2023年10月2日

どうなるEU?2023年冬からワインの原材料の開示がスタート!今後、私たちにできること。

皆様こんにちは、インポーター365wineの大野みさきです。

聞くところによると、EUでは約300~400種類の添加物の使用がワインに認められています。(アメリカでは60~70種類程度)今までは、こうした原材料の表記をする必要がなかったのですが、2023年の12月8日からは、全ての添加物を開示しなければならなくなりました。

ワインの添加物

太古、サルだった時代から人類はワインを造り、今やその英知は行き着くところまで来ました。最先端の技術を用いれば、ぶどうを使わなくとも「合成ワイン」を造ることができます。分子レベルからアルコールを分析して、天然資源から味分子を作り出します。それをエタノールと水に加えることでワインを再現します。できる限り本物に似せるまで、形成された化合物に対して実験を重ねます。そうして合成されたワインの原材料は、水、エタノール、ワインを模倣した味分子、炭酸化された中性スピリッツ、天然香味料、カラメル色素、着色用ベータカロテンです。

合成ワインは極端な例ですが、一般的なワインでも様々な原材料が使われています。砂糖、卵白、動物由来のゼラチン、魚の浮き袋、化学物質、亜硫酸、保存料、香料、色素・・・・その数、なんと数百種類!実に多様な添加物が用いられます。それらが最新の醸造技術と組み合わされれば、産地、品種、アルコール度数、色合い、香り、味わいなどがコントロールでき、思い通りのものを生み出すことが可能なのです。

日本では食品衛生法において、ワインに使用した添加物は原則、全てを表示することが義務付けられています。輸入検疫では厚生労働省が認める公的検査機関で発行されたワインの成分表を提出しなければなりません。原材料が「ぶどう」と「亜硫酸」だけなら問題はないのですが、税関の職員の話によると、本当に様々なものがワインに添加されているとのことです。企業名は出せませんが、ワイン好きの誰もが知っている某社では、その種類が半端ないのだとか。通関士(輸入申告する業者)も税関(輸入許可を下す国)も、それはもう大変です!

EUの原材料情報開示

兼ねてからEUではワインに対しては例外で、原材料に関する情報の開示を免れて来ました。添加物を表記しなくても許されるなんて、そこにどんな権力が結びついているのか、長らく不思議に感じていました。そんなダークな業界に新たな進展です。今年の12月8日以降は原材料を開示しなければならなくなってしまい、亜硫酸以外のものを添加しているワイナリーは大慌てです!ワインの添加物には2種類あります。ひとつは収穫後の製造工程で使われる加工助剤(清澄材の卵白など)です。口にする時にはその成分は残っていないので、バックラベルへの原材料の表記は不要でした。もうひとつは消費する時までワインの中に存在し続ける、亜硫酸をはじめとする食品添加物です。国ごとの規定により、使用許可量や表記の義務が発生します。それら全ての原材料を表示する必要が出てきました。

しかし、ここには大きな落とし穴があります。ワインは他の食品と同じように扱えないという理屈の通らない理由から、ラベル上では表示の義務がないというのです。インターネット開示が認められているので、商品本体では引き続き原材料には触れず、掲載しているQRコードからサイトで公開するという、なんとも卑怯な方法がまかり通るのです。こうなってはウェブ上での公開が主流となる見込みです。

ナチュラルワインを造る生産者らは、「殆ど添加物を使っていないワインならラベル表示でこと足りることでしょうが、一般的なワインでは辞書がいるだろう。だからQRコードによる電子表示が必要なのでは」と見解を表しています。

ワインのラベルのこれから

ワインは他の食品とは異なり、製造年月日、賞味期限、原材料、糖質、カロリー表記もないブラックボックス状態です。さらに今回の件では、単なる表記の問題だけに過ぎず、農薬や化学肥料を使用する従来の農業への警鐘でもあるのではないでしょうか。食の安全、環境保全、消費者の知る権利など、ワインを通して地球規模の大きな課題を垣間見た気がしてなりません。

最後になりましたが、原材料がぶどうと亜硫酸だけのワインは品質が高く、「無添加ワイン」と称されるものが必ずしも美味しいのかと言えば、そうではありません。必要であるから添加物を使っているだけのことであって、添加物が悪だというのは、全くの誤解です。最新のテクノロジーを用いて、醸造を行わず短期間で、しかも安価にワインができるのです。光と影の部分で、私たちはその恩恵も享受しているからです。

原料表記が義務化された後も、当然EUワインは日本に輸入されるでしょう。私たちにできることは、まず関心を持つことです。少しバックラベルを気にかけ、QRコードがついている場合は、是非アクセスしてみて下さい。ワイン業界の今後の進展を、固唾を飲んで見守っていこうではありませんか。それでは皆様、ごきげんよう!


365wine 大野みさき

ANA国際線CA7年の在職中にワインに魅せられ、その後は渡仏しワインの勉強をする。2014年に帰国し、翌月にワイン輸入会社365wine株式会社を設立。365(毎日)ワインを楽しんでもらいたいという想いからの社名。スロヴェニアワイン専門のインポーター。現在はママさんスタッフを含め3名で、買い付けから輸入販売、全国の業務店営業やイベントで、スロヴェニアの魅力を各地に広める活動をする。「貴方と大切な方の毎日を笑顔にします!」をモットーに、一緒に働いてくれる仲間を募集中!
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/

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