2022年11月09日

ボルドー、温暖化でメドックに白が認められる


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皆様こんにちは、インポーター365wineの大野みさきです。各国のワイン産地では、まことしやかに地球温暖化の影響を受けています。世界有数の甘口ワインの銘醸地であるドイツでは、近年、特に2019年は過去2番目の暖冬に見舞われ、ぶどうが凍らない事態に陥りました。そのためアイスワインの生産が著しく困難となり、数社しか造れなかったと報告されています。冷涼なブルゴーニュでさえも、南向きの畑の果実は過熟ぎみとなり、フレッシュ感を確保した栽培マネジメントが必須となっています。

ワイン造りへの影響


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温暖化がワイン造りに与える最大の影響は、ワインのスタイルの変化です。つまり、ぶどうが成熟することにより、以前のような産地の特徴が得られなくなるということです。“○○らしさ”の欠如から、ワインは全く違うスタイル(味わい)になります。気温の上昇に比例して糖度が上昇、アルコール度数も高く、逆に酸は乏しくなる傾向があります。また、気候が変わるので、栽培適応品種も変化していきます。ワインのスタイルだけでなく、地球環境の生態系そのものが変わってしまうと危惧されています。

ブドウ品種

そんな中、ワイン業界も積極的に動いています。シャンパーニュでは酸度が残る品種の植え替えを検討しています。ブルゴーニュでは糖度(アルコール度数)を抑えたクローンぶどうの研究が行われたり、下に挙げた新しい品種で実験的に栽培を始めています。

■黒ぶどう 6品種
シラー Syrah
カベルネフラン Cabernet Franc
ネッビオーロ Nebbiolo
クシノマーヴロ Xinomavro
セザール Cesar
トゥレソ Tressot

■白ぶどう 4品種
Sacy サシー
Roublot ルブロ
Melon ムロン
Aubin オーバン

新品種導入

過去30年間で平均気温が1.5度上昇したボルドーでは、ぶどうの生育サイクルの短縮化、収穫期の前倒し、果実の熟度やアルコール度数の上昇が問題となっています。アルコール度数においては、20年前は平均12.5%前後で、年によっては補糖に頼っていました。ところが10年ほど前から状況が激変し、今ではアルコール度数が14.5%以下になることは殆どありません。そんな危機的状況下のボルドーでも、AOCボルドーおよび、ボルドー・シュペリウールに、気候変動に適応する、下に挙げた6種類のぶどう品種が新たに導入され、2021年の春には、その植え付けが開始されました。

■黒ぶどう 4品種
アリナルノア Arinarnoa
カステ Castets
マルセラン Marselan
トウリガ・ナショナル Touriga Nacional

■白ぶどう 2品種
アルヴァリーニョ Alvarinho
リリオリラ Liliorila

ワイン法

適応品種の導入だけでなく、ワイン法においてもメドック、オー・メドック、リストラック・アペラシオンの理事会が動き始めました。今年7月に開かれた会議では、メドックの白ワインにAOCアペラシオンを定めると決まりました。ボルドーの“AOC Medoc”は、今まで赤ワインしか認められていませんでしたが、正式に認可が下りればAOCメドックの白ワインも誕生します。もう少し詳しく説明すると、現行の法ではメドックの白ワインは、AOCメドックと名乗れません。メドックの使用可能色に白が認められていないからです。そのためAOCボルドーとして販売されています。これをわかりやすく例えると、「山梨ワイン」と「勝沼ワイン」、または「AOCブルゴーニュ」と「AOCマルゴー」など。より限定された範囲の方が、ブランド価値が高く評価されるのです。

最後に


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予てからボルドーは赤ワインで有名な産地です。カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、カベルネ・フランなどの黒ぶどう品種が容易に浮かびます。意外と知られていませんが、かつては白ぶどうが盛んな産地でした。生産者団体の会長であるクロード・ゴーダンによると、メドックでは格付けシャトーのみならず、生産者全体で大量の白ワイン(辛口・甘口)を造っていたそうです。白ぶどうが主として栽培されたのも、1930年の200万本をピークに1960年代まで。そして、現在(20221月)メドックには169haの白ぶどうの木があり、白ワインの生産量も6000hl=80万本)に増えることが予想されています。当局は認定に向けて進めており、早ければ2023年前半にはAOCメドックに白が加わります。新しい白ぶどう品種が導入され、白ワインとスパークリングラインの人気も後押しし、このAOCメドック認定は、ボルドーにおいて強力な切り札と成ることでしょう。
地球を取り巻く環境の変化にも気を配りながら、それぞれができることに取り組み、AOCメドック白を楽しみたいと思います。それでは皆様、ごきげんよう!


365wine 大野みさき

ANA国際線CA7年の在職中にワインに魅せられ、その後は渡仏しワインの勉強をする。2014年に帰国し、翌月にワイン輸入会社365wine株式会社を設立。365(毎日)ワインを楽しんでもらいたいという想いからの社名。スロヴェニアワイン専門のインポーター。現在はママさんスタッフを含め3名で、買い付けから輸入販売、全国の業務店営業やイベントで、スロヴェニアの魅力を各地に広める活動をする。「貴方と大切な方の毎日を笑顔にします!」をモットーに、一緒に働いてくれる仲間を募集中!
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