2020年09月02日(水)

「食通が最後にたどりつくワイン」スイスの “シャスラ” とチーズのマリアージュ

世の中には“手に入りにくいワイン”があります。スイスワインもそのひとつ。ワインショップの店頭でスイスワインを見かけることはほとんどありません。そもそも、スイスと聞いてワインを連想する人はあまりいないのではないでしょうか。

実際には、スイスは歴史あるワイン生産国です。一説によると、紀元前1万年の頃にはすでにワインが造られていたのだとか。そんなにも長きに渡ってワインを造り続けているにもかかわらず、なぜスイスワインはあまり流通していないのでしょうか。今回はそんなスイスワインの秘密にせまりつつ、おすすめマリアージュをご紹介します。

スイス人にも行き渡らないスイスワインの希少性

スイスは、九州とほぼ同じくらいの大きさの小さな国。そこに、東京ドーム約3,150個分のぶどう畑があります。国土に占めるぶどう畑の比率は、世界トップ10入り。国の大部分が山と湖に覆われていることを考えると、なかなかすごいことです。そう聞くと、国際市場にも一定数が出回っているように考えられますが、実はそうではありません。

世界一のワイン生産国 イタリアでは、年間生産58億本(750mlボトル換算)のうち約半分の28.5億本が輸出されています(2017年時点)。すごい数ですね。対するスイスワインの年間生産量は1億4,800万本。うち輸出にまわされるのは、全体の1.5%にあたる222万本(2019年時点)。イタリアワインの1%にも届きません。流通量が圧倒的に少なく、日本のワインショップの店頭ではなかなかお目にかかれないわけです。こんなにも輸出割合が低い理由のひとつは、国内の需給バランスにあります。

スイス政府観光局によると、スイス国民1人当たりの年間ワイン消費量は、750mlボトルで約38本。日本人のワイン消費量は年間約4本と言われているので、スイス人は日本人の10倍ものワインを消費する計算になります。スイス人が口にする38本のワインのうち、スイス国内で生産されるワインは14本…つまり、残りの24本は外国からの輸入に頼っています。スイスワインは、自国民にさえ十分行き渡らないほど、希少価値の高いワインなのです。輸出にまわす量が少ないのもうなずけますね。

食通が最後にたどり着くワイン

スイスワインのうち特に注目されているのが、 “シャスラ” で造られる良質な辛口白ワイン。シャスラはスイスがシェアの8割を占める白ぶどう品種です。世界で最も古い品種のひとつとも言われています。ワイン界の重鎮 ロバート・パーカーが絶賛したことで人気に火がつき、そのエレガントな味わいから「食通が最後にたどりつくワイン」と称されます。一方で、シャスラ自体には強い個性はなく、土地ごとの特徴を色濃く反映したワインになるとも言われています。

シャスラの栽培、ワイン醸造が最も盛んなのは、国の西側 “スイス・ロマンド” と呼ばれるエリア。この辺りはフランスと国境を接するフランス語圏です。ちなみにドイツと国境を接する北東エリアの公用語はドイツ語、イタリアと国境を接する南部エリアの公用語はイタリア語。スイス人は住む場所によって話す言語が変わるのだとか。コミュニケーションがとれるのか、気になります。

閑話休題、スイス・ロマンドにおいて良質なシャスラを生産することで有名なのは、Vaud(ヴォー)州にあるLavaux(ラヴォー)La Côte(ラ・コート)と呼ばれる場所です。特にラヴォーのぶどう畑の景観は目を見張るほど美しく、2007年には世界文化遺産に登録されたほど。ここで栽培されるシャスラのワインはより希少価値が高く、手に入りにくいスイスワインの中でもさらに入手するのが難しいのだとか。見つけたらラッキー、マストバイなアイテムです。

滋養味たっぷり!ラ・コートのシャスラ

先日偶然にも、ワインショップでラ・コート産のシャスラを発見しました。ラヴォー産には及ばずとも、こちらもレアには変わりありません。

ヴァン・スイス シャスラ 2018 ウヴァヴァン – カーヴ・ド・ラ・コート

ラ・コートにあるMorges(モルジュ)村の、生産者協同組合が手がけるシャスラのワインです。「ウヴァヴァン(Uvavins)」が組合の名前。なんだかキュートな響きです。1929年発足の組合で、比較的輸出を重視しているそうです。ワインのお値段は¥2,700。流通量が少ないのでなかなか低価格とはいきませんが、希少性を考えるとまずまずのお値段ではないでしょうか。

グラスに注ぐと、シャスラで造られるワインの特徴とも言われる華やかな花の香りが立ちのぼります。続いて、青りんごの甘い香りに、ほんの少しの青い香り。そこに、酵母由来の丸みのある香りが加わります。口に含むと厚みのあるボディーを感じ、インパクト大!豊かな甘み、心地よい酸、飲み込む際に感じる強いミネラル感。フランス・アルザスのゲヴュルツトラミネールを連想させる濃厚さです。よくワインの味わいについて “滋養味” と表現されますが、まさにこのワインにぴったりの言葉です。

スイスチーズとマリアージュ

せっかくのスイスワイン、合わせたいのはやはりスイスチーズです。思い浮かんだのは、有名な “エメンタール” と “ラクレット” 。エメンタールは穴がぽこぽこあいていて、アニメ「トムとジェリー」に登場するねずみのジェリーの大好物としてもおなじみのチーズです。ラクレットも同様に、アニメ「アルプスの少女ハイジ」に登場して日本の子どもたちの心をわし摑みにしたチーズ。どちらもハードタイプで、よくチーズフォンデュにも使われます。

チーズ調達のために向かったのは、学芸大学にあるチーズ専門店ユーロアールさん。こちらはチーズの品揃えが豊富なだけでなく、知識とチーズ愛にあふれる信頼できる店員さんが応対してくれるので、よく利用します。今回もエメンタールとラクレットを買い求めようとしたところ「シャスラに合わせるならもっとおすすめのスイスチーズがあります」と次の2種を提案してくれました。

Etivaz(エティヴァ)

ワインと同じヴォー州産のハードチーズ。アルプスの山中、標高1,000〜2,200メートルの場所で造られるのだそうです。夏場に搾汁された牛乳のみを使い、搾汁場所でそのまま製造を行います。生産者たちはチーズが完成するまで牛と一緒に山にこもるのだとか。手間がかかるので生産量もごくわずか… “幻のチーズ”と呼ばれます。

エティヴァの香りは「アルプスの数千の花を集めたよう」と表現され、シャスラの華やかな香りともよくマッチします。ワインとペアリングすると余韻にあんずのニュアンスが残り、強烈なインパクトを味わうことができます。

CH Appenzer (アッペンツェル・クラシック)

スイス北東部、アッペンツェル州原産のハードチーズ。スイスで唯一、州政府が製造を担っているのだそう。型抜きしたチーズを数週間塩水に漬け込んで造られます。この塩水には、胡椒などの香辛料とともに秘伝の白ワインやシードルが入っているのですが、レシピは州政府によって厳重に管理され門外不出なのです。

完成したチーズからは、ほんのり香辛料の香りと、ハチミツを連想する甘い香りが漂います。シャスラにあわせるとよりハチミツ香が際立ち、濃厚で豊かな味わいが花開きます。

個人的にはアッペンツェル・クラシックとシャスラの組合せの方が、より完璧にマリアージュしていました。チーズを主役にするならエティヴァ、ワインを主役にするならアッペンツェル・クラシック。いずれにせよシャスラとの相性は抜群です。そのまま食べたりフォンデュにしたり、様々な方法で数日間にわたり楽しんだのでした。

最後に

シャスラ自体はクセが少なく、どんな料理にも合わせられます。あえて言うなら、最大の特徴とも言える “滋養味” を生かし、和食とペアリングするのがおすすめです。スイスワインをワインリストに並べる高級日本料理店も少なくないのだとか。皆さんも、和食のお店にスイスワインを持ち込んでBYOを楽しんでみてはいかがでしょうか。手に入りにくいスイスワインですが、ウェブで探すとお値打ちのものに出会えるかも(便利な世の中です)。

 


吉田すだち ワインを愛するイラストレーター

都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
【HP】https://yoshidasudachi.com/
【instagram】https://www.instagram.com/yoshidasudachi

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