
2021年11月10日
ガメイというブドウ品種の名前を聞いたことはありますか?名前を知らなくても、ガメイから作られたワインを飲んだことがある人は多いはずです。この記事では、日本人と縁が深いブドウ品種「ガメイ」について解説します。ガメイを使ったおすすめワインも紹介するので、参考にしてください。
ガメイとは、赤ワイン用ブドウ品種のひとつです。日本では、ピノ・ノワールやメルローといった品種ほど名前を聞く機会は多くありませんが、その名前とワインの味わいは世界的に知られています。
ガメイはピノ・ノワールと白ブドウ品種のグエ・ブランの交配種であり、正式名称は「ガメイ・ノワール・ア・ジュ・ブラン(白い果汁を持った黒い果皮のガメイ)」です。この正式名称は、別のブドウ品種「ガメイ・タンテュリエ」と区別するためにつけられたと言われています。
発芽・成熟がほかのブドウ品種よりも早く、春先に降りた霜の被害を受けることが多いブドウです。しかし冷涼な気候でも栽培できて豊作になりやすい特徴は、生産者にとってメリットになります。ブドウの粒が大きく皮が薄いため果汁の割合が高くなり、一般的な赤ワインよりも色が明るくなりやすいこともガメイの特徴です。
ガメイ品種をもっとも栽培しているのは、ブルゴーニュ地方南端のボジョレー地区です。ボジョレー地区で作られる有名なワイン「ボジョレー・ヌーヴォー」に使われるブドウは、ガメイのみが許可されています。
ほかの有力なガメイの産地に挙げられるのは、ロワール地方トゥーレーヌ地区です。この地区では赤・白・ロゼ・スパークリングなど、バラエティ豊かなワインが作られています。ボジョレー地区では、ガメイを単体で使用して赤ワインに仕上げることがほとんどです。しかしトゥーレーヌ地区においてガメイは、ロゼワインやスパークリングワインの原料となったり、カベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンなどとブレンドされたりして使われています。またスイスでも、ガメイを栽培してワインを作っている地域が見られます。
ブルゴーニュ地方ボジョレー地区で作られる「ボジョレー・ヌーヴォー」は、かつて日本で一大ブームを巻き起こしたワインです。近年、ボジョレー・ヌーヴォーをめぐる賑わいはずいぶん落ち着きましたが、11月第3木曜日の解禁日が近づくのを毎年楽しみにしているファンは少なくありません。
このボジョレー・ヌーヴォーに、必ず使われているブドウ品種がガメイです。成熟までが早いガメイの特徴を利用して早期に収穫し、さらにマセラシオン・カルボニックという製法で醸造することで、11月の解禁日に間に合うよう作られています。
マセラシオン・カルボニックとは、ブドウを房ごと密閉タンクに入れ、二酸化炭素が充満した中で発酵させる醸造方法です。マセラシオン・カルボニックで作られたワインは色が濃くなりますが、渋みや苦味が少なく、酸がまろやかでフレッシュな味わいを楽しめます。マセラシオン・カルボニックを用いると通常のワインよりも短期間で仕上がるため、ボジョレー・ヌーヴォーに最適な作り方なのです。
ボジョレー・ヌーヴォーを飲んだことがあっても、ガメイの名前を聞いてピンとくる日本人は、ワインを好む人以外ではほとんどいないでしょう。しかしボジョレー・ヌーヴォーの原料は100%ガメイなので、ガメイは日本人とゆかりが深いブドウであると言えます。
ガメイから作られるワインの一番の特徴は、フレッシュで軽やかな味わいです。色は淡く明るめで、イチゴやラズベリーといったベリー系の香りを感じます。低めのアルコール度数と穏やかな渋み、程よい酸味とフルーティーな味わいで飲みやすいワインです。少し冷やして飲むこともあり、カジュアルなシーンにおすすめします。
ボジョレー・ヌーヴォーが日本人に受け入れられたのは、日本人が飲み慣れないヨーロッパの伝統的な重めのワインではなく、ライトで飲み心地のよいワインだったためではないでしょうか。フレッシュな風味を楽しむガメイは長期熟成には向かないため、できるだけ早く飲むようにしましょう。
ガメイを使いながらも、熟成向けの高品質なワインも存在します。ボジョレー地区の北部にあるクリュ・デュ・ボジョレーで作られるガメイは、最高ランクのワインです。数年熟成させた上級のガメイは色合いが深くなり、しっかりとしたタンニンが感じられ、ピノ・ノワールを彷彿とさせるような華やかな香りや複雑な味わいを楽しめるでしょう。このようなガメイは、大きめのグラスでじっくり時間をかけて味わってください。
ガメイの特徴や魅力を知ると、ワインを飲んでみたくなりますね。ここからは、ガメイが使われたワインを5種類紹介します。ガメイらしいフレッシュな早飲みワインから、凝縮感のある少し重めのタイプまでそろえました。それぞれのワインに合わせて食べたいおすすめの料理も紹介するので、ガメイと一緒に味わってみてください。
¥2,873(税込)〜/赤/フランス
アンリ・フェッシは、130年以上ボジョレーにてワインを作り続けている老舗ワイナリーです。手摘み収穫と伝統的な醸造方法にこだわり、上質なワインを送り出しています。2022年のボジョレー・ヌーヴォーはイチゴのいきいきとした香りと、フレッシュなラズベリーの豊かな果実味、やさしい口当たりが楽しめる仕上がりです。
フレッシュで軽やかな味わいを感じるこのワインには、キノコのマリネや鶏肉のトマト煮込みなど、軽く酸味があって重くなりすぎない料理が合います。
¥3,630(税込)〜/赤/フランス
1880年にボジョレーの地に創設された、ブルゴーニュを代表するワイナリーがジョゼフ・ドルーアンです。伝統を守りつつ有機栽培やビオディナミ農法を取り入れ、エレガントでバランスのとれたワイン作りに努めています。ラズベリーのようなフルーティな香りやなめらかな舌触りを感じ、果実味と酸味の調和がとれた飲みごたえのある1本です。
スムーズで飲みやすいワインなので、カプレーゼやソーセージと相性がよいでしょう。また、うなぎや肉豆腐といった和食にも合わせられるワインです。
¥3,052(税込)〜/赤/フランス
シャトー・デ・ジャックは、ブルゴーニュの名門ドメーヌであるルイ・ジャドが所有するワイナリーです。昔ながらの醸造方法にこだわり、テロワールを反映するワイン作りを目指しています。ミディアムボディですが、フルーティーで華やかな香りを感じるフェミニンなガメイです。
ガメイでありながらほどよくボディ感のある赤ワインなので、デミグラスソースのハンバーグや赤身肉の料理に合わせるとよいでしょう。
¥4,441(税込)〜/赤/フランス
「ボジョレーの帝王」とも呼ばれる、ジョルジュ・デュブッフの名を掲げるヴィラージュ・ヌーヴォーです。ボジョレー中の生産者から良質なキュベのみをより集め、凝縮感のある味わいにアッサンブラージュしています。ブドウ本来のフレッシュさを残しつつ、深みのある味わいが特徴です。
フレッシュ感はありますが、やや重みのある落ち着いた味わいのため、ハムやソーセージなどのシャルキュトリーに合わせるのがおすすめです。
¥7,018(税込)〜/赤/フランス
ブルゴーニュの女性醸造家、ラルー・ビーズ・ルロワが経営する名門ドメーヌ、ルロワ。ずば抜けたテイスティング能力を持つマダム・ルロワによる、上質なボジョレー・ヌーヴォーです。ガメイらしい、イチゴやカシスのような豊かな風味を濃密に感じます。繊細で気品あふれる味わいに、思わず魅了されてしまう1本です。
濃密さや凝縮感のあるこのワインは、赤身肉の料理に合わせるのがおすすめです。ラクレットチーズの、少し強めの香りやミルク感のある繊細な味わいともよく合います。
ボジョレー・ヌーヴォーに使われていることで、意外と日本人になじみが深いガメイからは、フレッシュで飲みやすいワインが作られます。渋みが少なくフルーティーな味わいなので、肩肘張らないシーンでライトに楽しめるワインと言えるでしょう。この記事を読んでガメイの特徴を知ったうえで、その軽やかな味わいをぜひ体験してみてください。
※商品価格は、2022年10月14日時点での情報です。