2020年10月14日(水)

新酒シーズン到来! 秋にしか味わえない“もろみワイン”ってどんなワイン?

気温が下がり、いよいよ秋の到来を肌で感じるようになりました。この時期の楽しみといえば、 “新酒”の解禁です。日本人に馴染み深い “新酒”といえば、やっぱりフランスのボージョレ・ヌーボーやイタリアのヴィーノ・ノヴェッロでしょう。それぞれ解禁日に向け、予約販売が加熱しつつありますね。わが家でも現在吟味中。今年も、1年に1度のお祭りムードを存分に楽しもうと画策中です。

今回はそんなボージョレ・ヌーボーやヴィーノ・ノヴェッロについて…ではなく、それよりももっと 若いワインについてのお話です。まだ完全にワインになりきっていない、ブドウジュースとワインの中間の状態にあるワイン。9月〜10月の間にだけ味わうことができる希少性の高いこのワインは、日本語で “もろみワイン”と呼ばれます。

ワインの本場、フランスの “もろみワイン”を紹介しつつ、日本の事情についてもまとめてみました。

フランスで出会ったもろみワイン “Vin Bourru”

数年前の秋、フランスはボルドーを旅行したときのこと。心地よい朝の陽気に包まれながら街なかを散歩をしていると、地元の青空マーケットに出くわしました。ふと目が留まったのは何やら液体が入った大きめのペットボトルです。フランス語がわからず「 “BOURRU”って何だろう?」としばらく考えていると、店員さんが英語で「 This is VERY fresh wine! 」と教えてくれました。

たしか1リットル3〜4ユーロほどで、安さに惹かれて購入。飲んでみるとシュワシュワ微炭酸が小気味よく、アルコールはほとんど感じません。リンゴジュースと甘酸っぱい柑橘ジュースで作ったカクテルのような味わいです。「こりゃ美味しい!」と気に入ったものの、1リットルは飲みきれず。翌日はパリへの移動を予定していたので、ペットボトルのキャップをしっかり閉め、預け荷物のキャリーケースに忍ばせました。

パリのホテルに着き、荷ほどきをする私の目に飛び込んできたのは、ワインまみれになった服やお土産たち!購入したワインのボトルは割れていないのに、なぜ!?しばらく呆然としたあと、ふとペットボトルのキャップを見ると、なんと真ん中に小さく穴があいているではありませんか。私の荷物を台無しにした犯人は、まぎれもなくペットボトルに入った “BOURRU”だったのです。

意気消沈する私の手の中では、残った “BOURRU”が依然として小気味よくシュワシュワと音を立てていました。しかしなんと芳しい香りだこと!汚れた服を前に悔しいやらうっとりするやら。複雑な心境をかかえたまま、パリの夜は更けていきました。

“もろみワイン”ってどんなワイン?

“BOURRU”の正式名称は “VIN BOURRU(ヴァン・ブリュ)”といいます。これこそが私にとって “もろみワイン”との最初の出会いだったのです。

“もろみワイン”とは、収穫したブドウを絞り(圧搾し)、酵母とともに発酵槽に入れてから2〜3週間以内のものを指します。今まさに発酵が始まったばかりの状態で、ブドウジュースとワインの間(どちらかというとジュース寄り)の状態です。アルコール度数は1〜2%程度と低めで、とってもフレッシュ!青空マーケットの店員さんが「VERY fresh wine」と表現したのもうなづけます。

アルコール発酵は、酵母が果汁に含まれる糖分をアルコールと二酸化炭素に分解することで進みます。もろみワインは現在進行形で発酵が進んでいる状態なので、あのシュワシュワとした微発泡を感じるわけです。密閉容器に入れておくとワインに溶け込めない二酸化酸素が容器内にあふれ、栓が弾けとんだり容器が破損する恐れがあります。そのため、ペットボトルのキャップに穴があけられていたのです。

店頭に並んだばかりのもろみワインはとってもジューシー。ブドウのうまみをぎゅー!と凝縮したような感じがするらしいです。中のワインはどんどん発酵が進むので、時間が経つと味わいが変化します。甘みが減ってアルコール度数が高まり、少しずつ酸味も際立って…。私が飲んだのは少し発酵が進んだ頃合いで、リンゴの香りが強めに出ていました。

現地では、購入したもろみワイン(VIN BOURRU)を少しずつ飲んで、発酵による味わいの変化を楽しむのだそうです。贅沢ですね。

日本でもろみワインを楽しむ方法

フランスで出会ったあの味を日本でも味わいたい!と思っても、なかなか簡単には手に入りません。それもそのはず、日本では酒税法の関係で、 “もろみ”状態のワインを流通させることはできないのだそうです。ヨーロッパでは時期こそ限定されるものの、青空マーケットやスーパーマーケットでよく目にするらしいのですが…少し残念ですね。ただ、もろみワインは発酵開始から2〜3週間という限られた期間しか提供できないものなので、どちらにしろ都心で販売するのは厳しそうです。

日本でもろみワインを楽しむには、新しく収穫したブドウの醸造開始時期にワイナリーを訪れるのがオススメ。有名なのは山梨県甲州市のワイナリー、白百合醸造さんです。毎年9月上旬に “ロリアンワイン祭り”というイベントを開催して、もろみワインを振る舞っています。今年は新型コロナウイルスの関係でイベントこそ中止になってしまったものの、9月下旬にもろみワインを目的とした試飲会を開催しました。飲めた方はラッキー!飲めなかった方は来年を楽しみに待ちましょう。

※ “ロリアンワイン祭り”は11月にオンラインで開催予定とのことなので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

「1年も待てない!」という方には、もろみの風味を味わえる “もろみワイン風ワイン”をオススメします。

デラウェアにごり(まるき葡萄酒)

創業は明治10年、現存する日本最古のワイナリーと言われるまるき葡萄酒さんの1本。早摘みのデラウェアを使って酸味を強めに醸し出し、新酒のフレッシュ感を演出。同時に甘みも強めに残します。濾過を荒くすることでわざとオリを残し、ワインににごりをプラス。これらにより、もろみワインの味わいを堪能できる仕上がりになっているとのことです。

私もいただきましたが、甘酸っぱくてカクテルのように楽しめるキュートな味わいです。ワインの苦手な方にもオススメ。お口直しやデザートにも最適です。シーズンがすぎてしまいましたが、かき氷にかけて召し上がるのもオススメです。

使われている品種がデラウェアなので、フランスで飲んだVIN BOURRUの味わいとは少し違うものの、お値段1,600円でもろみの風味を味わえるのはお得です。気になる方はぜひ手にとってみてください。

最後に

フランス以外のヨーロッパの国々でも、秋にはもろみワインが売り出されます。ドイツでは白の “フェーダーヴァイザー”が大人気!このために渡独する人もいるとかいないとか…。チェコでは “ブルチャーク”、オーストリアでは “シュトゥルム”…その土地の呼び方で、地元の人に愛されています。ヨーロッパの人々は、ボージョレ・ヌーボーやヴィーノ・ノヴェッロがリリースされるよりも数週間前に、すでにその年の新酒と関係を深めているのです。

残念ながら日本ではなかなかもろみワインそのものを入手することはできませんが、来る新酒解禁に向け、もろみワインに思いをはせつつ今年のワインの味わいを想像してみてはいかがでしょうか。

 


吉田すだち ワインを愛するイラストレーター

都内在住の、ワインを愛するイラストレーター。日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート。ワインが主役のイラストをSNSで発信中!趣味は都内の美味しいワイン&料理の探索(オススメワイン、レストラン情報募集中)。2匹の愛する猫たちに囲まれながら、猫アレルギーが発覚!?鼻づまりと格闘しつつ、美味しいワインに舌鼓を打つ毎日をおくっている。
【HP】https://yoshidasudachi.com/
【instagram】https://www.instagram.com/yoshidasudachi

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