
2022年11月16日
ワインをグラスに注ぐとき、どのくらいの量を注げばよいか困ったことはありませんか?この記事では、グラスに注ぐワインの適量について解説します。ワイングラスいっぱいに注がない理由や、ワインのタイプに合わせたグラスの選び方、ワインを注ぐときのマナーも紹介するので参考にしてください。
レストランなどの飲食店でワインを注いでもらったときに、大きなワイングラスに少量しかワインが注がれず「もっと入れてもいいのに」と思ったことはありませんか。ビールではジョッキにあふれんばかりの量が注がれる一方、ワインは基本的にグラス半分にも満たない量しか入れません。実は、グラスに注ぐワインには適量が存在します。ワインに適したグラスの選び方や、ワインの香りや味わいを引き出す注ぎ方も解説するので、ワインでお客様をもてなすときに困らないようチェックしておきましょう。
ワインをグラスいっぱいに注がないのは、ワインの香りを楽しむためです。香りはワインの魅力のひとつであり、テイスティングにおいても重要なポイントになります。ワイングラスが丸みを帯びた形状をしているのは、グラスの中にワインの香りをためておくことが目的です。ワインの香りをとるためには、ワインをグラスにたっぷり注ぐ必要はなく、香りをためるスペースを確保することが大切なのです。
ワインの香りを引き出すスワリングのためにも、グラス内にスペースを作っておく必要があります。スワリングとは、グラスをくるくると回してワインを空気に触れさせることです。スワリングしてワインが空気に触れると、香りが開いてきます。グラスに注ぐワインの量が多いと、スワリングの際にワインがこぼれてしまう恐れがあります。スワリングしやすくするためにもワインはあまり多く注がず、グラス内にスペースを作っておきましょう。
ワインは香りを楽しむためにあえて少量しか注がないことがわかりましたが、ワインを注ぐ量には適切とされる量があります。レストランなどの飲食店では、ワインボトル1本からグラス6杯分をとるのがもっとも一般的です。ボトル1本の容量は750mlなので、125mlがグラスワイン1杯あたりの分量といえます。店によってはワインボトル1本から7〜8杯とることもあり、その場合は90〜110ml程度が1杯分の分量です。
レストランでワインをオーダーすると、そのときどきで形やサイズが違うグラスが登場することに気づくでしょう。それは、ワインの種類ごとに適するグラスがあるためです。ワインに合ったグラスを使うと、ワインの個性や魅力を最大限に引き出せます。ここからは、赤・白・スパークリングの3種類のワインにそれぞれ合うグラスの特徴を紹介します。
赤ワイン用のグラスは、豊かな香りを楽しむためにグラス内のスペースを広く取れる大きなサイズがおすすめです。グラスが大きめになるので、グラスに対する赤ワインを注ぐ適量は120〜150mlとされています。
グラスの丸く膨らんでいる箇所、ワインを注ぐ部分の名前をボウルといいます。ボウルがチューリップのような、縦に長めの形をしているグラスは「ボルドータイプ」です。ボルドータイプのグラスは、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローといったブドウから作られる赤ワインの渋みを、まろやかに感じさせてくれるでしょう。
ボウルが横に膨らみ、飲み口がすぼまった形をしている「ブルゴーニュタイプ」のグラスは、ピノ・ノワールから作られる赤ワインを飲むのに適しています。ブルゴーニュタイプは、ピノ・ノワールの芳しい香りをしっかりとキャッチできるグラスです。
白ワイン用のグラスは、赤ワイン用のグラスよりもサイズが小さいことがほとんどです。それは、白ワインがおいしく飲める温度に関係しています。一般的な白ワインの飲み頃温度は、6〜12℃です。温度が上がってしまう前のおいしいうちに飲み切れるよう、白ワインのグラスは小さめが推奨されています。赤ワイン用グラスに比べて白ワイン用グラスは小さいため、グラスに対する白ワインの適量も90mlと少なめです。
酸味のあるフレッシュな白ワインは、縦に長く飲み口のすぼまりがゆるやかな「リースリングタイプ」のグラスをおすすめします。飲みごたえのある熟成した白ワインは、ボウル部分が大きく膨らみ飲み口が広い「モンラッシェタイプ」のグラスで飲むと、香りの広がりを楽しめるでしょう。
スパークリングワインは細かな泡が美しく立ちのぼる様子を楽しむため、幅がせまく細長い「フルートグラス」を一般的に使います。芳醇な香りを楽しみたいシャンパーニュは、ボウルに膨らみのある「シャンパーニュグラス」がおすすめです。スパークリングワインの適量は1杯140ml程度、ボトル1本で約5杯とることが多くあります。
ワインに最適なグラスが用意できたら、ワインの香りや味わいを引き出す注ぎ方も知っておきましょう。
日本酒やビールの場合はグラスを手に持ってお酒を注いでもらいますが、ワインはグラスをテーブルに置いた状態で注ぐことが基本です。ソムリエが、ボトルを片手で持ってスマートにワインを注ぐ姿には憧れます。しかし慣れていない人がソムリエのように片手で注ぐと、ボトルが不安定になり危険なので、無理をせず両手で持ってかまいません。その場合は片手でボトルの底を持ち、もう片方の手でボトルの細くなったネック部分を下から持つと安定してワインを注げます。
相手が銘柄を確認できるよう、ワインを注ぐときはラベルが上向きになるようにボトルを持ちましょう。注ぎ口からワインがたれてしまった場合にも、ラベルを汚さなくてすみます。
グラスにワインを注ぐときは、ボトルはグラスに触れないよう、グラスから数センチ離してください。ワインを空気に触れさせることで、香りや味わいが開く効果も期待できます。このときに勢いよく注いでしまうと、ワイン中のオリが舞い上がり、グラスに入ってしまう恐れがあります。ゆっくりと静かに注ぐことが、ワインの味わいを損なわないポイントです。
スパークリングワインの場合はグラスに注ぐと泡立つため、2回に分けて注ぎましょう。最初は適量の3/4程度を注ぎ、少し待って泡が落ち着いてから適量まで注ぐとスマートに注げます。
個性豊かな香りを楽しみ、おいしい状態で飲み切るために、ワインはグラスに注ぐ適量があります。赤ワイン・白ワイン・スパークリングワインの異なる特徴に合わせて適切なグラスを選ぶと、ワインの持ち味が引き出せるでしょう。グラスへの注ぎ方にも気をつければ、味わいを邪魔することなくワインをおいしく楽しめます。
良いワインはグラスにたっぷり注いで、たくさん飲みたくなります。しかしその気持ちをぐっとこらえて、グラスに注がれた1杯のワインとじっくり向き合い、香りや味わいを堪能してはいかがでしょうか。