2022年10月01日

11月の新酒はボジョレー?ボージョレ?違いや由来を解説

11月第3木曜日に解禁されるフランスの新酒はボジョレーヌーボーとボージョレーヌーボー、どちらが正しいのか疑問に思ったことはないでしょうか?この記事では、ボジョレーとボージョレの違いや表記の由来を解説します。表記について気になっていた人は、ぜひチェックしてみてください。

ボジョレーヌーボーってどんな意味?

ボジョレーヌーボー解禁を知らせる看板
iStock.com/nobtis

11月の解禁日が近づくにつれて、メディアやチラシ、店頭などで目にすることが多くなるボジョレーヌーボーの文字。しかしよく見るとボージョレヌーボーやボジョレーヌーボー、ボジョレヌヴォーなど、さまざまに書き表されていることに気づきます。一体どの表記が正解なのか、気になったことがある人は少なくないでしょう。

ボジョレーヌーボーの日本語表記について検証する前に、まずはボジョレーヌーボーとはどのようなワインであるかを解説します。なおこの記事では便宜上、ボジョレーヌーボーと表記します。

ボジョレーヌーボーとは

ボジョレーヌーボーとは、フランス・ボジョレー地区で、その年に収穫したガメイ品種のブドウから作られたワインのことです。ボジョレーヌーボーは毎年11月第3木曜日を解禁日とすることが、フランスの法律で決まっています。

ボジョレーヌーボーに使用できるブドウはガメイ品種のみであることも、法律で定められています。ガメイ品種から作られたボジョレーヌーボーは、タンニンが少なく、軽快でフルーティーな味わいになります。ボジョレーヌーボーは長期熟成タイプではなく、収穫したその年に飲まれる早飲みタイプのワインです。

フランス語で「ボジョレー地区の新酒」

ボジョレーヌーボーはフランス語で、Beaujolais nouveauと表記します。Beaujolaisの意味は「ボジョレー地区」、つまりボジョレーヌーボーが作られた場所の名前です。nouveauは、辞書的には「新しい」という意味の形容詞ですが、名詞のあとに置くことで「最新の」という意味になります。したがってBeaujolais nouveauの意味は「ボジョレー地区で作られたニューリリースのワイン」であり、11月第3木曜日を解禁日とするボジョレーヌーボーを示すことになるのです。

フランス語の発音に近いのは「ボジョレー」

屋外でワイングラスに赤ワインを注ぐ
iStock.com/artisteer

日本ではボジョレーヌーボーやボージョレーヌーボーなど、さまざまな表記がみられますが、フランス語のつづりはBeaujolais nouveauです。フランス語の発音に近い日本語の表記はどれにあたるのか、検証してみましょう。

まず問題になるのが、ボの音を伸ばすのか伸ばさないのか、という点です。日本語の母音は、あ・い・う・え・おの5種類のみです。しかしフランス語には、16個もの母音が存在します。音がよく似た母音もあり、フランス語になじみが薄い人には同じ音に聞こえるでしょう。

aをアと読むように一文字で1音を表す母音は、日本人にとってローマ字読みのようでわかりやすいのですが、フランス語には数文字でひとつの母音を表す場合があります。Beaujolaisのeauもそのひとつであり、eauと表記して日本語の「お」に近い読みとなるのです。ちなみに、日本語の「お」よりも唇を閉じつつ唇を前へ突き出し、舌をうしろに引いて発音します。eauは「オー」と伸ばさず、短めに「オ」とするのがフランス語に近い発音です。

ただし、ボジョレのように最後の音を伸ばさないのが、よりフランス語に忠実な発音になります。日本でもときどきボジョレと書き表されている場合がありますが、ボジョレーヌーボーの日本語表記ではマイナーなようです。

日本語表記の慣習に従うと「ボージョレ」

ワインラックに並ぶ赤ワインのボトル
iStock.com/Maudib

フランス語では伸ばさないボの音を、日本語で伸ばして表記するようになったのは、英語の影響であると考えられています。

eauは英語になると「オゥ」と発音されます。これは、英語に見られる二重母音という発音です。日本語では「お」と「う」のふたつの母音にわけられる音が、英語ではつながって「オゥ」でひとつの母音になると考えられています。Beaujolaisのeauは英語的な発音をすると二重母音の「オゥ」と読まれるため、日本人には「オー」と伸ばしているように聞こえるのです。これがBeaujolaisをボージョレと書き表すようになった由来ではないかと考えられています。

ヌーボーにも見られるさまざまなバリエーション

木のテーブルの上に置かれた木樽と赤ワインのボトル、赤ワインが入ったふたつのワイングラス
iStock.com/Kesu01

フランス語の日本語読み問題は、ボジョレーとボージョレだけではありません。ヌーボーについてもさまざまな表記が存在しており、Beaujolais nouveauの日本語表記をより複雑にしています。ヌーボーとヌーヴォーのふたつが多く見られる表記ですが、ヌーヴォやヌーボもまれに見られます。

アールヌーボーという言葉に、聞き覚えがある人は多いでしょう。19世紀末から20世紀はじめにかけてヨーロッパで広まった美術運動のことであり、フランス語でArt nouveauとつづります。このように、日本ではnouveauを慣習的にヌーボーと表記しています。nouveauのvをボとヴォ、どちらで表記するかの違いはありますが、ヌーボー(ヌーヴォー)のようにあとの音を伸ばすのが一般的です。

厳密に言えばnouveauの最後、eauはBeaujolaisと同じで「オ」と読み、フランス語では音を伸ばしません。ヌヴォが、実際のフランス語の発音に近いと言えるでしょう。しかしボジョレーはもはやブランド名、商品名であると言えます。日本ではヌヴォよりも、慣習的に使用されていたヌーボーの音の方が聴きなじみがあり、商品として受け入れやすいのではないかと考えられます。

メーカーやメディアの表記は?

ブドウの樹に実るブドウ
iStock.com/ah_fotobox

さまざまな書き表し方が存在するボジョレーヌーボーを、日本での取り扱い業者がどのように表記しているのか気になります。日本の大手販売業者による2022年のボジョレーヌーボーの表記は、以下の通りです。

サントリー:ボジョレーヌーヴォー

キリンビール:ボージョレ・ヌーヴォー

サッポロビール:ボージョレ・ヌーボー

アサヒビール:ボージョレ・ヌーヴォ

ボジョレーヌーボーの名前が各社でまったく同じにはならず、微妙に異なっている点が興味深いところです。ボジョレーヌーボーの解禁日には、毎年メディアでもそのにぎわいが報道されています。それを見てみると、新聞各社はそろってボージョレ・ヌーボーという表記を使用しているようです。テレビ各局の報道を比較すると、ボージョレ・ヌーボー派とボジョレ・ヌーボー派が存在していることがわかります。

販売業者やマスコミの表記を参照しても、ボジョレーヌーボーの表記は統一されておらず、それぞれが独自の書き表し方を採用しているようです。

表記は気にせずボジョレーヌーボーを楽しもう

屋外でワイングラスを手に乾杯する人々
iStock.com/ViewApart

日本にはさまざまなボジョレーヌーボーの表記が存在しており、まぎらわしく感じたことがある人は少なくないはずです。日本におけるボジョレーヌーボーの表記の方法にはきまりがなく、ワインの販売業者やマスコミなどが自由に書き表し、今日のような種々多様な名前が見られるようになりました。ボジョレーかボージョレかそれ以外かは、フランス語から日本語へ読みかえる際の表記の揺れにすぎず、気にしなくてかまいません。日本語の名前にとらわれず、ボジョレーヌーボーそのものの味わいを楽しんでください。


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