2020年09月16日(水)

地球温暖化で注目度UP!オーストラリア最南端のワイン産地タスマニアのブドウ“全部乗せ”ワイン

オーストラリア最南端のワイン産地、タスマニアをご存知でしょうか。オーストラリア大陸の南東部に浮かぶ、北海道より少し小ぶりの島です。過去、タスマニアは「ブドウ栽培に不向き」と言われ、長らくワイン産業から遠のいていました。しかし近年、急激に注目度があがっています。今回はその秘密に触れつつ、面白いワインをご紹介します。

まずは、タスマニアに注目が集まっている理由から。キーワードは地球温暖化です。

ワイン造りに影響を及ぼす地球温暖化

日本の夏の暑さは年々厳しさを増しており、「地球温暖化は由々しき問題だ」なんて思うわけですが、それはワインにとっても同じこと。平均気温が上がると、ブドウの生育に大きな影響がでるからです。

少し前まで「ブドウ栽培の北限=ドイツ」と言われていましたが、それはもう過去のお話。ずっと「ブドウには寒すぎる」と言われていた北欧諸国でも、ワインが造られるようになっています。逆に、温暖化のせいで大変な思いをしている造り手が増えているのも事実。気温が上がりすぎるとブドウに十分な酸を残すことが難しくなり、ワインの味わいが変化してしまうのです。

こうした気候変動による問題は、北半球だけのものではありません。南半球に位置し、今や世界有数のワイン銘醸地と言われるオーストラリアも、温暖化の影響を受けている国のひとつです。

オーストラリア本土ではブドウが昔よりも早く熟すようになり、糖度が上昇。よりリッチで重たいワインが増えていると言われます。一説によると、オーストラリアの平均的なブドウの収穫時期は、この10年で15日も早まったそうです。シラーズやカベルネ・ソーヴィニヨンなどの “重厚感”が重視される品種には問題ないかもしれません。しかし、ピノ・ノワールやシャルドネなどの “繊細な酸”が味わいの決めてになる品種にとっては、厳しい状況です。

そんな中、人気が高まっているオーストラリアの産地がタスマニアです。

オーストラリアの冷涼産地 タスマニア

タスマニアの州都ホバートは「世界で最も水と空気がきれいな街」の呼び声も高く、自然豊かな場所です。南極に近く、海からの冷たい風が気温を押し下げます。夏場でも最高気温が25度を超えることはないそうです。とても冷涼なため、タスマニアで育つブドウには豊かな酸が残ります。

  

造られるワインはとても繊細な味わいで、「ドイツワインに似ている」と言われることもしばしば。初めてタスマニアのことを知ったとき、名前の響きから南国をイメージしていた私は少し衝撃を受けました。冷静に考えればわかることですが、先入観から「南=暖かい」と思い込んでいたわけです。かつて “ブドウ栽培の北限”と言われていたドイツと似ているだなんて、頭では理解できても何だか不思議な感じがしませんか?

1800年代中ごろから約100年もの間、タスマニアのブドウ栽培は軽んじられていました。理由は「寒すぎてブドウ栽培に不向き」と考えられていたから。しかしその後の調査で、独特な地形が多様な “微気候”を織り成しており、場所によって良質なブドウを育てることが可能であると判明。それに加え近年の温暖化により、“繊細な酸”をたたえるブドウの供給地として、オーストラリア本土のワインメーカーから一目置かれる存在になりました。

当初は、スパークリングワインのベースワインに使うブドウの供給がメインだったと言います。実はタスマニアは「シャンパーニュの対抗馬になり得る新たなスパークリングワインの産地」としても注目されているのです。最近ではスティルワイン(非発泡性ワイン)のピノ・ノワールやシャルドネの品質も認められ、コアなファンが増えています。

タスマニアのぶどう“全部乗せ”ワイン

“南半球のドイツ”と呼ばれるだけあり、栽培されているブドウの品種もドイツやアルザス(フランス)などの地域に似ています。

タスマニアの主な栽培品種

●黒ぶどう:ピノ・ノワール、ムニエ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなど
●白ぶどう:シャルドネ、リースリング、ピノ・グリ、ゲヴェルツトラミネール、ソーヴィニヨン・ブラン、グリュナーフェルトリナーなど

よく見かけるのは、シャルドネやピノ・ノワールで造られるスパークリングワインやスティルワインです。まだ生産量が少ないのでそこまで安く手に入るわけではありませんが、品質を考えるとリーズナブル。ワインショップでタスマニアワインに出会ったら、つい手が伸びてしまいます。

先日も「TASMANIA」の文字がラベルに並ぶワインを見つけて手に取ったところ、これがなんとも面白いワインでした。

SALLY FIELD BLEND 2017

最大の特徴は、使われているブドウ品種の数!「シャルドネ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソービニヨン、リースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリ、ムニエ、グリュナーフェルトリナー、ゲヴェルツトラミネール」…全部で9種類のブドウがブレンドされています。前述した「タスマニアの主な栽培品種」のほとんどを使っている、ブドウの“全部乗せ”ワインです。

醸造方法もユニークです。9つの品種を一度に収穫して、同じタンクで一度に醗酵。人為的に酵母を追加せず、ブドウの果皮に付着している野生の酵母のみで醗酵を進めます。無濾過、無清澄、酸化防止剤無添加。ヴィーガン・フレンドリーでもありますね。

造り手は東欧のチェコ出身のジョセフ・クローミーさん。若い頃に身ひとつでタスマニアに上陸し、ワイン造りをはじめタスマニアの産業発展に貢献した偉人です。ワインラベルの背景にうすく印刷されているのは「尾をふたつ持つライオン」。これは、ボヘミア王国(現在のチェコ共和国)の紋章なのだとか。チェコの魂を宿しながらタスマニアの全てを詰め込んだワインです。

ショップによっては「オレンジワイン(アンバーワイン)」のくくりで販売しているところありますが、厳密に言うと違います。オレンジワインとは「白ブドウを使って赤ワインのように造るオレンジ色のワイン」だからです。ただ、白い壁などを背景に光を透かしてみると液面が琥珀(アンバー)色に輝き、 “オレンジワイン”と称したくなる気持ちもわかります。

口に含むとキレのある酸で目が覚めるような感覚!タスマニアワインの風格を感じさせます。その後にと黒ぶどう由来の柔らかい渋みとエキゾチックな苦味が続きます。のどに流し込む時にはミネラルを感じ、後にのこるフレッシュな果実の香りが印象的。味わいもオレンジワインに近い印象ですが、より骨格がしっかりしています。酸と骨格が喧嘩せずに共存している、素晴らしい味わいです。

タスマニアのすべてがギュッと凝縮された、赤でも白でもロゼでもオレンジでもない、不思議なワイン。見つけたらぜひ手に取ってくださいね。赤ワインが苦手な方にもおすすめです。

最後に

積極的にタスマニアワインを探し求める機会はあまりないかもしれません。しかし、一度飲むとはまってしまう魅力に溢れたワインがたくさんリリースされています。だまされたと思って、ぜひ一度ご賞味ください。

 


吉田すだち ワインを愛するイラストレーター

都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
【HP】https://yoshidasudachi.com/
【instagram】https://www.instagram.com/yoshidasudachi

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