
2022年11月16日
"オレンジ" ワインブームが到来したといわれて早数年。様々な銘柄がショップの棚を賑わし、もはや飲食店のワインリストに "オレンジ" ワインが記載されるのも常識に。食通はこぞって "オレンジ" ワインに舌鼓を打っています。私がお手伝いしているショップでもオレンジワインをお求めの方が日々足を運んでおり、その数は日に日に増えています。
しかしブームがきたとはいえ、まだまだ一般的に "オレンジ" ワインの知名度はあまり高くないのではと思うのです。「オレンジワインには柑橘類のオレンジが使われている」と勘違いしている方もいらっしゃいます。決して勘違いが悪いのではなく、勘違いしてしまうほどややこしいのが問題なのではないでしょうか。そう、 "オレンジ" ワインはややこしいんです。ややこしくて美味しいんです。
今回は今一度 "オレンジ" ワインの基本にふれつつ、そのややこしい魅力に迫ってみたいと思います。タイプ別のおすすめ銘柄のご紹介もあるので、ぜひチェックしてくださいね!
"オレンジ" ワインを理解するために避けて通れないのは、ワインの造り方に関する知識です。まずはざっくりまとめてみましょう。
これにより、透明感のあるデリケートな香りのワインになる
これにより、色がつき渋みのある複雑な香りのワインになる
白ワインと赤ワインでは原料となるブドウの種類が違うのはもちろんですが、上記「2、3」の工程が大きく異なることがわかります。果汁だけで発酵させるか、果皮やタネなどを漬け込みながら発酵させるか。そこが大きな分かれ道です。
そもそもブドウに含まれる成分は、ものによって存在する場所が違います。これまたざっくりですがまとめてみましょう。
糖分以外の要素は果皮やタネの付近に多く存在していることがわかります。赤ワインの造り方で造る方が果皮やタネから様々な成分がワインの中に溶け込むので、より複雑なテイストに仕上がることが想像できますよね! どちらがいいという話ではなく「違い」に注目してください。
さて、本題に戻りましょう。 "オレンジ" ワインとは一体どんなワインなのか!?
一般的には "オレンジ" ワインとは「白ワイン用のブドウ(白ブドウ)を使って赤ワインと同じ造り方で造ったワイン」のことです。具体的にいうと、白ブドウを破砕したあと果皮やタネをつけこんだまま発酵させ、色素成分や渋み成分、様々な香り成分が溶け込み、味わいや香りに厚みと複雑みが生まれたオレンジ色の白ワインです。
区分的には白ワインだけど色合いがオレンジ色だから "オレンジ" ワイン。意外と単純なネーミングですよね。でもこの単純さが冒頭に書いた「柑橘類のオレンジが使われている」という誤解をうみ、ややこしさの一因になっているのも事実。世界で最初に "オレンジ" ワインと呼んだのはイギリスのワイン商の男性だといわれています。歴史が深いように感じますが2004年のことなので、実はつい最近です。彼が見たままずばり「"オレンジ" ワイン」と呼んだことが全てのややこしさの始まりだったなんて、まるでコントみたいな実話です。
別の呼び方で「アンバーワイン(琥珀色のワイン)」と呼ばれることもあります。こっちの方がダイレクトに色をさす呼び名なので、個人的にはしっくりくる気もしますけど…… 。今では「"オレンジ" ワイン」に愛着を感じてしまっているので、これからもそう呼び続けることでしょう。
ややこしさは呼び名だけではありません。 "オレンジ" ワインの造り方をご紹介しましたが、白ワインの醸造プロセスで果皮やタネから様々な成分を抽出する方法は、もう一つあります。整理すると、
果皮やためをつけこんだまま発酵を進めること。上記で説明した "オレンジ" ワインの造り方の「果皮やタネをつけこんだまま発酵させ」るという部分は、専門用語でマセラシオン(醸し)といいます。
ブドウにプレスして取り出した果汁に対して、果皮やタネを漬け込むこと。あくまで果汁の段階で漬け込むのみ。そのまま発酵まで進めるマセラシオンとは異なります。
ワインはアルコール発酵の過程で酵母の働きにより様々な化学反応がおき、特に香り成分がぐんと増えるといわれます。香りの元となる物資が多く含まれている部位をまるごと漬け込んで発酵を進めるマセラシオンをすると、より複雑な香りのワインにしあがるわけです。そういう意味ではマセラシオンをした方が "オレンジ" ワインっぽさが際立つわけですが、スキンコンタクトでも一定の色味成分や渋み成分などを取り出すことができるので、見た目や味わいの雰囲気が "オレンジ" ワインに近いスキンコンタクトした白ワインも存在します。つまり一言で白ワインといっても個性はグラデーションになっており、外観や味の第一印象だけでは "オレンジ" ワインか "オレンジ" ワインじゃないかの判断はなかなか難しいんです。
果汁だけで発酵した一般的な白ワイン ⇔ スキンコンタクトした白ワイン ⇔ "オレンジ" ワイン
ブドウ品種によってはマセラシオンもスキンコンタクトもせず、ただプレスして果汁を発酵させただけなのにオレンジ色で複雑な香りを備えたワインになるものもあります。そういうワインも "オレンジ" ワインのくくりで販売しているお店もあるし、逆に "オレンジ" ワインのカテゴリーを設けずに十把ひとからげにして白ワインと表記しているお店もあるし、輸入ワインは "オレンジ" ワインであっても「ビアンコ」とか「ブラン」とかしか書いてないし、さあ、ややこしい。
結局 "オレンジ" ワインってなんなんでしょう。造り方で規定した方がわかりやすいと思いつつ、私としては味わいや香りの個性の傾向として捉えるのがいいんじゃないかなと思っています。よくいわれる "オレンジ" ワインの特徴は、
etc.。このような特徴が当てはまる白ワインのことを "オレンジ" ワインとして愛でるのがしっくりきます。これらの特徴はマセラシオンをすることでより濃く現れるので、結局は造り方と密接に関わっているわけですけれど……。
うーん、ややこしい。そして美味しくて素晴らしい。それが "オレンジ" ワインなのです。
最後におすすめの "オレンジ" ワイン銘柄をご紹介します。どれも先ほどの特徴に当てはまるものばかりですが、その中でもいくつかのタイプに分けることができるので、好みにあわせてお手にとっていただけると幸いです。
ノストラル・ビアンコ 2021(イタリア)
造り手:ミケーレ・ロレンツェッティ
マセラシオン 2022(フランス)
造り手: ドメーヌ・シャルル・フレイ
トラゴラルゴ・ブランコ 2021 (スペイン)
造り手: カーサ・バラゲール
ホワイト・ナチュラ 2019(スロベニア)
造り手:ペトリッツ
吉田すだち ワインを愛するイラストレーター
都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定
ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
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