世】です。古代エジプトにロマンを馳せながら、“カデシュの戦い”の前日にラムセスが食したと言われる、はちみつパン&エジプトワインを実際に試してみます。(ドキドキ) 先ずは歴史のおさらいから参りましょう。

エジプトの歴史

時は紀元前のお話です。今から3300年前、エジプトは親王国時代でした。時の最高権力者は、新王国第19王朝のファラオに君臨するラムセス2世です。古代エジプト史上、最大の繁栄を築いたヒーローとして、歴史書のみならずドキュメンタリーや映画などの題材に取り上げられることもしばしば。8人の正妃、200人の側室との間に、100人以上の子を儲けたといわれています。時を経て現存するアブシンベル神殿のラムセス座像が、その治世のスケールの大きさを物語っています。

ラムセスは父セティ1世の政策を継ぎ、他国との戦争によって領土を拡大します。青銅器時代に製鉄技術を有する最強国、ヒッタイト帝国(現在のトルコ)との交戦は、後に世界最古の和平条約が結ばれた戦いとしても有名です。ムワタリ2世が率いるヒッタイト軍 VSラムセス2世が率いる2万のエジプト軍が、シリアのカデシュで戦った、「カデシュの戦い」。ファラオなのにひとりで戦車を乗りこなし、果敢に敵軍を切り裂いていったラムセス。この戦いは10年にも及び、こう着状態となった時に停戦合意して終息を向かえました。

戦いの最中に腹を満たしたのは、パンとワインです。(ワインは貴重なので兵士は水かビール。ワインは将軍、隊長クラスと想像します。) 兵士2万人を賄える相当量を仕込み、それをシリアまで運搬する物流を調えなければなりません。戦争に携帯する兵糧パンは、平たいのでかさばらないし、日持ちもOK!全粒粉は栄養価も高く腹持ちがよい。はちみつは即エネルギーとなる。まさに戦旅に適したパンです。おまけに古代エジプト人はパン食で、パンが大好き!文献や遺跡にはじめてパンが登場するのが紀元前2500年前です。それ以前の新石器時代から、様々なバラエティパンを食してきました。酵母を添加しないパンにはじまり、時代を重ねるとパンを焼く釜戸の技術も向上します。また、古代エジプトではパンはビールの原料ともなり、日常生活だけでなく祭礼にも使用する重要なアイテムでした。

パンとワイン

著書「 英雄たちの食卓」では、当時のレシピを再現しているので、それを参考にして、はちみつパンを焼いてみました。大麦から小麦にシフトする時代のため、文献では大麦と小麦のブレンドを用いていますが、良質な小麦は神へのお供え物やファラオが食するものでした。そのためラムセス用に古代小麦を2種類ブレンドして使いました。

材料 1枚分

・スペルト小麦粉 20
・国産全粒小麦粉 20g
・塩 小さじ1/2
・水 30ml
・はちみつ 適量

作り方

➀はちみつ以外をひとまとめにして捏ねて30分休ませる。
➁めん棒で薄く伸ばし、フライパンで強火で焼く。
➂はちみつを両面に塗って乾かす。


Kouroumボーソレイユ2018
2,475円(税込)

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兵糧パンの気になるお味は、全粒粉を使っているので味わい深く、素朴な風味です。脇役というより、主役となり得るであろう、おかず級のインパクトがあります。塩味もしっかりしているので、塩分補給にも良さそう。では、パンと一緒にエジプト産の赤ワインも頂きましょう。KOUROUMボーソレイユ2018です。ツタンカーメンの墓から車で1時間の紅海からほど近いEl-Gounaに畑はあります。オーガニックで栽培されたシラーの赤ワインです。プルーンやカシスなどの熟した黒系果実、甘草、シナモンなどのスパイス香、リキュールやジャムのニュアンスもあり、香りのボリュームは大、大、大です。一方で味わいは香りとは裏腹に、軽めのアタック。暑い産地なのでアルコール度数が高いと思いきや、12.5%にまとまっています。豊かな酸味に丸みを帯びたタンニン。アフターには紅茶の風味が広がります。普段、赤ワインどころかワイン自体にあまり慣れていない人でも、飲みやすいと感じるような、初心者向けの仕上がりです。

ワイン史

エジプトのワイン史についても確認しておきましょう。紀元前4000年末から紀元前3000年頭にかけて、ワイン造りがはじまりました。ヴィティス・ヴェニフィラなどの外来種が持ち込まれ、比較的冷涼な北部のデルタで栽培しました。とはいっても半砂漠地帯の乾燥気候なので、ぶどうを育てるのは大変です。どうやら灌漑はしていたようです。ワインはイレプ(irp)と呼ばれ、希少で高貴なものでした。庶民のビール(=ヘネケト(hnqt)と言い、ワインよりも1000年も早くに造っていた)とは異なり、初期の時代では王侯貴族の飲み物でした。嗜好品の用途以外では神々や死者へのお供物や祭儀、または薬品として用いられていました。また神殿や墓などの壁画に描かれているのは黒ぶどうであったことから、ラムセスも赤ワインを飲んでいたと想像します。圧搾の加減でブランドノワール、ロゼ、赤ワインになったり、出来上がったワインにはちみつやイチジクを混ぜたり、ザクロを混ぜた甘口ワインも楽しんでいたのだとか。今日のエチケットやビンテージの先駆けとなるワインの付加価値の要素も、早くから組織化して管理されていたというから驚きです。約3000年続いた古代エジプト王朝時代。ワイン文化が花開き、パンと共に生活にも戦闘にも必需品で、王朝と民を長きに渡り支えてきた源でもあるのですね。

あれ?エジプトって今はイスラムの国じゃなかった?アルコール御法度なのに、ワインを造っているのか~と思われた方、イスラムが勢力を増した7世紀以降、ワイン産業は衰退を辿ったのですが、現在において観光業が主産業であるエジプトにとって、外国人向けにワインを造ることは重要なこととなっています。イスラム国におけるワイン造り。このお話はまた別の機会でしましょう。今日はラムセスが食べたと伝わるパンとワインでした。それでは皆様、ごきげんよう!

参考文献:英雄たちの食卓 遠藤雅司、古代エジプトのワインとビール(総論)Wine and Beer in Ancient Egypt: General Considerations高宮いづみ


365wine 大野みさき

ANA国際線CA7年の在職中にワインに魅せられ、その後は渡仏しワインの勉強をする。2014年に帰国し、翌月にワイン輸入会社365wine株式会社を設立。365(毎日)ワインを楽しんでもらいたいという想いからの社名。スロヴェニアワイン専門のインポーター。現在はママさんスタッフを含め3名で、買い付けから輸入販売、全国の業務店営業やイベントで、スロヴェニアの魅力を各地に広める活動をする。「貴方と大切な方の毎日を笑顔にします!」をモットーに、一緒に働いてくれる仲間を募集中!
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