
2021年11月10日
グルナッシュは世界的に生産量が多いワイン用品種であり、主に赤ワインのブレンドに使われているブドウです。グルナッシュはどのような味わいのブドウか、イメージできるでしょうか?この記事ではグルナッシュの品種的特徴やワインの味わい、主な産地について紹介します。
グルナッシュは、世界的に栽培されている赤ワイン用ブドウ品種です。単一品種で辛口ワインに仕上げられることもありますが、主にシラーなどスパイシーな風味を持つブドウ品種とブレンドされることが多くあります。ロゼワインや甘口ワインにも使われ、さまざまなワインに変化できる素質を持つブドウです。
グルナッシュがよく育つのは、日照時間が長く乾燥した土地です。もとは病気になりやすい品種ですが、気候と土壌が合えば放っておいても実をつけるたくましさを発揮します。しかし剪定や摘果などをおこなってきちんと手を入れてやることで、長期熟成に耐える質のよいワインになるポテンシャルを秘めています。
グルナッシュはほかのブドウよりも発芽時期が早く、より長く栽培期間を取れるため、熟して糖度が高くなりやすい品種です。アルコール発酵は糖を使っておこなわれるので、グルナッシュから作られるワインはアルコール度数が高くなりやすいという特徴が見られます。その高い糖度を活かして、甘口ワインが作られるのです。
グルナッシュは、突然変異しやすい品種でもあります。一般的にグルナッシュと呼ばれる黒い果皮を持つもの(グルナッシュ・ノワール)以外に、白い果皮を持つグルナッシュ・ブランや、ピンク色の果皮を持つグルナッシュ・グリも存在しています。
グルナッシュは原産地であるスペイン北東部のアラゴン州から、しだいに南フランスやイタリアへと広がっていきました。近年ではアメリカやオーストラリア、南アフリカやモロッコなど、世界各地の温暖な地域で栽培されています。
地中海に面したフランス南部のラングドック・ルーションや、プロヴァンスで栽培されている主要品種がグルナッシュです。夏は暑く乾燥し、冬は温暖な地中海性気候は、グルナッシュの生育にとても適しています。
コート・デュ・ローヌ地方南部のシャトーヌフ・デュ・パプは、グルナッシュのもっとも有名な産地です。手のひらほどの大きな石が赤い粘土質土壌の上をごろごろとおおい、植物が成長できるのか疑いたくなるような光景が広がっています。しかし通気性と水はけがよく、大きな石が日中の太陽の熱を吸収して夜間に放出するなど、ブドウの生育にプラスになる条件がそろった土壌なのです。ここではグルナッシュを主体として、力強いものからエレガントで洗練されたものまで幅広いワイン作られています。
ラングドック・ルーション地方では、グルナッシュを使ったV.D.N.(ヴァン・ドゥ・ナチュレル)と呼ばれる天然の甘口ワインが有名です。このワインは糖分を追加して作るのではなく、発酵途中に蒸留酒を添加して発酵を止め、果汁由来の糖分を残す方法で作られています。この地方で作られるV.D.N.にはバニュルス、モーリー、リヴザルトがあります。
プロヴァンス地方では、グルナッシュを主体としてムールヴェードル、シラー、サンソーといった品種をブレンドして作られたロゼワインが人気です。
スペインでは、グルナッシュは「ガルナッチャ」と呼ばれて親しまれています。これはグルナッシュから作られたワインの色調が、宝石の「ガーネット」に似ていることに由来した名前です。
グルナッシュの原産地であるアラゴン州のほか、ピレネー山脈の南側にあるナバーラ州やリオハ州、カタルーニャ州で主に栽培されています。アラゴン州ではグルナッシュのみでワインに仕上げることが多くありますが、リオハ州ではスペインの固有品種テンプラニーリョとブレンドされることがほとんどです。
リゾート地として知られるサルディーニャ島で栽培されるグルナッシュからは、赤ワインやロゼワインが作られています。グルナッシュは現地で「カンノナウ」と呼ばれて、古くから親しまれています。
グルナッシュから作られるワインの特徴は、やわらかな口当たりと豊かな果実味です。タンニンが少なく、糖度が高くなる傾向があるので、ワインを飲み慣れていない人にもおすすめしやすいワインです。
色素の量が多くないためワインの色合いは明るく、香りはベリー系の赤い果実を思わせます。イチジクやプルーンといったドライフルーツのような凝縮された果実感が印象的で、カカオやクローブなどのスパイス、土っぽいニュアンスを感じることもあります。
グルナッシュ単一でワインを作ると、多くの場合ジューシーでまったりと飲みやすい早飲みタイプに仕上がります。ほかの品種とブレンドすると、コクがありつつタンニンが少ないライトなタイプから、高いアルコール度数としっかりしたボディを持つ長期熟成向きのタイプまで、さまざまなワインになってしまうのがグルナッシュの特性です。
単一品種やブレンド、ロゼや甘口ワインなど、多様なワインに変わってしまうグルナッシュ。グルナッシュの良さが感じられる、おすすめワインを紹介します。
¥1,298(税込)〜/赤/フランス
かわいいラベルデザインが目を引くこの赤ワインは、ラングドック・ルーション地方にてグルナッシュ100%で作られています。きれいな酸や凝縮感のある果実味があり、タンニンは控えめで飲みやすく、旨安ワインとして人気が高い1本です。軽いおつまみと一緒に、カジュアルに楽しんでください。
¥1,338(税込)〜/赤/スペイン
ボデガス・ボルサオは、グルナッシュの原産地であるスペイン、アラゴン州にあるワイナリーです。樹齢の高い古木から収穫されたグルナッシュを使い、繊細な酸と豊かな果実感が味わえるワインを作り出しています。熟したベリーや花の香りが感じられ、心地よいタンニンと酸が口の中に広がるワインです。
¥2,310(税込)〜/赤/イタリア
イタリアのサルデーニャ島北部に位置するアルゲーロにあるワイナリー、セッラモスカ。自社畑の広さはヨーロッパ最大級を誇り、カンノナウ(グルナッシュ)といったサルデーニャ島の土着品種の栽培に力を注いでいるワイナリーです。木樽で2年間熟成させたこのワインは、ベリーやすみれを思わせる香りや、まろやかで豊かな果実感を楽しめます。
¥1,950(税込)〜/ロゼ/フランス
ローヌ地方の有名生産者である、シャトー・ド・セグリエスによって作られた色調が美しいロゼワインです。グルナッシュが50%、そのほかサンソー、クレレット、シラーをブレンドして作られています。イチゴやサクランボをイメージする甘く心地よい香り、適度なタンニンと上品な酸、フルーティーな果実味が調和した味わいは料理によく合います。
¥6,133(税込)〜/赤/フランス
シャプティエは一貫した家族経営のもと、テロワールを尊重したワイン作りを貫いている、ローヌ地方を代表するワイナリーです。このワインはグルナッシュを主体に、シラーとムールヴェードルがブレンドされています。香りは黒い果実やコーヒー、シナモンを思わせます。フルーティーな味わいの中にもスパイシーさやミネラル感があり、繊細で複雑な風味を楽しめる1本です。
糖度が高く果実感のあるグルナッシュのワインには、甘みのあるソースやたれと合わせた肉料理がおすすめです。それほどボディが強いワインではないので、ハーブで香り付けした鶏肉や豚肉のグリルも合うでしょう。地中海性気候の土地で育ったグルナッシュは、地中海地方の料理と合わせれば間違いありません。魚介のうまみがたっぷり詰まった地中海の魚料理、ブイヤベースと一緒に味わってみてください。現地の人々が生活の中で気軽に飲んできたワインなので、チーズやハムといった手軽なおつまみと合わせるだけでも十分楽しめるでしょう。
グルナッシュとほかの品種をブレンドした、しっかりした味わいのワインには、牛のほほ肉やすね肉の赤ワイン煮込みのようなコクのある料理がおすすめです。ワインにスパイシーな風味を感じるので、香辛料を使った羊料理もよく合います。
グルナッシュを使った甘口ワインと、濃厚なチョコレートのマリアージュにも挑戦してみてください。甘みや苦味が絶妙に溶け合い、大人の味わいを堪能できるでしょう。
単一品種のワインからスパイシーなブドウとのブレンド、ロゼワインや甘口ワインまで、グルナッシュはさまざまな顔を持つブドウ品種です。タンニンが控えめで飲みやすいワインなので、カジュアルなパーティーに持ち寄るワインや、ワイン初心者と飲む1本におすすめします。グルナッシュのやわらかで豊かな果実味に、癒されてみてはいかがでしょうか。
※商品価格は、2022年10月22日時点での情報です。