
2020年12月26日
2022年03月30日
先日、Winomyのオンラインワイナリーツアーに参加しました。オンライン会議ツール「Zoom」を使って現地と中継を結びつつ、ワイナリーやワインについて詳しく解説してもらう……というイベントです。今回の舞台は、イタリア最高峰の “泡” と呼び声の高い「フランチャコルタ」を生み出すワイナリー「カ・デル・ボスコ」。フランチャコルタはシャンパーニュと同じ製法で造られるイタリアのスパークリングワインです。
Winomyのオンラインワイナリーツアーでは、ワイン付視聴券が用意されています。それを購入すればイベントまでにワインが届き、ワインを味わいながら解説を聞くことができます。今回届いたカ・デル・ボスコのワインはこちら!
フィルムに包まれたボトルがまるできらきら光る宝石のようで、箱を開けた瞬間からリッチな気分にひたらせていただきました。ボトルの右側にあるのはカ・デル・ボスコ社オリジナルの「シャンパンストッパー」です。ワイン付視聴券購入者限定のギフトとのこと。こんなのいくつあってもいいですからね、嬉しい限り。実際に使ってみたところ機能性も抜群で、ここは敬意を評して「シャンパンストッパー」ならぬ「フランチャコルタストッパー」と呼びたいところです。
準備は万端、いざオンラインワイナリーツアーへ!
イベントは以下の流れで進みます。
1. 恒例の冒頭アンケート
2. カ・デル・ボスコのワインで乾杯(イタリア語で「サルーテ!」)
3. スライドを使ってワイナリーを詳しく紹介
4. ワイナリー中継
5. ワインテイスティング
6. 参加者からの質問コーナー
冒頭アンケートの結果、今回のツアー参加者のうち44%の人が「カ・デル・ボスコのことを知らなかった」と回答しました。「知っているワイン / 好きなワインのイベントだから参加した」という方と、「新しいワインの扉を開くキッカケ作りのためにイベントに参加した」という方が半々くらいいらっしゃる……ということですね。どちらにしても能動的にワインを楽しんでいる方が集うイベントなので、参加者が自由に書き込めるチャット欄も大盛り上がり。チャット欄に投げられる質問を読んでいるだけでも「ワイン好きな人はこういうところを気にしているのか〜!」と、勉強になります。
中継先のイタリアでお話をしてくれたのは、ワイナリーのホスピタリティスタッフを務めるフランチェスカ・ダポッロニオさんです。ワイングラスを前に微笑む姿がとても爽やかで、フレンドリーな女性でした。
ワイナリーからの中継に入る前に、そもそもフランチャコルタとはどんなワインなのか、カ・デル・ボスコとはどんなワイナリーなのか……基礎知識をつけるべく、詳しい説明を伺いました。以下に、その内容を掻い摘んでまとめます。
まずはフランチャコルタについて。フランチャコルタはイタリア北部、ロンバルディア州で造られるスパークリングワインです。ロンバルディア州の州都といえば、最先端ファッションの街としても知られるミラノ。そんなミラノから東に80kmほどいったところにフランチャコルタの産地があります。北のアルプス山脈から冷たい空気が吹きつけるため夜は冷え込みますが、すぐ近くにある湖の影響で昼間は温暖な気温が保たれ、この昼夜寒暖差がブドウの栽培に適しているそうです。土壌は岩や大きな石がゴロゴロしていて、痩せています。この “豊かではない土壌” が、ブドウ栽培には非常に適しているといいます。厳しく育てられると逆に伸びるタイプなのですね、ブドウってやつは。
フランチャコルタの生産者の中でも、カ・デル・ボスコは特に品質にこだわりを持つワイナリーのうちの1軒です。現オーナーのマウリツィオ・ザネッラ氏はフランチャコルタ協会の会長を歴任するほど、フランチャコルタの発展に貢献してきた人物です。彼は、「フランチャコルタはシャンパーニュに比べ歴史が短い。だからこそ、品質を追究することが重要だ。」という信念をもってフランチャコルタ造りを行っているのだとか。
ちなみにカ・デル・ボスコは「森の家」という意味です。マウリツィオ氏のお母様が森の中に1軒の家を買ったことからワイナリーの歴史が始まったため、カ・デル・ボスコという名前にしたのだとか。
予備知識をつけたらお待ちかねのワイナリー中継! 実際にフランチェスカさんがイタリアの地で、カメラ片手に歩きながら解説をしてくれました。お話を伺う中で特に印象的だったカ・デル・ボスコの魅力を2点、ピックアップします。いちワイナリーの特徴とあなどるなかれ。とても興味深く、人に話したくなるような内容です。
最も印象的だったのは、なんといっても「ベリースパ」。カ・デル・ボスコ社独自の特許技術とのことですが、皆さんはご存知でしょうか。 “ブドウの温泉” とも表現され、ブドウを泡で優しく洗い乾かすというとても斬新なシステムです。
百聞は一見にしかず、こんな感じでブドウを泡でマッサージするように洗って乾かすのだそうです。
システムの全体像はこんな感じ。
ブドウを洗い、乾かし、プレスする。この3工程の流れをシームレスに行うことができる画期的な施設なのだとか。洗うとブドウは綺麗になる一方、果皮に余分な水分がついてしまいます。そのため乾かすプロセスが最も重要で、研究に研究を重ねて乾燥システム(濡れたブドウに空気を吹きかけて水を飛ばしつつ、同時に水分の吸引を行うシステム)を作り上げたのだそうです。
当然「ブドウを洗うメリット」が気になります。 “自然派” ブームがわき起こり、ブドウの果皮についている自然由来の酵母(野生酵母)で発酵を行う生産者が増えていると耳にする昨今です。ブドウを洗うだなんて時代に逆行しているように感じますが、いったい何のために行っているのか……参加者からもそんな率直な疑問が投げかけられました。
フランチェスカさんの説明によると、こんなメリットがあるそうです。
・ブドウを洗うことで表面に付着した埃、土などの不純物が取り除かれる
・クリーンなブドウを使うと酸化のリスクが減る
・酸化のリスクが減るとSO2(酸化防止剤)の量を最小限まで抑えることができる
※果皮についている野生酵母は洗い流されるので、発酵に必要な酵母は別途添加している
これを聞いて「なるほど!」とうなりました。「意図しない酸化はワインの大敵なので防ぎたい」という想いと「SO2添加量をできるだけ減らしたい」という想いがかけあわさって出た答えが「ベリースパ」なのです。確かに理にかなっているやり方に思えますよね。
「ワインの鮮度にこだわる」取り組みは他にもあります。
カ・デル・ボスコでは45万本分に相当する量のワインをアッサンブラージュ(ブレンド)することができる巨大なタンクを使っています。
ワインは密閉された個別のステンレスタンクで6ヶ月間熟成され、その後この巨大なアッサンブラージュ専用のタンクに移されるのですが、その際「グラヴィティ・フロー」という方法を採用した機械によって一切酸素と触れさせることなくアッサンブラージュタンクに注がれるのだといいます。
ワインをタンクからタンクに移動させる際にはポンプを使うのが一般的です。しかし、ポンプを使うとワインにストレスがかかったり酸素に触れたりしてしまい、鮮度が落ちるリスクがあると唱える人もいます。徹底的に鮮度にこだわっているからこそ、リスクを最小限におさえるため専用エレベーターでワインを運び、重力をうまく利用して注ぎ込む「グラヴィティ・フロー」のシステムを使っているのだそうです。
「ベリースパ」から「グラヴィティ・フロー」のシステムまで、最新の機械工学を駆使したワイン造りを行っているカ・デル・ボスコ。言葉の響きは無機質ですが、実際に施設を見学すると不思議なことにとても温かく芸術的な雰囲気を感じました。そう、カ・デル・ボスコは芸術的なのです。
二つ目の魅力はワイナリー中に散らばる芸術作品。彼らのワイン造りの哲学を表すかのように、印象的なアートがたくさん展示されています。
これは青い狼のオブジェ。森の王者である狼はカ・デル・ボスコのシンボルで、彼らのワイン造りを守る番犬のようにエントランスを見張っています。
こちらは「光の英雄」というタイトルの大理石のオブジェ。「見えないところが重要」というメッセージが込められているのだそうです。ワインは醸造プロセスも大事なんだ、だから決して手を抜かない……そんな確固たる信念を感じます。
これは醸造施設の入り口の天井から吊るされたサイのオブジェ。「ワイン造りには長い時間と労力が必要だ」というメッセージを込め、「吊された時間の重さ」を表現しているのだとか。なぜサイなのかはわかりませんが、いわんとすることは何となくわかります……よね。
最後にアッサンブラージュタンクを取り巻くオブジェ。先ほど紹介した巨大タンクの周りを螺旋状に取り囲む謎の物体にお気づきでしょうか。これもアートです。タンクのワインが爆発して迸り出たところをイメージしているのだとか。なんとも情熱的です。
ワイン造りの現場にアートが共存していることで、彼らの醸造施設には無機質とは対照的な “熱” を感じるのかもしれません。アートを通して造り手の想いを感じました。
造り手のことを深く知ったうえでいただくワインは格別です。今回送られてきたカ・デル・ボスコのフランチャコルタ「キュヴェ・プレステージ・エディツィオーネ」を実際に飲んでみました。
黄金色に輝く液体が非常に美しく、最初の印象どおり宝石みたいなワインです。カデルボスコの中では特にフレッシュで若々しいラインなのだとか。シャルドネにピノ・ネーロ(ピノ・ノワール)、ピノ・ビアンコ(ピノ・ブラン)がブレンドされています。
「フレッシュさと果実味が売りのワインなので食前酒としてピッタリ」とフランチェスカさん。食事に合わせるなら地元ミラノの郷土料理「リゾットア・ラ・ミラネーゼ(サフランを使ったリゾット)」や海苔巻き(特にうら巻き)がおすすめとのこと。またゴルゴンゾーラチーズの産地も近く、「同郷どうしを合わせる」というマリアージュの鉄則ののっとってゴルゴンゾーラチーズに合わせるのもありなのだとか。
フランチェスカさんからいただいた情報を参考に、カリフォルニアロール(うら巻きといえば)やクリームベースのリゾットに合わせてみたところ、個人的にはアボカドやクリーム系の味わいにとてもよく合うと感じました。ワインの味わいを引き立たせるペアリングには、アボカドをふんだんに使ったカリフォルニアロールがおすすめです。
また、抜栓当日にはフレッシュさと苦味を強く感じました。その後、日が経つにつれ苦味が和らぎ、反比例するように蜂蜜のようなふくよかな味わいやクリーミーなまろやかさが際立ってきました。抜栓した日にはフレッシュさを生かして魚介とペアリング、抜栓後二日目〜三日目にはクリーム系の濃厚料理とペアリング……というように、時間経過を楽しむのもおすすめです。
カ・デル・ボスコのフランチャコルタ「キュヴェ・プレステージ・エディツィオーネ」を手にする機会がありましたら、ぜひ色々なアプローチで楽しんでくださいね!
吉田すだち ワインを愛するイラストレーター
都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定
ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
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