2023年10月2日

「やがて中国ワインは世界を驚かせるだろう」習近平の号令の下に整う寧夏ワイン。紫の奇跡は起きるのか?!

皆様こんにちは、インポーター365wineの大野みさきです。今日はワイン業界が今、大注目していて、いずれボルドーを追い越すかもしれないポテンシャルを秘めた、ワイン産地をご紹介しましょう。

ズバリ、中国の【寧夏回族自治区/Ningxia】です。

私がその名前をはじめて耳にしたのが2016年です。香港で開催された国際的な試飲会で、80種類の寧夏のワインを試された方から、その水準の高さはいつかボルドーを抜くであろうと聞かされたものですから、日本でまだ見ぬワインに心躍りました。現在でこそスロヴェニアワイン専門でインポートしていますが、当時、輸入を視野に入れ、現地視察を本気で考えていました。寧夏ワインにはその扱いを検討する余地が十分にあったのです。

寧夏ワイン

寧夏回族自治区(ねいか・かいぞく・じちく)は、中華人民共和国にあります。大陸の中央部の北、モンゴルからほど近い、黄河の中流域に位置しています。首府は銀川(ぎんせ/YinChuan/インチュアン)です。この土地にモエ・エ・シャンドン社などの欧米の資本が参入しました。習近平国家主席の「道は正しい、歩き続けよ!」との号令と共に、昨今、急ピッチでワイン造りが進められています。

20年前は荒れ地だった寧夏が、今やオアシスに変貌を遂げているというから驚きです。賀蘭山脈/Helan Mountainsに沿って、南北に黄河が流れている特殊な地形をしています。この乾燥した砂漠地帯が、ワイン用のぶどう栽培にはドンピシャだそうです。昼夜の温度差が大きく、冬場の平均気温はマイナス8℃~マイナス10℃に達する一方で、夏場は30℃と暑く、年間降水量も200ミリと少なめです。そんな好条件の気候から、「ぶどう栽培の黄金地帯」と褒め称えられています。3万9,000haのぶどう農園が広がり、230軒弱のワイナリーが点在しています。

寧夏にぶどうが持ち込まれたのは1997年頃です。16品種が試験的に栽培されましたが、ワイン産業が本格化したのは、ここ10年のことです。2027年までに栽培面積を6万7,000haに拡大し、生産量は現在の1億4,000万本/年から3億本を目指します。寧夏政府はワインツーリズムにも力を入れ、国営新華社通信は、「紫の奇跡が起きる!!」と国を挙げての大、大、大PRをします。それもそのはず。習国家主席は、国策としてのワイン産業に期待を寄せ、3度に渡って寧夏を訪問する力の入れようです。初訪問は副主席だった2008年。その後、主席となった2016年、「寧夏のワインは市場の潜在力が大きい」と。2020年には「中国ワインはやがて世界を驚かせるだろう」とコメントし、ブランド力向上を指示しました。この言葉は街のスローガンとなり、ワイン産業の推進に一役買っています。

寧夏で生み出される赤ワインのトップクラスは、一級のワイン産地として通用するというのですからビックリです!カベルネソーヴィニョン、メルロー、シラー、なかでもシャーロンジュウ/蛇龍珠/Cabernet Gernischt(最新のDNA鑑定でカルメネール/Carmenereと判明)は、“世界を驚愕させるであろう赤ワイン”とまで言われています。“並のボルドーワインでは太刀打ちできない実力を備えているワイン”とも評論家の間では称えられています。色合いと風味が濃厚で、凝縮感と果実味もあり、長期熟成にも耐えられるポテンシャルを備えているそう。果たしてそのお味はいかに?!全世界が興味津々であることは、どうやら間違いなさそうです。

一方でワイン産地としては期待の持てるエリアですが、中国沿岸部と比べると、同自治区の所得は10年前と変わらず、国内の平均を下回っています。ワイン産業によってある程度の雇用が創出されたものの、2022年の年間所得は約2万9,600元(約57万円)と、特段ワインで潤うわけでもなく、まだまだ貧しい田舎町です。また、自治区の人口の30%を占める回族はイスラム教徒です。ムスリムには欠かせない、モスク(イスラムの礼拝堂)のミナレット(塔)とドームは、中華風に建て替えられ、「中華民族は一つの家族」という標語が掲げられています。宗教の中国化を図る習政権で、厳しく統制を受けているのが現状です。

最後に

共産主義国家と自治区、労働者の賃金や宗教規制の問題・・・・まだまだ寧夏のワインが世界に流通していないことからも、政治的な思惑があるのか、生産量が追い付いていなのか、その理由はわかりませんが、この大国に優れたワインが眠っていることだけは確かです。

アジアでは中国に続き、インドも着々とワインのグローバル化を進めています。日本も後れを取ってはならないですね!今日は世界が気になるワイン産地、寧夏についてお伝えしました。それでは皆様、ごきげんよう!


365wine 大野みさき

ANA国際線CA7年の在職中にワインに魅せられ、その後は渡仏しワインの勉強をする。2014年に帰国し、翌月にワイン輸入会社365wine株式会社を設立。365(毎日)ワインを楽しんでもらいたいという想いからの社名。スロヴェニアワイン専門のインポーター。現在はママさんスタッフを含め3名で、買い付けから輸入販売、全国の業務店営業やイベントで、スロヴェニアの魅力を各地に広める活動をする。「貴方と大切な方の毎日を笑顔にします!」をモットーに、一緒に働いてくれる仲間を募集中!
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/

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